
脳梗塞後の麻痺側の痛みはずっと続く?なぜ起こるのか原因と対策とは
2025.05.16

脳梗塞の後遺症として麻痺が起こることは広く知られていますが、麻痺側に痛みを感じることはあまり知られていません。痛みはいつまで続くのか、不安に思う人も多いでしょう。
今回は、脳梗塞後の麻痺側の痛みはなぜ発生するのかを解説し、治療法や自宅でできる痛みの緩和方法についてご紹介します。
痛みに対する適切な対処法を知り実践することで、日常生活をより充実させることができます。
目次
脳梗塞後に麻痺側の体の痛みはなぜ起こる?3つの原因を解説

麻痺側の痛みは、一般的に認識されている運動麻痺や言語障害に比べ、あまり知られていない症状です。脳梗塞後の麻痺側の痛みの3つの原因と、なぜ起こるのかを解説します。
①脳が引き起こす痛み
脳の痛みを感じる部位が損傷されると、体の麻痺した側に痛みを感じることがあります。
麻痺そのものの痛みではなく、神経の損傷によって引き起こされる異常感覚です。
神経因性疼痛といわれ、焼けるような痛みや電気が走るような痛み、体の奥でうずくような痛みが麻痺側にあらわれます。
②筋肉のアンバランスによる痛み
脳の損傷により、麻痺側の筋肉が過剰に緊張することで痛みがあらわれます。また、無意識に麻痺側に負荷がかかってしまうことも痛みの原因のひとつです。
麻痺によって姿勢が崩れたり、同じ姿勢のまま長時間過ごしたりすることで、麻痺側の筋肉や関節に集中的に負荷がかかり、痛みが引き起こされるのです。
③関節の痛み
筋肉の緊張で突っ張った状態が続くと、その周囲の関節が変形したまま固まって痛みがあらわれます。
特に、肩の痛みは多い症状の一つです。手を動かすとき、肩関節や肩甲骨など多くの関節が関係します。麻痺により、関連する関節がうまく連動した動きをとれなければ、肩の関節が正しい位置からずれやすくなり、痛みの原因に。また、亜脱臼のリスクも高まります。
麻痺側の痛みがなぜかわかったら…治療方法や回復過程を知ろう

辛い痛みの症状は回復するのでしょうか?麻痺側の痛みの原因がなぜかわかったら、痛みに対する治療法や回復の経過について解説します。
病院で行う治療
薬物療法やリハビリなど対症療法を中心とした治療が行われます。
リハビリは、筋肉の緊張や関節の動きを改善させ、痛みを和らげる効果があります。セラピスト(理学療法士)の手を使った従来のリハビリのほか、電気刺激療法も有効です。損傷した神経やまわりの筋肉に電気刺激を与えることで神経の働きを活性化し、麻痺の改善を目指す方法です。
薬物療法では、症状や状態に応じて痛みを和らげる薬が選択されます。
参考:順天堂大学「脳卒中の後遺症の一つである麻痺。回復への道を拓く電気刺激療法とは。」
心理的なアプローチも必要
慢性的な痛みは、作業に集中できないなど、日常生活や社会生活に支障をきたすことがあります。また、イライラしたり憂鬱な気分にもなるでしょう。
不安やストレスの緩和には、認知行動療法などの心理的アプローチが有効です。痛みへの対処能力を向上させ、痛みの感じ方が軽減されることがあります。
一般的な痛みの回復過程
痛みの原因により、症状が出現する時期や回復過程は異なります。
- 神経因性疼痛
発症から2〜3ヶ月頃に症状があらわれることが多く、遅くとも6ヶ月以内に出現します。有効な治療法はなく、慢性的な痛みとして残ることが多いです。
- 筋肉や関節の痛み
麻痺が軽度の場合、改善することがありますが、重度では後遺症として残ることがあります。麻痺側を動かさなければ、筋肉や関節は固くなり、痛みは増強します。
麻痺側の痛みはなぜ長引く?自宅での対処が必要なのか具体例を紹介

慢性的な痛みとなりやすい麻痺側の痛み。なぜ長引くのかを理解し、適切に対処することが大切です。自宅でできる対策についてご紹介します。
麻痺側の痛みが長引く原因
神経因性疼痛の場合、有効な治療法はなく、痛みは慢性的になります。筋肉の過緊張が持続する場合では、関節の動きが制限され、痛みは持続します。
リハビリや薬物療法により痛みを和らげることは可能ですが、完全に取り除くことは難しく、痛みは長期化するのです。
痛みを増強させないためには、専門家の指導のもとで適切なリハビリを行い、麻痺側の負担を減らす工夫が大切です。
リラックスできる状態を作る
不安や緊張など心理的な要因により、痛みは増強するものです。心身をリラックスさせる時間を意識的に作りましょう。
以下にリラックス法の例をあげます。
- 深呼吸⋯時間や場所を選ばず、手軽に心を落ち着かせる効果がある。
- 没頭できる趣味⋯運動や読書など。痛みから注意を反らしたり、ストレス軽減効果がある。
- 他者との交流⋯楽しいおしゃべりや社会参加により、ポジティブな感情が生まれる。
個人の好みに合ったリラックス方法を取り入れることが大切です。
ストレッチやエクササイズも有効
ストレッチやエクササイズは、こり固まった筋肉をほぐして緊張を緩め、関節が固くなることを防ぐ効果が期待できます。関節の可動性を保つことは、痛みの緩和につながります。
自分の症状や状態に合う正しい方法で行うこと、できるだけ毎日行うことが大切です。正しい方法やメニューについては、リハビリの担当者に相談しましょう。
まとめ|脳梗塞後の痛みを和らげるには…なぜ起こるのか理解が大切

麻痺側の痛みは、脳が引き起こすもので痛みが出ることがあります。この痛みの原因にはいくつかあり、脳のダメージによって感じるものや、筋肉・関節に負担がかかって起こるものなどがあります。
すべての痛みをなくすのは難しいこともありますが、つらさをやわらげることは十分に可能です。
そのためには、リハビリを続けることがとても大切です。家でできる軽いストレッチや、気分を変えるような活動(読書や音楽など)も、痛みを和らげるのに効果があります。
また、どうしたらよいか迷ったときは、リハビリの専門家に相談してみましょう。ひとりひとりの体の状態に合った、くわしいアドバイスをもらうことができます。
痛みの理由を理解し、自分に合った対策をとることが、より快適な生活への第一歩です。無理をせず、自分のペースで取り組んでいきましょう。