手根管症候になったら|リハビリが有効とされる理由や治療法を解説
2023.07.25
手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)は、手首にある正中神経が圧迫されることで、掌や指に痛みやしびれを生じさせる病気です。普段からパソコンやスマホを操作し過ぎている人、仕事などで手を使いすぎている人が発生しやすいとされています。
特に手根管症候群の発症には女性ホルモンが関係していることから更年期を過ぎた女性がもっとも発症しやすいです。
手根管症候群になってしまったら、仕事や家事に影響を及ぼしかねないので、原因やリハビリの内容を知って、予防または早期回復を目指しましょう。
今回は、手根管症候群のリハビリ目的や、実際のリハビリ療法についてご紹介します。
目次
手根管症候群の症状は?リハビリが必要な理由や原因を紹介
手根管症候群は、症状が悪化すると物をつまむ動作ですらも難しくなるので、症状や発症しやすいタイプの人について知って、早期治療をこころがけましょう。
手のつかい過ぎなどが影響|手根管症候群
手根管とは、手首のてのひら側にあり、手首や指を曲げるのに関わる正中神経や腱がとおるトンネルのことです。
そして手根管にある正中神経がなんらかの原因で圧迫されることにより指にしびれが生じる病気を「手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)」といいリハビリが必要とされています。
手根管症候群は、明確な原因が特定できない例もありますが、手の使いすぎや女性ホルモンの乱れ、腱鞘炎、骨折や腫瘤による手根管の圧迫なども原因とされています。
女性ホルモンが関係している病気のため、妊娠・出産期や更年期の女性が発症しやすい傾向にあります。
症状が進むと物を落としやすくなる
手根管症候群は、リハビリが必要とされる病気ですが、初期症状としては血圧の低下しやすい早朝または夜間に人差し指と中指を中心につよい痛みやしびれをきたします。
症状がすすむと、親指から薬指の半分(親指側の半分)にまでしびれが広がります。そして母指の付け根の筋力が低下することで母指を開くことができなくなり、小銭をつまんだりボタンをかけるなど手先を使う動作が難しくなります。
リハビリの目的は機能回復
手根管症候群の手術後のリハビリは、動作の機能回復が目的です。座る、寝返りをうつといった日常に必要な動作から、排泄する、入浴するなど生活をより快適にすごすための動作まで理学療法士や作業療法士から指導をうけておこないます。
手根管症候群はどうやって治る?まずは手首を安静にすること
手根管症候群の治療は、症状の程度に関わらず基本的に保存療法から開始します。手根管症候群における治療法のポイントについて見ていきましょう。
サポーターなどを使い手首を安静にする
手根管症候群を診断後リハビリ前に、多くの場合において運動や仕事の量を減らしたり、シーネ(添え木)固定やサポーターなどを使って手関節を中間位に固定する安静措置がとられます。
二〜三ヶ月程度装具を装着することもありますが、昼間に装具をつけられない人や深夜や早朝に症状が出やすい人は、就寝時のみの装着でも効果的なので、できるだけ安静にすることで手根管の症状を軽減できるでしょう。
薬の処方や注射療法
手根管症候群のリハビリ前の治療において、消炎鎮痛剤や末梢神経を保護または再生するビタミンB12など内服薬の処方、腱の炎症をおさえるための手根管内に副賢皮質ステロイドを注射する注射療法なども有効とされています。ステロイドは、炎症をおさえる効果がありますが、再発することもあるので注意が必要です。
また、ステロイドに対する副作用が気になる人もいますが、全身に作用をきたす量ではありません。
通常の痛みどめが効かない場合は、神経の障害による痛みを軽減する「神経障害性疼痛治療薬」を使うこともあります。
症状がひどい場合は手術をおこなう
手根管症候群のリハビリが開始される前に、注射療法などで症状が改善しない場合や神経麻痺を起こしている場合は、手根靭帯を切り離して正中神経の圧迫を取り除く手術療法がおこなわれます。
以前では、手根管部を約3〜4cm切開することにより直接靭帯を切っていましたが、近年では、てのひら部分を1cm程度切開して靭帯を内視鏡下で切る手術が一般的です。
直接靭帯を切る方法よりも内視鏡治療のほうが傷が小さく、手が自由に使えるまでの期間が短いメリットがありますが、場合によっては合併症が発生する可能性もあるので注意が必要です。
また、母指球筋の萎縮が重症化している場合は、人さし指をのばす2本の腱のうち1本を母指に移行する母指対立再建術をおこないます。
参考:J-STAGE「手根管症候群の保存療法における徒手理学療法に関する文献調査」
手根管症候群のリハビリ内容や日常生活で注意すべきポイント
手根管症候群の治療には、装具で固定する方法などもありますが、日常生活においては、積極的につかうことが重要とされています。手根管症候群のリハビリについてご紹介します。
スプリント(装具)の使用
手根管症候群のリハビリでは、治療プログラムのもとで作業療法士や理学療法士の指導にそっておこなわれます。その指導のなかでは、神経を休ませるために手首から指のつけ根のところまでハンドセラピストが作成したスプリント(装具)を装着することもあります。
日常でも適切な姿勢を心がける
手根管症候群のリハビリにおいて、作業療法士による日常生活での手の使い方の指導があります。
手根管症候群の人にとって、しびれやすい手の使いかたとしては、携帯電話やパソコンの操作、食器洗いなど手首を曲げて手指をつかう行為がありますが、これらの作業を長時間・頻回に行なうと再発しやすくなります。
そのため、姿勢を調整したり補助具を使用して手首をまっすぐに保ちながら生活したり、使用する手を変える、長時間の作業を避けるといった方法を提案されます。
具体的な補助具としては、パソコン使用のさいに腕を置いて手首をまっすぐにするクッション(丸めたタオルでも可能)などがあります。
ストレッチなど|運動療法
手根管症候群のリハビリは、柔軟性や可動域の向上といった目的でおこなわれます。手根管症候群でおこなわれる運動療法についてご紹介します。
【手首のストレッチ】
①両腕を伸ばし、両方の手を上下に位置させます。そして下の手の手首と指を曲げ(腕から指までを「コ」の形にする)、上の手で下の手を体側へ引きます。下の手首の背側を伸ばすイメージで行いましょう。
②片方の腕を伸ばし、親指を曲げた状態で握りこぶしをつくり、親指側の手首を伸ばすイメージで手首を小指側に曲げます。
③上記の運動を両方の手で行います。最初は10回程度から開始して慣れてきたら20〜30回程度を目安に実施しましょう。
まとめ:手根管症候群のリハビリや保存療法など治療の方法
手根管症候群のリハビリの内容や、日常生活で気をつけるポイントについて説明しました。
手根管症候群は、女性に発症しやすく、手の動きに異常が出るので日常生活に支障をきたす可能性の高い病気です。
しかし最近では、装具の着用や薬の処方など治療方法も症状に合うものが選択できるうえに、手術のさいの切開部分を小さく済ませられる方法も出てきています。
さらにリハビリ専門スタッフのサポートを受けながら意欲的にリハビリを行なうことで早期に仕事復帰することもできるでしょう。