ブルンストローム・ステージをわかりやすく解説!リハビリをより前向きに
2024.09.08
脳卒中後のリハビリは機能の回復に効果がありますが、発症直後から回復まで長い期間、訓練をしなければなりません。そのため、リハビリの目的やご自分の予後がわからないと前向きに取り組めない患者さんが多いです。
リハビリで使われる評価の1つにブルンストローム・ステージがあります。運動や麻痺の程度を評価できるものですが、どの段階にいるのかがわかると不安が軽減します。
今後の生活の予測を立てるためにも、ブルンストローム・ステージがどんなものか、目的や段階・リハビリ内容について知っておきましょう。
目次
ブルンストローム・ステージでは何がわかる?使用目的も解説
脳卒中発症後はさまざまな検査や評価を受けます。しかし、検査の内容や目的がわからないと不安になる方もいらっしゃるでしょう。ここでは脳卒中後の運動機能を評価する指標であるブルンストローム・ステージについて、内容や使用目的を解説します。
脳卒中の一般的な回復過程
脳卒中後の一般的な回復過程は、運動が全く起こらない状態から筋緊張が強くなり、徐々に個々の関節の動きが出てきます。
ブルンストローム・ステージは、このような脳卒中の回復過程をもとに、スウェーデンの理学療法士が開発した運動機能を評価する指標です。患者さんが特定の動作をできるかどうかをみて、6段階で評価します。
ブルンストローム・ステージでわかること
ブルンストローム・ステージでは現在の麻痺の回復程度がわかるほか、次のステージに回復するために何をするべきかがわかります。一般的な回復過程がもとになっているため、予後予測が可能です。
脳卒中発症後、6ヶ月までの間は運動機能が回復しやすいといわれています。そのため、発症から6ヶ月までに徐々にステージが上がっていれば、次のステージを目標にできます。発症から6ヶ月以降にステージが一定になっている場合は、現在の運動機能でできることを増やすなどの目標が設定されるでしょう。
ブルンストローム・ステージの目的
ブルンストローム・ステージは主にリハビリ場面で活用されてきました。現在の運動機能を評価したり、効果判定として使われるのです。そのほか、脳卒中に関わる看護スタッフや介護現場での情報共有として使われることもあります。
回復過程を知ろう!ブルンストローム・ステージの6つの評価段階
ブルンストローム・ステージは、上肢・下肢・手指でそれぞれ6段階あります。全てにおいてステージ1は意図的な運動ができない状態ですが、ステージ2以降はそれぞれ動作が異なるのが特徴です。回復過程を知る指標にもなるため、上肢・下肢・手指のステージをみていきましょう。
上肢のブルンストローム・ステージ
- ステージ1
…弛緩性麻痺の状態で、意図する動きはできません。
- ステージ2
…軽度の痙性麻痺が出現する段階です。1つの動作につられて他の関節も動く共同運動が出現します。
- ステージ3
…肘を曲げた状態で腕の曲げ伸ばしが意図的にできる状態です。このとき、腕は完全に伸びません。
- ステージ4
…ほかの関節の動きにつられるパターンが軽減し、手を腰に回したり、肘を伸ばした状態で腕を90度まで上げられるようになったりします。
- ステージ5
…ほかの関節の動きにつられるパターンがなく、肘を伸ばした状態で180度腕を上げたり、横に90度まで上げられる状態です。
- ステージ6
…各関節が分離して動きがスムーズになり、腕を上げた状態で手を表裏にひねる動作などができるようになります。
下肢のブルンストローム・ステージ
- ステージ1
…弛緩性麻痺の状態で、意図する動きはできません。
- ステージ2
…軽度の痙性麻痺が出現する段階です。1つの動作につられて他の関節も動く共同運動が出現します。
- ステージ3
…意図的に脚の曲げ伸ばしができますが、各関節をスムーズに動かすのは難しい状態です。
- ステージ4
…ほかの関節の動きにつられるパターンが軽減し、座った状態で足を引いたり足首を曲げることができるようになった状態です。
- ステージ5
…ほかの関節の動きにつられるパターンがなく、立った状態で足を後ろに引き上げたり、足首を曲げたりできるようになります。
- ステージ6
…各関節が分離して動きがスムーズになり、立った状態で足を横に持ち上げたり、座った状態で膝を内外にひねる動作ができるようになります。
手指のブルンストローム・ステージ
- ステージ1
…弛緩性麻痺の状態で、意図する動きはできません。
- ステージ2
…全ての指で握る動作がわずかにみられます。
- ステージ3
…意図的に全ての指で握ることができますが、離す動作が困難です。
- ステージ4
…不十分ではありますが、全ての指を伸ばせます。握りこぶしの状態から親指を離す動きができるようになる段階です。
- ステージ5
…親指と人差し指の指先を合わせる対向つまみや全ての指が伸ばせる動きができるようになります。
- ステージ6
…握ったり、手を離す動作や、指折りなど指の個別の動きができるようになります。
どんなリハビリをする?ブルンストローム・ステージの活用方法
ブルンストローム・ステージで評価されたあとの、実際のリハビリ内容はどのようなものなのでしょうか。評価に基づいたリハビリの一般的な内容を知っていると安心して取り組めます。詳細な内容は病院やセラピストによって異なるため、リハビリの目的を知りたい場合は確認してみましょう。
全く運動が起こらない時
ブルンストローム・ステージが1の場合、筋肉は弛緩しており意図的には動かせません。この時期は動かせる部分を動かして運動機能を維持したり、セラピストが関節を動かして関節可動域を維持させたりするリハビリが一般的です。
筋緊張が強く痙縮がみられる場合
ブルンストローム・ステージが3の場合、痙性を抑えながら日常生活動作の練習をします。関節を速く動かすと痙性が出現し、動きがぎこちなくなるため、ゆっくりとした動作が求められます。関節が分離して動くような反復練習や筋力トレーニングを行い、日常生活動作を再獲得するのが目的です。
日常生活動作ができるようになってきたら
各関節が分離した動きができるようになって日常生活動作ができるようになってきたら、より実践的なリハビリが行われます。ブルンストローム・ステージは5または6の段階です。より安定した歩行ができるような訓練やバランス訓練が実施されるでしょう。また、字を書いたりボタンをとめたりするなどの細かい動きを練習します。
参考:片麻痺への分離促通的運動パタ-ン反復の効果と筋力増強訓練への蛋白同化ホルモン併用の効果について
まとめ|ブルンストローム・ステージの活用法
ブルンストローム・ステージは、脳卒中を起こした後に体の麻痺(まひ)がどれくらい進んでいるかを評価するための基準です。脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりして、体に影響を及ぼす病気のことです。脳卒中の後、体がうまく動かなくなることがあり、これを「麻痺」と言います。
ブルンストローム・ステージを使うと、その麻痺の状態を6段階に分けて評価することができます。麻痺の程度がわかると、今どんなリハビリが必要かを正しく判断できるようになります。例えば、まだ体があまり動かせない人には、無理のないリハビリを行い、体が少しずつ動かせるようになってきた人には、より積極的なリハビリを選ぶことができます。
さらに、この評価は本人だけでなく、家族や看護スタッフ、介護をする人たちとも共有できます。これにより、みんなが一緒にサポートできるようになるという大きなメリットがあります。
脳卒中を経験した人やその家族にとって、麻痺がどれくらい回復しているかはとても気になることです。ブルンストローム・ステージを活用して、リハビリを前向きに進め、少しずつ回復を目指していきましょう。