顔面神経麻痺はリハビリで治る?自分でできる対処を知って回復に近づけよう
2025.01.13
ある日突然顔の半分、あるいは一部が動かなくなる症状が、顔面神経麻痺です。多くの場合は数週間程度で回復していきますが、症状の改善がみられず重症化する例もあります。特に、発症から1週間程度で悪化することが多いため、早期治療が重要です。
また、顔面神経麻痺に対してリハビリのみで治ることはありませんが、リハビリを取り入れることは有効とされています。ただし、間違った方法で行ったりやり過ぎたりすると、症状の悪化につながるため注意しましょう。適切な対処法を把握しておくことが大切です。
目次
顔面神経麻痺の症状・原因|リハビリ有効なのかも解説
顔面のそれぞれの筋肉に張り巡らされた神経である顔面神経に障害が生じると、顔面神経麻痺となります。突然発症することが多く、顔の半分あるいは一部を動かせなくなることが特徴です。どのような方でも発症する可能性があるため、顔面神経麻痺の原因や症状とあわせて、リハビリの効果についても理解しておきましょう。
顔面神経麻痺の原因
顔面神経麻痺は、顔の筋肉が動きづらくなる病気です。ある日突然発症することが多く、顔の半分、あるいは一部が動かせなくなります。顔面神経麻痺になる原因はさまざまです。
- 中枢性麻痺:脳出血、脳梗塞など
- 抹消性麻痺:ベル麻痺、ハント症候群
- 外傷
- その他
このなかで大部分を占めているのが、抹消性麻痺です。特に、単純ヘルペスウイルスが関与しているといわれているベル麻痺が多く、顔面神経麻痺となる原因の約60%を占めています。
顔面神経麻痺でみられる症状
顔面神経麻痺の症状のほとんどは、顔のどちらか半分に現れます。
- 顔がまがった状態
- 額にシワを寄せることができない
- 目を閉じられない
- 水を飲むと口から溢れる
これらの症状に加えて、耳鳴りやめまい、難聴などの症状がみられることもあります。
リハビリの効果と目的
顔面神経麻痺が軽症の場合、2週間〜4週間で回復していきますが、ベル麻痺の重症化やハント症候群で症状の改善がみられない、などの例も存在します。このような場合に行われるリハビリは、麻痺の改善・病的共同運動・拘縮の予防・軽減が目的です。筋力の強化を目的として行うわけではないため、焦らずじっくり行うようにしましょう。
顔面神経麻痺の治療法はリハビリ以外にも3つの方法がある
顔面神経麻痺は、リハビリだけでは治りません。また、顔面神経麻痺の場合は筋力強化を目的としたリハビリではないため、動かしすぎると症状の悪化につながる可能性があります。症状を悪化させないためにも、適切な治療法を理解しておくことが大切です。
急性期は薬物治療
抹消性顔面神経麻痺の場合、急性期治療・亜急性期治療・慢性期治療の、3つの期間にわけることができます。麻痺発症1週間以内の急性期治療で行われる治療法が、ステロイドや抗ウイルス薬を中心とした薬物治療です。
発症から1週間程度で悪化することもあるため、早めに治療を行うようにしましょう。
参考:J-stge「シンポジウム(7)顔面神経麻痺の治療と後遺症への対応」
症状によっては手術も検討
顔面神経麻痺の症状の改善が一定期間みられない場合、顔面神経減荷手術も検討されます。この手術は、顔面神経周囲の骨を削り取り、圧迫から解放して血流の改善を図ることが目的です。この手術は全身麻酔で行われ、3〜4泊の入院が必要となります。
顔面神経減荷手術は、薬物治療のみで改善がみられない場合や、予後が悪いと考えられる場合などの選択肢です。医師としっかりと相談し、適切な治療法を選択しましょう。
ボツリヌス療法で表情の改善
ボツリヌス菌が作り出す天然のたんぱく質を成分とする薬を筋肉内に注射する治療法が、ボツリヌス療法です。この治療法を行うことで、顔面拘縮や病的共同運動(意図しない動きが生じる)などの改善に期待ができます。
手術に比べると表情の細かな調整ができるため、表情のバランスを改善させることに期待ができることが特徴です。注射の効果は3〜4ヵ月といわれているため、1回の注射で完了しないことを理解しておきましょう。
顔面神経麻痺は自分でリハビリができる!日常で注意すべき行動も
顔面神経麻痺の症状改善には、自宅でできるリハビリを取り入れることもおすすめです。ただし、無理なリハビリは症状の悪化につながる可能性があるため、ここで解説する適切な方法と注意点を理解しておきましょう。
顔の筋肉を温める
顔の筋肉を温めると血管が広がるため、血流がよくなり症状の改善に期待ができます。自宅で行う際は、蒸しタオルを作って温めることがおすすめです。麻痺がある側に温かいタオルをあてて、しっかりと温めましょう。
蒸しタオルの作り方は、タオルを水で濡らしレンジで加熱するだけです。その際、タオルはジップロックに入れて、加熱時間を調整しながら行いましょう。
筋肉の萎縮を防ぐマッサージ
顔面神経麻痺になると顔の筋肉が動かなくなり、筋肉が痩せていき、神経が回復しても動きが回復しない可能性があります。このような状態になることを避けるために、手の指先や手のひらを使って、皮膚と筋肉のマッサージを行いましょう。筋肉をほぐして、堅くなることを防ぐことが目的です。
ただし、強すぎるマッサージは症状の悪化につながる可能性があります。できるだけ優しく、物足りないくらいで行うことがおすすめです。
日常生活で注意する行動
顔面神経麻痺の症状がある際は、無意識で行ってしまいがちな行動に注意しましょう。
- 顔の皮膚がよれるまで触らない
- 顔を触るときは優しく触る
- 顔の筋肉を無理に動かさない
顔面神経麻痺は筋肉ではなく、神経に障害が生じているため、筋肉を傷つけてしまうと逆効果となってしまうかもしれません。無理な動きはせず、ゆっくりと行うことが重要です。
まとめ|顔面神経麻痺のリハビリについて
顔面神経麻痺とは、顔の表情をつかさどる神経がうまく働かなくなる病気です。顔の筋肉を思うように動かせなくなり、リハビリが必要になることがあります。特に急性期(症状が出始めた時期)には、ステロイドや抗ウイルス薬などを使う薬物治療が行われることがあります。もし「顔が動かしにくい」「口や目がうまく閉じられない」などの症状がある場合は、すぐに専門医にみてもらいましょう。
顔面神経麻痺には、次の3つの治療期間があります。
- 急性期治療(症状が出始めた時期)
- 亜急性期治療(急性期がすぎた後の時期)
- 慢性期治療(症状が長く続いている時期)
急性期には薬を使った治療を中心に行い、その後は自宅でのリハビリがとても大切になります。リハビリでは、顔の筋肉を動かす練習やマッサージなどを行い、回復をうながします。自分でできるリハビリもあるので、医師やリハビリの専門家に相談しながら取り組んでいきましょう。