
歩行周期筋活動|バランスのいい歩行を目指して!主要筋の活動パターンを理解しよう
2025.05.12

歩くことは、私たちの日常生活を支える基本的な動作のひとつです。しかし、何気なく歩いているように見えても、実は足元から体幹まで、数多くの筋肉が複雑に連携して動いています。
一方で、加齢からくる体の筋肉の衰えや病気による後遺症などが原因で、バランスを崩しやすくなったり、歩行スピードが低下する、などの現象が考えられます。歩行に関する悩みは、生活の質(QOL)に大きな影響を与えるだけでなく、転倒による怪我なども想定されるでしょう。
今回は、「歩行周期筋活動(ほこうしゅうききんかつどう)」に焦点をあて、「バランスの取れた歩行」を目指すために必要な要素を解説します。
目次
歩行周期筋活動の基本概念|立脚期と遊脚期の違いと役割

「歩行周期筋活動」という言葉だけを見ると、小難しいものに感じる方も少なくないでしょう。リハビリテーションで活躍されたい人は知識として、リハビリや歩行に関する悩みを持つご本人、ご家族は今後の運動・リハビリに活かすための内容として理解しましょう。
そもそも歩行周期とは何?
歩行周期とは、一側の踵が地面に接地してから、次に同じ側の踵が再び地面に接地するまでの一連の運動を指します。この一連の流れは大きく「立脚期(りっきゃくき)」と「遊脚期(ゆうきゃくき)」に分けられ、それぞれ異なる筋活動パターンが見られます。
- 立脚期:地面に足が接地して体重を支える期間
- 遊脚期:地面から足が離れ、振り出す期間
歩行周期における主要筋群の活動パターン
- 立脚初期(踵接地〜荷重応答):大腿四頭筋・前脛骨筋が主に働き、足部の安定化を図る
- 立脚中期(片脚支持):大臀筋・中臀筋が体幹を支え、骨盤の安定に寄与
- 立脚終期(踵離地〜つま先離地):下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)が推進力を生み出す
- 遊脚期(振り出し):大腿直筋・腸腰筋群が股関節の屈曲を助ける
立脚期と遊脚期の違いとそれぞれの役割について
立脚期=支持とバランスを保つ行為が求められ、遊脚期=次の接地に向けた足の位置調整が求められます。それぞれ、異なる筋活動が起こることによって、連続したスムーズな歩行が可能になります。
歩行は「自然にできるもの」という位置付けですが、歩行が難しいと感じる状況にある方にとっては、その動作の意図や役割を理解しておくことが、リハビリをより効率化させるための一歩になるでしょう。
歩行周期筋活動の解析・観察は誰がどのように行うのか

実際、リハビリの現場では、歩行に関する悩みを持つ人たちのどの部分に注目しているのでしょうか?歩行周期筋活動の解析・観察を解説します。
正常歩行時の筋活動と関節運動
前提として、正常歩行では、筋肉だけでなく関節の運動(股関節・膝関節・足関節)も連動して動きます。なかなか日常生活では想像しないことですが、特に膝関節の屈伸、足関節の底屈・背屈の動きがスムーズであることは、正常歩行にとって重要です。
効率的な歩行ができていることを現していますので、正常歩行から逆算して観察することで課題が見つかりやすいでしょう。
正常歩行に必要な筋肉と関節の働き
具体的に、正常歩行に必要な関節は「股関節」「膝関節」「足関節」が挙げられます。
それぞれの筋肉は下記の通りです。
- 股関節:大臀筋・腸腰筋
- 膝関節:大腿四頭筋・ハムストリングス
- 足関節:前脛骨筋・下腿三頭筋
筋肉群が適切なタイミングで活動することは、エネルギー効率自体も高く、より正常な歩行が実現できると考えられます。
筋活動によるバランス維持と姿勢制御
何かしらの影響で歩行に不便さ、困難さを抱えた場合、バランス維持が大きな課題に挙げられます。
歩行バランスは主に、体幹と下肢の筋肉の協調運動に対する制御が保たれているかどうかが、影響しています。ふらついたり転倒してしまうリスクが上がるのは、この部分が正常に保たれていないことが考えられるでしょう。
歩行周期筋活動の解析と観察
だからこそ、歩行周期筋活動は理学療法士どのリハビリ専門職の方にチェックしてもらう必要があります。
解析には、筋電図(EMG)、ビデオ歩行解析が用いられます。それぞれの筋活動パターンを評価・観察することでデータを収集し、リハビリの立案から進捗状況の確認に用いられます。
歩行周期筋活動を理解することでリハビリにどのような影響がある?

「言葉の意味や概念を理解することに意味はあるのか?」そう思う方も少なくないでしょう。歩行周期筋活動を知る上で、どのように、何に対して活用するのかを決めておくといいでしょう。
正常歩行と異常歩行の違いがわかる?
正常な筋活動パターンを理解していれば、麻痺や筋力低下によって生じる異常歩行を正確に評価することが可能です。ですが、分かった上で何をするのかはリハビリをする患者様自身やご家族の知識レベルでは解釈が追いつきません。
従って、専門家の意見や判断を仰ぎながら適切に歩行周期筋活動に関する知識を使っていきましょう。
リハビリの現場にはどのように活かされるのか
筋活動パターンに基づいたリハビリでは、特定の筋肉群を再度教育、強化する場面で用いられます。また、歩行時の筋肉や関節を動かすタイミングなどの改善にも役立てられます。
総じて言えば、これまで獲得していた「歩行パターン」を再度獲得しにいく作業の材料になるということです。機能回復を目指すにあたっては、リハビリ自体が長期的なものになります。
患者自身も、初期の状態と現在を比較して、モチベーションに繋げたり、リハビリ方法の改善に役立てることができるでしょう。
まとめ|歩行周期筋活動について

今回は「歩行周期筋活動(ほこうしゅうききんかつどう)」について、基本的な考え方から、リハビリの現場でどう使われているか、そして患者さん自身がどのように役立てていけるかをわかりやすく説明しました。
歩くということは、ただ足を前に出すだけではありません。歩くときの動きには「立脚期(りっきゃくき)」と「遊脚期(ゆうきゃくき)」という2つの大事な時間があります。それぞれのタイミングで、体のいろいろな筋肉が、ちょうどよい強さとタイミングで動くことが必要です。これができて初めて、スムーズでバランスのとれた歩き方ができるのです。
この筋肉の動き方のパターン(=筋活動パターン)を理解することは、リハビリのときにとても役立ちます。たとえば、歩き方に少しでも変なところがあると、早めに気づいて対策ができるようになります。それによって、一人ひとりに合った治療やリハビリのプランを作りやすくなるのです。
訪問リハビリや病院でのリハビリの現場でも、とても重要です。筋肉の動き方をきちんと理解しながらトレーニングをすることで、転びにくくなったり、動きやすくなったりするスピードがアップしたりします。
リハビリのときには、理学療法士のアドバイスを受けながら、自分の体のことをしっかり知って目的の回復を目指していくことが大切です。