
リハビリの段差昇降トレーニングを続ける効果は?生活の幅を広げるコツ
2025.06.02

加齢による運動機能の低下や、怪我・病気の後遺症で、日常生活が制限されている方がいらっしゃるでしょう。リハビリで段差昇降をしても、なかなかできるようにならないと焦ったり不安になったりするかもしれません。
この記事では、なぜリハビリで段差昇降が行われるのか、効果や内容をご紹介します。家でトレーニングを取り入れる方法と、生活の幅を広げるコツも知っておきましょう。
目次
リハビリの段差昇降トレーニングは必要?何に効果があるか解説

リハビリで段差を登ったり降りたりするトレーニングを行っていても、何に効果があるのかがわからないと、モチベーションにつながらないでしょう。リハビリでは前向きな姿勢が効果を向上させるのです。リハビリで行われる段差昇降の効果をご紹介します。
段差昇降トレーニングとは何か
段差昇降トレーニングは、「段差を上り下りする動作」を繰り返すリハビリの一種です。主に階段やステップを利用し、足を持ち上げる力やバランス感覚を鍛えることを目的としています。
特に、日常生活で階段や段差を越える動作に不安がある方や、筋力低下が進んでいる方に行われる場合が多いです。
段差昇降の2つの効果
段差昇降を行うと、下肢の筋力が向上します。段差の上り下りは重力に反して自分の体を持ち上げたり、支えたりするため、太ももやふくらはぎの筋力トレーニングにもなるのです。下肢の筋力だけではなく、脚を支える体幹の筋力向上の効果もあります。
2つ目の効果は、バランス能力の向上です。20㎝の段差を使ったトレーニングで、立っている時や動いている時のバランス能力が改善した報告があります。
段差昇降で生活の幅が広がる
段差昇降の効果は、下肢の筋力がつき、バランス能力が向上するだけではありません。段差昇降が安定すると、生活の幅が広がるのです。
バランス能力の向上により、歩行が安定し、移動範囲が広がるでしょう。また、階段がある場所でも、安心して出かけられるようになります。
生活の幅が広がると、対人関係が変わったり、脳へ刺激が入りやすくなったりして、認知機能の低下予防にもなるでしょう。
参考:健常成人男性における段差昇降動作が静的・動的立位バランスに及ぼす影響
リハビリ以外でも段差昇降をするべきか|回数・頻度・注意点とは

リハビリで段差昇降を行っていても、トレーニング回数や時間が足りているのか、効果が出る頻度なのかが気になる方も多いです。家でのトレーニングを行う場合の回数や頻度、注意点を解説します。
家でもトレーニングが必要?
できるだけ早くトレーニングの効果を出したい方は、家でも段差昇降を行うのが重要です。1日動かないと、筋力は1%減るといわれているため、リハビリの時間以外でも体を動かすと、より効果が出やすいです。
段差昇降トレーニングは、段差があれば家でも実施できます。家の階段や玄関の上がりかまちを利用するのが手軽です。もし、高さが合わない場合は、ホームセンターや通販で踏み台やステップを購入しましょう。
効果が出やすい回数・頻度
段差昇降は、1分間に20回を目安に行うのが効果が出やすいといわれています。高齢者の運動推奨示唆頻度は、週に3回程度です。
トレーニングし始めは、軽く息が上がる程度の段差昇降から始めましょう。最初から強度を上げすぎると、疲労や痛みの原因となります。最初は低負荷から始め、回数や時間を記録していくと、効果が実感しやすいです。
段差昇降の注意点
段差昇降のトレーニングを行う場合は、転倒に注意しましょう。歩行が不安定な方は、必ず壁や手すりにつかまって行うと安全です。
靴や靴下を履いていると滑りやすいので、滑りにくい履き物を利用するか、段差に滑り止めを敷きましょう。
また、初めは5〜10㎝程度の低い段差から始めるのもおすすめです。リハビリで段差昇降を行っている場合は、家で行う段差の高さも揃える方法もあります。
リハビリの段差昇降をスムーズにしたい…生活の中でできること

リハビリの段差昇降がなかなか思い通りにできずに、もどかしく感じる方もいらっしゃるでしょう。同じトレーニングが続くと飽きてしまうかもしれません。段差昇降をスムーズにして、日常生活の幅を広げるために、生活の中でできることをご紹介します。
体幹・下肢の筋力トレーニング
段差昇降や歩行に必要な、体幹と下肢のトレーニングは、寝たまま・座ったままでもできます。寝た状態での体幹トレーニングに、ドローイングがあります。
膝を立てて、仰向けで寝転がりましょう。ゆっくり息を吐きながらおへそを背骨に近づけるように薄くします。背中が浮かないようにしながら、5〜10秒キープし、ゆっくり息を吸いながら戻す方法です。
座ったままできる下肢のトレーニングは、足踏みがあります。椅子に腰掛け、足裏を床につけます。その状態で、片方ずつ足踏みをするように脚を上げましょう。脚の付け根から上げるようにすると、太ももの筋肉が鍛えられます。
手すりや壁を利用する
日常生活でできる動作を行うのも、立派なトレーニングとなります。歩行や段差昇降が難しく、少し億劫だと感じても、できる動作を行ってみましょう。
手すりや壁に体重をかけても良いですし、杖を使うのも安心できる方法です。重力に反して動き続けられる体づくりを目指しましょう。
安全な階段の上り方・降り方
日常生活でどうしても階段昇降をしなければならない場面があります。
その場合は、手すりや壁を使いながら足の置き方を工夫してみましょう。上りは、足の前半分から段に乗せ、体重をかけます。下りは、かかとから段に降りず、つま先を先に置くようにするとスムーズな動作ができます。
重心の位置にも注意が必要です。上りでは前に重心をかけて体を引き上げます。下りでは少し前かがみになるようにし、後ろに倒れないように意識すると、安定した階段昇降が可能です。
まとめ|リハビリの段差昇降トレーニングを続ける効果

病気の後に体がうまく動かなくなってしまうことを「後遺症」といいます。そんな後遺症のある人の中には、歩くのがむずかしくなったり、段差をのぼりおりするのが大変になる人もいます。
病院でのリハビリが終わったあと、自宅に帰って日常生活を送るようになると、玄関の段差や階段など、段差のある場所を通ることがふえてきます。そのため、リハビリでは「段差昇降」といって、段をのぼったり、おりたりする練習を行うことがあります。
これまで当たり前にできていた動きが、急にできなくなると、ストレスを感じたり、自信をなくしてしまうこともあるかもしれません。でも、リハビリで段差昇降の練習をくり返すことで、下半身(足の筋肉)をきたえることができたり、体のバランスをとる力がよくなったりします。
そうすると、転びにくくなったり、歩くことに自信が持てるようになるという、うれしい変化も期待できます。
ただし、これらの効果を得るには、リハビリを続けていくことがとても大切です。自宅でもリハビリを行うことができますが、まわりに物がなく、手すりがあるなど、安全な環境をしっかり整えてから行うようにしましょう。
リハビリはつらいこともあるかもしれませんが、できることが少しずつ増えると、毎日の生活がもっと楽しくなります。焦らず、自分のペースで取り組んでいきましょう。