
骨の萎縮はなぜ起きる?予防リハビリの内容と骨萎縮が起きたときの治療方法を解説
2025.02.28

「骨萎縮(こついしゅく)」という症状名を聞いても、あまりピンと来ないかもしれません。文字通り「骨が萎縮する症状」=骨が弱っていくことを指します。
代表的なのが老化やカルシウム不足による萎縮や、外傷による「ズディック骨萎縮」です。どちらも骨密度が下がることによって骨が空洞化し、骨折しやすくなったり痛みを感じたりします。
なぜ萎縮してしまうのでしょうか?骨の萎縮は予防できるのでしょうか?また、運動療法や食事療法は必要なのでしょうか?
今回は、骨の萎縮が起きる原因と予防方法、また治療後のリハビリについても解説します。
目次
なぜ骨は萎縮する?骨萎縮が起きる原因と予防リハビリの有効性

まずは何故骨が萎縮してしまうのか、そして予防のためのリハビリが有効なのかどうかについても解説します。
骨萎縮は「骨が局所的に減少した状態」
骨が空洞化する、と聞くと「骨粗しょう症」を思い浮かべる方が多いでしょう。厳密には骨粗しょう症の中に「骨萎縮」という症状があるだけで、必ずしも骨萎縮=骨粗しょう症というわけではありません。
骨は不動状態になってしまうと、刺激がなくなり骨の形成<骨の吸収の状態となります。放置すると骨密度が低くなります。この状態が「骨萎縮」です。
例えば、踵骨を骨折して固定・安静にしていたとします。その間、足全体に負担がかからないようにしていると、足の骨に負荷がかからなくなり、段々と萎縮し始めてしまうのです。
骨萎縮の原因は3種類
骨が萎縮する原因は、大きく3種類あるとされています。
- ズディック骨萎縮…外傷性の萎縮。末梢血管が骨折などの外傷によって血流不全を起こした結果、骨萎縮を引き起こす
- 廃用性骨萎縮…寝たきり状態(廃用性症候群)による骨の萎縮
- 骨粗しょう症…老化や閉経後のホルモン量変化による骨密度の低下で引き起こされる萎縮
また、複合性局所疼痛症候群などによっても、骨萎縮が引き起こされます。
予防に運動療法は有効?
骨は、負荷をかけることで形成が促されます。また、カルシウムやマグネシウムなど骨を形成する栄養素を積極的に摂ることでも形成します。
ズディック骨萎縮など外傷性の萎縮については、予防が難しいです。廃用性骨萎縮などはある程度予防が可能です。
廃用性骨萎縮は、自重による負荷が減少すると引き起こされる萎縮です。そのため、なるべく負荷をかけさせるようにする・低栄養状態にならないなどといった予防も有効です。
骨の萎縮を進行させないために…予防リハビリの内容とは

骨の萎縮は、リハビリなど運動療法や食事療法でも予防できます。ここでは、骨の萎縮を止めて予防する方法について解説します。
筋力トレーニングで骨に刺激を与える
骨の萎縮現象は、吸収が形成を上回ることで起きます。骨を形成させるには、骨に刺激を与える=負荷を与えることでも促されるため、筋力トレーニングによる負荷も有効です。
筋力トレーニングと聞くと、筋肉を大きくするイメージが強いです。実際は骨にも負荷がかかっており、この負荷が形成を促します。
ただし、すでに骨密度が低い場合は骨折のリスクを伴います。低負荷のトレーニングで骨を刺激するようにするといった対策も必要です。
可動域訓練で負担を和らげる
骨折など、固定が必要な外傷を負った場合にも骨が萎縮するリスクが高まります。外傷性の骨萎縮のリスク低減には、可動域訓練も有効です。一見すると、固定期間中はなるべく安静にすべきように思えますが、実際には少し違います。
外傷を負った部位以外の関節を動かすようにしておくと、固定期間が終わったあとの萎縮・拘縮を予防できるのです。
例えば、腕の一部を骨折し固定している場合には、近くの関節を意識的に動かすようにします。手指の開き・握りや肘の曲げ伸ばし、肩を回すといった訓練を、痛みのない程度で1日1回でも行うようにしましょう。
食事で骨の密度を高めるのも予防に
運動訓練以外にも、食事による予防が可能です。骨形成を促進が目的なら、カルシウム以外にも以下の栄養素が必須となるでしょう。
- カルシウム
- ビタミンD
- ビタミンK
- タンパク質
- マグネシウム
- 亜鉛
- カロテノイド
これらの栄養素が含まれる食品をバランスよく摂取しましょう。骨を強くすることに繋がります。
もし骨の萎縮が起きてしまったら?治療方法と予後のリハビリ

もし骨が萎縮傾向にあるなら、リハビリや食事によって形成を促進させます。ここでは、骨萎縮がみられる場合の対策について解説します。
骨がなくなる以上に「骨を作る」のが最優先
骨の空洞化がすでに起きている場合、対処法は予防策と同じく「骨を作る」のが最優先となります。
運動療法を取り入れたいところですが、萎縮が起きると痛みを自覚することが多く、負荷運動が難しい場合もみられます。そのため、基本的には栄養摂取がメインです。
その間に拘縮や筋萎縮までもが起こらないよう、薬物療法や痛みが起こらない程度のストレッチ・有酸素運動での現状維持が基本です。
食事療法・サプリで骨強度を高める
骨の空洞化や骨密度の低下が起きている場合は、基本的に骨強度を高める食事が勧められます。カルシウムだけでなく、ビタミンDやマグネシウムなどの栄養素が必要です。
高齢で少食気味の方にはサプリメントでの摂取も推奨されます。タンパク質だけはサプリメントで摂るのが難しいです。食事内容としてはタンパク質多めで、足りない栄養素をサプリメントで補うというのが基本となるでしょう。
骨の強度を高める運動療法も実施
骨萎縮の治療では、運動療法も必要になります。ただし、すでに痛みが感じられたり、骨折のおそれがあるなら、ステロイドなど薬物療法と並行して行われます。
運動もあまり負荷をかけすぎないものが重要です。筋力トレーニングではなく、ウォーキングなどの有酸素運動が基本となります。
外に出て紫外線を浴びると、ビタミンDの生成を促します。ビタミンDはカルシウムの吸収を助けてくれるので、外に出ての有酸素運動(ウォーキングなど)は、栄養面でも効果的といえるでしょう。
まとめ:骨萎縮の治療も予防も「リハビリ」と「食事療法」が重要

骨萎縮とは、骨がつくられる速さよりも骨が減っていく速さのほうが上回ってしまうことで起こる現象です。私たちの体は日々、新しい骨をつくって古い骨を入れ替えていますが、このバランスがくずれると、骨がだんだん弱くなってしまうのです。
そのため、骨萎縮を防ぐには、形成を意識したリハビリと食事がとても大切です。骨をつくる力を高めるためには、カルシウムやビタミンDなどの栄養素をしっかり摂ることが必要です。たとえば、牛乳や小魚、きのこ類などを食事に取り入れるとよいでしょう。
また、骨に負荷をかける筋力トレーニングも重要です。重いものを無理に持ち上げるというよりは、スクワットや軽いダンベル運動など、自分が続けられる範囲で、少しずつ骨や筋肉に刺激を与えていく方法がおすすめです。ただし、運動をするときは、痛みを感じない程度・無理にならない負荷の運動を心がけることが大切。ムリに負荷をかけすぎると、けがをするリスクが高まってしまいます。
さらに、外に出て散歩をするようにウォーキングなどの有酸素運動を取り入れることも効果的です。太陽の光を浴びると体内でビタミンDがつくられやすくなり、骨の形成を助けます。日ごろから「ちょっと歩いてみようかな」「少し体を動かそうかな」と意識して過ごすだけでも、骨萎縮の予防に役立ちます。
運動や食事など、身近なところから少しずつ取り組むことで、骨を強く保ち、将来の健康を守ることができます。ぜひ毎日の生活に、骨を意識した習慣を取り入れてみましょう。