脳梗塞の血圧管理:急性期から慢性期まで徹底解説!再発予防もバッチリ!
2024.02.15
高血圧で脳梗塞が心配な方や、脳梗塞後の血圧管理が気になる方にむけて、脳梗塞の血圧治療や再発を予防する方法についてお伝えします。
脳梗塞は半身麻痺やろれつ困難などの症状が生活に影響する病気です。脳梗塞の大きな危険因子は高血圧です。
血圧管理の必要性や適切な管理方法を知ることが、脳梗塞の予防につながります。
目次
脳梗塞と血圧の管理|急性期・慢性期の治療方法のポイント
脳梗塞と高血圧の関係や、急性期から慢性期の血圧管理についてお伝えします。脳梗塞における血圧管理の考え方を知れば、治療の根拠が分かります。
高血圧は脳梗塞の危険因子
脳梗塞は脳の血管が閉塞して血の流れが悪くなります。脳神経細胞の機能障害によって、半身麻痺やろれつ困難などの神経症状が出る病気です。
脳梗塞を引き起こす最大の原因は高血圧と言われます。高血圧が長く続くと動脈硬化が進むためです。動脈硬化になると血管内にプラークと呼ばれるコレステロールが溜まったり、血栓ができて血管が詰まりやすくなります。
脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血の総称が「脳卒中」です。高血圧を完全に予防できれば、日本人の脳卒中は約半分に減ると言われています。
【脳梗塞急性期】血圧は下げ過ぎない
脳梗塞発症後24時間以内を超急性期、1~2週間以内を急性期と呼びます。血圧は高値になることが一般的です。
脳梗塞急性期は血圧を下げること(降圧)が勧められていません。血圧を高く保てば、脳梗塞で血の流れが悪くなった脳への血流を促せる可能性があるためです。ただし、次の表にあてはまる場合は降圧が検討されます。
・収縮期血圧が220mmHg以上または拡張期血圧が120mmHg以上の高血圧が続く時 ・大動脈解離、急性心筋梗塞、心不全、腎不全を合併時 | 慎重な降圧療法を検討 |
・血栓溶解療法予定患者で、収縮期血圧185mmhg以上または拡張期血圧110mmHg以上の時 ・血栓溶解療法実施後24時間以内の患者で、収縮期血圧180mmHg以上または拡張期血圧105mmHg以上の時 | 降圧療法が勧められる |
・機械的血栓回収療法を実施する時 | 血栓回収前の降圧は必須でないが、血栓回収後は速やかに降圧する |
・神経症状が安定している高血圧合併例 | 他に禁忌がなければ、脳梗塞発症後24時間以内でも発症前に使っていた降圧薬の再開を検討してよい |
参考:日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2023)」
【脳梗塞慢性期】血圧の管理で再発予防
脳梗塞の慢性期は降圧治療が重要です。脳梗塞は発症後1年で10%、5年で35%、10年で50%程度再発すると考えられています。降圧治療によって脳梗塞の再発リスクを下げられます。
降圧治療の目標値は75歳未満で130/80mmHg未満、75歳以上で140/90mmHg未満です。年齢以外にも、降圧目標は冠動脈疾患や慢性腎不全、両側頸動脈狭窄症など個別の状況によって異なります。
脳梗塞|血圧の管理に必要な治療は?薬の種類と内服の重要性
高血圧の治療に使われる薬の働き、内服継続や禁煙の重要性についてお伝えします。高血圧を治療する方法について知り、脳梗塞の再発を予防しましょう。
急性期…高血圧の治療に使われる薬
高血圧の治療に使われる薬は主に次の4種類です。
➀Ca拮抗薬…血管の筋肉に対するカルシウムの働きを抑えて血管を広げ、血圧を下げる。
②アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬…アンジオテンシンⅡは血圧を強力に上げる物質。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬は体内のアンジオテンシン受容体を遮断して、血圧を下げる。
③ACE阻害薬…ACEはアンジオテンシンⅠをアンジオテンシンⅡに変える酵素。ACE阻害薬はACEの活性を阻害して血圧を下げる。
④利尿薬…体液量(循環血液量)が多いと、血圧は上がる。利尿薬は尿として塩分や水分を排出する働きがあり、体液量を減らして血圧を下げる。
慢性期…薬の内服継続と禁煙が鍵
高血圧がある場合、脳梗塞の再発予防として降圧薬の内服継続が重要です。
脳梗塞発症の退院後、服薬を中断する患者さんが増えます。適切な服薬ができていないと薬の効果が不十分になるため、脳卒中が再発しやすいです。
また、タバコは脳梗塞の危険因子であるため禁煙が推奨されます。タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は血圧を上げるためです。タバコには依存性があり自力での禁煙は難しいため、禁煙外来の受診を検討するとよいでしょう。禁煙補助薬を使うと離脱症状がでにくく、比較的楽に禁煙ができます。
脳梗塞の再発予防|血圧を管理する食事療法と運動療法
高血圧を管理するための食事療法と運動療法、家庭血圧の測定についてお伝えします。正しい血圧管理が脳梗塞の再発予防につながります。
食事療法…減塩と栄養バランスのよい食事
食塩は血圧を上げる大きな原因で、6g/日程度への減塩が望ましいです。加工品や塩蔵品は避けて生の肉や魚を選ぶ、昆布やかつおのだしを使った調理、香辛料や薬味を生かした料理で減塩しましょう。
肥満は血圧上昇に影響するため、食べ過ぎは控えて適正体重を維持します。主食、主菜、副菜をバランスよくとり、3食規則正しく食べることが重要です。
運動療法…適度な有酸素運動とリハビリ
定期の有酸素運動によって、高血圧の患者さんは収縮期血圧が3~5mmHg、拡張期血圧は2~3mmHg下がることが期待されます。
有酸素運動はエルゴメーター(自転車こぎ)、トレッドミル歩行、水中歩行から選ぶとよいでしょう。運動は軽めからスタートし、運動中に血圧が200/105mmHgを超えないようにします。低強度の運動で血圧が著明に上がる人は事前の運動不可試験が必要です。
また、在宅で生活する脳梗塞患者さんは歩行機能改善や生活動作能力の向上のため、リハビリの継続が適しています。
家庭でも血圧を測定|仮面高血圧の危険性
家庭で測定した血圧は、診察時に測定した血圧より信頼性が高いです。家庭血圧を指標にした降圧治療が推奨されています。
血圧が診察時は正常だが家庭では高い患者さんがおり、仮面高血圧と呼ばれます。仮面高血圧は脳梗塞の危険度が高いです。仮面高血圧は家庭血圧をはからなければ見落とされてしまいます。
家庭血圧をはかる時のポイントは次のとおりです。
・上腕ではかるタイプの血圧計を選ぶ
・朝、晩の2回はかる
・トイレ後、椅子で1~2分休んで座ったままはかる
・1回の測定で2度はかり平均をとる
・週5回以上はかる
血圧手帳に結果を記録して主治医にみせましょう。
脳梗塞の血圧を管理する方法まとめ
今回は脳梗塞後の血圧を管理する治療や、再発予防のための食事療法や運動療法についてお伝えしました。
脳梗塞を引き起こす最大の原因は高血圧と言われます。
脳梗塞急性期は脳の血流保持のため血圧を高めに管理しますが、患者さんの状況に応じて降圧治療が検討されます。脳梗塞の慢性期で高血圧がある場合、再発予防として降圧薬の内服継続と禁煙が重要です。
高血圧の改善のためには減塩とバランスのよい食事が重要です。有酸素運動やリハビリも併行するとよいでしょう。