
脳梗塞後の歩行を支えるリハビリの靴とは?選び方とメリットを解説
2025.06.09

脳梗塞の経験後、多くの方が抱える悩みが「歩きにくさ」や「転びやすさ」です。後遺症の影響で足元が不安定になり、転倒への不安を抱えながら日常生活を送っている方は少なくありません。
そんな不安を和らげ、安全な歩行をサポートしてくれるのがリハビリの靴です。適切な靴を選べば転倒のリスクが軽減し、毎日を前向きな気持ちで過ごせるでしょう。
今回はリハビリの靴が果たす役割や重要性、選ぶポイントについて解説します。安心してリハビリに取り組み、毎日を前向きな気持ちで過ごせるよう、正しい靴選びのコツを押さえましょう。
目次
転倒リスクが高まる脳梗塞後|なぜリハビリの靴が必要なのか

脳梗塞を発症して退院した後、特に注意したいのが「転倒リスク」です。転倒を防ぎ自立した生活を送るには、日々のリハビリに加え適切な靴選びが欠かせません。
ここからは、脳梗塞後に転倒リスクが高まる理由や転倒を防ぐリハビリの靴選びの重要性について解説します。
脳梗塞発症後に注意!転倒リスク上昇の理由
脳梗塞を経験した後は、以下のような後遺症によって転倒の可能性が高まります。
後遺症 | 特徴 |
痙縮 | 筋肉が過剰に緊張し関節が曲がりにくく、思うように手足を動かせなくなる |
筋力低下 | 麻痺した側の筋力が落ちてバランスを崩しやすくなる |
感覚障害 | 足の感覚が鈍くなり、足の位置を正確に把握しにくくなる |
視覚障害 | 視野が狭くなったり物が二重に見えたりして、つまずきやすくなる |
認知機能の低下 | 注意力や判断力が落ち、転倒の原因になる |
特に片麻痺の症状が現れた在宅患者のうち、36~73%が転倒を経験すると言われています。健常高齢者と比べると転倒リスクは約2倍に上がるため、注意が必要です。
参考:神経系理学法「在宅脳卒中片麻痺患者の転倒予測要因の検討」
転倒が引き起こす生活への影響と危険性
脳梗塞を経験した方が転倒すると、不安や恐怖心からリハビリへの意欲が低下してしまう場合があります。
また、麻痺がある方は転んだ際に上手く受け身を取ることが難しく、骨折などのケガにつながるかもしれません。骨折により長期間の入院や安静が必要になれば、筋力や体力が落ちてしまい、寝たきりになるケースも考えられるでしょう。
転倒は体だけでなく、生活にも心理面にも大きな影響を及ぼします。前向きにリハビリに取り組めるよう、安全に歩行できる環境作りが欠かせません。
転倒を防ぐためにできること
脳梗塞発症後は後遺症の影響で思うように足を動かせず、バランスを崩しやすくなる場合があります。そのため、安心してリハビリに取り組むには、足元の安定性を高めるためのリハビリの靴選びが大切です。
あなたの症状や足の形に合う靴を選べば安定性が増し、転倒へのリスクを軽減させて前向きにリハビリに取り組めます。
一般的な靴にはない特徴とは?リハビリの靴を使うメリット

リハビリの靴には足元の安定性を高めるために、一般的な靴にはない特別な機能が備わっています。
転倒への不安なくリハビリに集中して取り組めるよう、リハビリの靴が持つ強みや特性を確認しましょう。
歩行の不安と負担を和らげる
リハビリの靴は、脳梗塞の後遺症によって「歩行が安定しない」「つまずく」といった不安を軽減するために、さまざまな工夫が施されているのが特徴です。たとえば、かかと部分が丈夫で安定感を増す設計のものや、歩行中の負担を軽くするために靴底に十分なクッション機能が備わっているものなどがあります。
歩行への安心感が増せば外出やリハビリへの意欲が向上し、脳梗塞の後遺症の回復につながりやすくなるでしょう。
足のトラブルを予防・軽減する
脳梗塞後に足の動きが変わることによって特定の部分に圧力がかかりやすくなり、靴擦れが起きやすくなります。タコや魚の目が発症する場合もあるでしょう。これらのトラブルは痛みを引き起こすケースが多く、リハビリや歩行のモチベーションが下がる恐れがあります。
リハビリの靴は足にフィットするよう工夫されており、靴擦れやタコができにくい設計です。また、軽い素材で作られているものも多く、足への負担が軽減するよう工夫されています。
回復への第一歩として、リハビリの靴を揃えて足のトラブルを防ぎ、安心してリハビリに取り組む環境を整えることは大切です。
左右の異なる症状にも柔軟に対応できる
脳梗塞の後遺症は、体の片側だけに出る場合が少なくありません。こうした症状に備えるため、リハビリ用の靴の中には片方だけの購入に対応した商品が多く展開されています。必要な靴のみを購入すれば、コストを抑えながら機能性の高い靴を備えることが可能です。
浮いた費用で好きなデザインの靴を揃えたり、着用シーンに応じたコーディネートも楽しめるようになります。経済的な負担を軽減しながら機能性やファッション性もカバーできる点は、一般的な靴にはないリハビリの靴特有の強みです。
リハビリの靴を選ぶポイント|安全な歩行をサポートするために

ひと言でリハビリの靴といっても、さまざまな種類があります。ポイントを押さえずに選んでしまい、使いにくかったり足のトラブルにつながったりしては大変です。
歩行の安定性を高め、リハビリに安心して取り組めるよう、リハビリの靴選びで注目すべきポイントを解説します。
脱ぎ履きがしやすい履き口
リハビリの靴を選ぶ際は、履き口が大きく開くタイプを選びましょう。
脳梗塞の後遺症によって足をスムーズに動かすのが難しくなると、履き口が狭い靴では着脱に時間がかかり、日々の外出やリハビリが億劫になる可能性があります。ファスナータイプやマジックテープを施されたものは、着脱が簡単なうえにフィット感の調節もしやすくておすすめです。
歩行の負担にならない軽さ
脳梗塞の後遺症により筋力が低下している方にとって「靴の軽さ」は見逃せないポイントの1つです。靴が重いと、少し歩いただけで疲れてしまいます。足が上がらない原因となり、つまずきやすくなる可能性もあるでしょう。
リハビリの靴は転倒を避けるために、歩行の妨げにならない軽い靴を選ぶことが大切です。
足の形状に合わせて調節可能なデザイン
脳梗塞の後遺症により、足の変形やむくみが現れるケースは少なくありません。転倒を防ぐにはこうした変化に対応しフィットしてくれる靴を選ぶことが重要です。
足の変形が見られる方は、ベルクロタイプやマジックテープデザインの靴が使いやすいでしょう。履いた後に足にフィットするよう調節できるため、歩行の安定性が高まります。
転倒を防ぐデザイン
転倒を防ぐには、かかとの安定性が重要です。購入の際はかかと部分がしっかりと固定されている、安定感のあるものを選びましょう。
また、靴の先端がそりあがったデザインの靴を選ぶと安心です。つまさき部分が浮いていると引っかかりにくく、転倒予防につながります。
まとめ|適切なリハビリの靴選びで脳梗塞後の生活の質低下を予防

脳梗塞という病気を経験したあとは、体のバランスがとりにくくなったり、足がうまく動かせなかったりすることがあります。こうした状態では、転んでしまう(転倒)リスクがとても高くなります。
もし転倒して骨を折ってしまうと、また入院することになったり、歩けなくなってしまうこともあり、生活の自由が大きく制限されるかもしれません。そうなると、「生活の質」が下がり、毎日がつらく感じられるようになってしまいます。
こうした事態を防ぐためには、退院したあとに「転ばない工夫」をすることがとても大切です。その中でも、足元をしっかり支えてくれるリハビリ用の靴を選ぶことは、とても重要なポイントです。
歩いているときに足がひっかかりやすい人、足が外に開いてしまう人、力が入りにくい人など、症状や歩き方には個人差があります。だからこそ、その人に合った靴を選ぶことで、足元が安定し、転びにくくなり、安全に歩けるようになります。
自分に合った靴をはくことで、リハビリにも前向きに取り組めるようになり、外に出かける自信も少しずつ取り戻すことができます。
病気の後の生活を安心して続けるために、「歩くこと」に向き合い、自分の足に合ったリハビリ用の靴を選ぶことは、とても大切な準備のひとつです。専門家と相談しながら、転倒を防ぎ、毎日の生活を快適に過ごすための環境づくりを進めていきましょう。