失調性構音障害の特徴とリハビリ・コミュニケーションのポイント
2024.04.16
失調性の構音障害は小脳の損傷が原因で起こる障害でリハビリによる治療が必要です。失調性だけでなく構音についての障害はいくつかあり、原因によってリハビリが異なる場合もあります。
構音障害は頭ではわかっているのに上手に発音できなくて、コミュニケーションが取れず誤解されてしまうことも多い疾患です。まずは周囲の人が失調性など構音の障害を理解する必要があります。
家族や身近な人が失調性の構音障害になった場合のリハビリやコミュニケーションのポイントもご紹介します。
目次
失調性だけじゃない!構音に起きる障害の種類とリハビリの必要性
構音障害は声を発する機能に問題があって発音が上手にできないことをいいます。構音障害といっても原因によってタイプや症状が異なります。
まずは構音障害の種類やリハビリの必要性について解説します。
構音の障害は大きく分けて4つ
構音障害は大きく分けると以下の4つに分類されます。
1、聴覚性構音障害
難聴などにより、正しい発音が聞き取れないために発音学習ができず、発音に障害が生じる状態
2、器質性構音障害
口蓋裂や口腔がんの手術後など音を作る器官の一部が欠損したり、形が違うために起こる発音の問題がある状態
3、運動障害性構音障害
交通事故による脳損傷や脳卒中など、発音に関わる働きをする神経の病気が原因で思い通り発音ができない状態。失調性構音障害もこれにあたる。
4、機能性構音障害
上記3つにあてはまらず、明らかな原因がないが発音に誤りがある状態
運動障害性構音障害は脳の損傷部位で変わる
さらに「運動障害性構音障害」は脳の損傷した部位によって3つにわけられます。
・麻痺性構音障害
口や下など発音に使われる筋肉が麻痺することで起こる障害。脳出血による構音器官の麻痺が原因。
・失調性構音障害
発音に使う筋肉の動きがコントロールできなくなり、発音の調整ができなくなる障害。小脳の損傷が原因。
・ディサースリア
発音に使われる筋肉を強調させる脳の部位が損傷することで発音が不規則になる障害。脳血管障害以外にも、パーキンソン病、筋ジストロフィーが原因の場合も。
リハビリは疾患を理解して行おう
構音障害のリハビリは言語聴覚士の指導のもと行われます。。構音障害のレベルや原因によってリハビリ内容も変わります。
もう1つの言語障害である失語症との違いも理解しましょう。失語症は脳に部分的な障害を受け、運動機能や感覚機能は正常で意識や知識にも障害はないが、「聞く・話す・読む・書く」ができない状態です。
一方、構音障害の場合は、耳で聞くことや頭で理解することはできるので筆談でコミュニケーションをとることもできます。
失調性の障害は小脳の疾患が原因|構音の障害に対するリハビリ
脳卒中や交通事故などで小脳が損傷すると運動失調という症状がみられます。失調性の構音障害にはどのような特徴があるのでしょうか?具体的な構音に対する障害やリハビリの方法について解説します。
失調性構音障害の原因
失調性構音障害は小脳の損傷によって起こります。小脳は細かい運動のコントロールを司る部位です。大脳からの運動の命令が出されると、小脳が細かい筋肉に指令をだしきちんとコントロールする役割があります。
小脳が何らかの理由で損傷することで細かい運動のコントロールができなくなり、声の大きさの調節や構音が正しくできなくなることを失調性構音障害といいます。
失調性構音障害の特徴
失調性構音障害の特徴は発話に関わる筋力が低下することによって、声の大きさや高さが不自然だったり、発話のリズムが乱れたりします。
具体的には以下のような特徴があります。
・ろれつが回らない
・「ますます」など繰り返す音が言えない
・同じ音が連続でつながる:「たたみ」が「たーみ」など
・発音がいきなり大きくなる
母音や子音の崩れも頻繁かつ不規則に起こるので酔っ払いのような話し方に聴こえるのが特徴です。
失調性構音障害に対するリハビリ
失調性構音障害は発声に対する機能訓練よりも活動制限のアプローチのほうが有効と言われています。具体的なリハビリとして3つご紹介します。
1、構音生成ドリル
生成ドリルは「ボール:ポール」のように音素だけが異なる音節や単語が対になったドリル集です。構音運動を調節することで発話の明瞭度を改善する目的で使用します。
2、ペーシングボードを用いた訓練
ペーシングボード訓練は色の異なるスロットを指で押しながら一音ずつ発話します。強制的に発話の速度を遅くさせることで、構音の正確性を高めます。
3、リズミック・キューイング法
治療者が目標とする速度でリズムをつけて文中の語を指し、これに合わせて音読、復唱させる方法です。発話の明瞭性だけでなく適切なリズムと速度を維持する目的で行います。
参考:ニューロメディカル・小脳性運動失調と小脳性構音障害の関連性
失調性など運動障害性構音障害になったら…家族ができるリハビリとは
構音障害の症状改善には家族や身近な人との関わりがとても重要になってきます。日常生活でのコミュニケーションの取り方が症状改善につながることもあるので、何気ないやりとりを増やすことがとても大切になります。
コミュニケーションがリハビリに
話を聞くときには、以下の3つのポイントを意識してみてください。
・言葉が出るまででゆっくり待つ
・間違いを指摘しない
・分かったふりをしない
・ジェスチャー、視線、表情、声のトーンなどを大切にする
いつもの日常生活のやりとりがそのままリハビリになるので、食事やお茶をしながらゆっくりコミュニケーションをとることを心がけましょう。
重要なのは意思疎通をはかること
親しい人が構音障害になったら「以前のように話せるようになってほしい」と思うかもしれせん。しかし家族や友人が熱心に訓練を行うことが患者さんのストレスになるリスクもあります。
言葉を流暢に話すことだけを目指すのではなく、不完全でもコミュニケーションがとれるようになることが大切です。言語以外にもコミュニケーション手段はたくさんあります。よりストレスなく意思疎通を図るにはどうしたらいいかを考えていきたいですね。
まとめ|失調性の構音障害に関するリハビリ
失調性構音障害は小脳の損傷が原因で運動のコントロールが難しく、発話が上手にできなくなる病気です。失調性の構音に対する障害は発声練習や発話の協調性のリハビリを行います。失調性構音障害の特徴を理解してリハビリを進めることが大切です。
失調性の構音障害は家族や周りの人とのコミュニケーションが回復に大きく関わります。家族とコミュニケーションをとれたことがリハビリの意欲を高めるきっかけにもなります。たとえ完全ではなくても、家族や周りの人と意思疎通を図れることが一番大切なことです。