介護保険と医療保険のリハビリ併用禁止についての理解と注意点
2024.01.05
介護保険と医療保険は、日本において重要な社会保障制度です。高齢者や障害者の介護を支援するための「介護保険」と、医療費の負担を軽減するための「医療保険」は、それぞれ独自のサービスを提供しています。
しかし、いざ保険を適用する際に「どちらも使用できるのではないか」という問題に出会うでしょう。もちろん保険を併用することには制約があります。今回は「介護の保険と医療の保険の違い。なぜリハビリの時に併用が禁止されているのか、について解説します。
目次
介護の保険と医療の保険の違いって?リハビリ時なぜ併用が禁止!?
介護の保険、医療の保険…リハビリに用いる前に併用できない理由を然りと押さえておきましょう。ポイントとしては医療と介護それぞれ目的が違うという部分にあります。
【制度の概要】介護保険・医療保険の違い
まず、それぞれの保険について概要を理解しましょう。
介護保険とは…65歳以上の高齢者や身体障害者を対象に、日常生活における介護や支援が必要な方々にサービスを提供する制度。ヘルパーや訪問看護、デイサービスなどのサービスが含まれます。しかし、リハビリに関しては一部の制約があります。
医療保険とは…国民皆保険制度を基盤としており、医療機関での診療や入院にかかる費用を割引価格で受けることができます。急な病気やケガに対応する医療面でのサポートが主な目的です。
具体的な目的の違いと優先順位
介護の保険、医療の保険。リハビリ時に併用が禁止される理由として制約の問題と、そもそも目的が違うという特徴があります。
例えば、介護保険の場合は日常生活の支援に特化。一方で医療保険は、病気やケガに対する治療やリハビリテーションをカバーする保険です。
介護保険の適用条件としては厚生労働省の定めるように
「40歳以上65歳未満の健保組合、全国健康保険協会、市町村国保などの医療保険加入者」「要介護(要支援)状態が、老化に起因する疾病(特定疾病※)による場合に限定。」とされています。
この条件が満たされていて医療保険、介護保険ともに加入している場合、介護保険が優先される仕組みになっています。
リハビリテーションの捉えかた
リハビリテーションに関しては「機能訓練」として介護保険の場合も、一部のサービスを提供しています。ですが、あくまで「一部」であり、リハビリテーションが「主な」目的となる場合は、別途医療機関での受診が必要となるケースも。
リハビリに関しては、主に専門のリハビリテーション施設や医療機関で提供されます。しかし、医療保険でリハビリを受ける場合には、診断書や医師の指示が必要となるでしょう。
リハビリを受ける際には、介護保険と医療保険の使い分けに加えて、保険のカバー範囲をよく確認することをお勧めします。
【リハビリテーション】3つの段階に分かれる役割について
リハビリテーションは急性期・回復期・生活期という段階に分けられて取り組まれます。それぞれの段階によってリハビリテーションの役割は変化していきますので、介護の保険、医療の保険のリハビリ・併用禁止という部分だけでなく、全体を捉えていきましょう。
段階によって変化する役割
①急性期のリハビリテーションは【回復】を促す
→急性期のリハビリテーションの役割は、早期に機能回復を目指す段階を指しています。怪我や病気など、患者の身体機能や日常生活動作の回復促進が目的。
②回復期のリハビリテーションは【社会復帰】に向けた一歩
→急性期治療後に患者の状態が安定した段階で実施。急性期では機能回復をメインとしていましたが、回復の効果をより高めたり社会復帰に向けた訓練を目指した段階です。
③維持・生活期のリハビリテーションは【動作の維持と向上】へ
→生活期のリハビリテーションは、回復期治療後に患者が日常生活を営む段階で行われます。社会復帰の維持・向上や日常生活動作の維持・向上が目的
実施場所の違いと保険の範囲について
急性期、回復期においては主に医療保険でのリハビリになります。もちろん怪我や病気の区分によって変化は生じます。ですが、リハビリの実施場所として「病院内」で行われるため医療保険が適用されます。しかし、日数制限が設けられていることに注意しましょう。
例えば
・脳血管疾患:180日
・廃用症候群:120日
・整形外科疾患:150日
・呼吸器疾患:90日
などが挙げられます。ただし医師によって判断される高次脳機能障害などのケースも存在します。
したがって、生活期などのように自宅や施設を用いるリハビリの場合は、医療保険の適用外になるということを覚えておきましょう。ただし、医療保険期限内でリハビリが終わらない場合は、同様に自宅や施設でのリハビリが必要になります。
補足:厚生労働省・診療報酬改定に関する介護保険給付
診療報酬改定に伴い、要介護被保険者等に対する医療保険の維持期・生活期のリハビリテーションの廃止が行われています。2018年度改定で1年間の経過措置を設けて廃止、介護保険への移行が行われました。2019年4月より維持期・生活期のリハビリテーションにおいては介護保険からの給付となっています。
簡単にいえば医療保険は急性期、回復期まで。それ以降に関しては介護保険の扱いになります。
これによって医療の必要性が低い人、病院内のリハビリでは回復見込みが少ないと判断される人などは医療保険から介護保険へ移行されることになりました。
まとめ|介護保険・医療保険のリハビリにおける併用は禁止
そもそも、介護保険と医療保険の違い、医療リハビリ、介護リハビリの違いを知っておくことが重要です。目的に違いがあるため、介護の保険、医療の保険をリハビリ時に併用することは禁止。
リハビリを受ける際には、自身の状況に合った保険制度を選択し、必要な手続きを遵守することが重要です。具体的な手続きや最新の情報は公的機関や専門家に相談することをお勧めします。