脳梗塞後に一人で歩けるようになるまで回復する人の割合やその期間は?
2024.06.20
脳梗塞を発症し片麻痺などの症状が出た場合、歩行障害を生じることがあります。特に発症直後、自分の手足が自分のものではないように感じたり、思うように歩くことができなったりすると不安に感じてしまう方が多いのではないでしょうか。
脳梗塞後、「一人で歩けるようになるまでどのくらいかかるのか」と心配に思ってしまうでしょう。結論から言いますと、適切な治療やリハビリを受けることで多くの方が歩けるようになっています。
今回は、脳梗塞後に歩けるようになるまでどのくらいの期間がかかるのか、また「自立して歩けるようになる可能性はどのくらいあるのか」について解説します。
目次
脳梗塞から歩けるようになるまでの道のり|歩行自立度とは
脳梗塞発症後に歩けなくなるのは、重症度や患者さんの身体の状態によっても変わります。歩けるようになるまでの道のりとともに、歩けなくなる原因や歩行の自立度を表す指標についてお伝えします。
歩けなくなる原因
脳梗塞発症後に歩けなくなるには後遺症の影響があります。歩けなくなる原因の後遺症には以下のものが考えられます。
- 運動麻痺:手足の力の調整がしにくい、動きをコントロールしにくいなど手足を思うように動かすことができなくなる。
- 感覚障害:身体の感覚が鈍くなったり、なくなったりすること。手足の位置の感覚や触れられている感覚や痛み、温度などが感じられにくくなる。
- 筋肉の異常緊張:筋肉が緊張しすぎて、手足が動かしにくかったり勝手に動いてします状態
これらの症状が単独、もしくは複動的に影響することで歩けなくなるのです。
歩行の自立度を表す指標
歩行の自立の程度を表す指標として、FACが用いられます。
FunctionalAmbulationCategories(FAC)
0 | 歩行困難 | 歩行困難、2人以上の介助が必要。 |
1 | 介助歩行レベル2 | 継続的な1人の介助が必要。体重を支える必要がある。 |
2 | 介助歩行レベル1 | 断続的な1人の介助が必要。軽く触れる程度。 |
3 | 監視歩行 | 平地歩行可能だが、監視が1人必要。 |
4 | 平地歩行自立 | 平地は自立歩行可能。階段や坂、でこぼこ道は見守りが必要。 |
5 | 歩行自立 | どんな道でも自立歩行が可能。 |
レベル3までは介助者が必要な状態なので、一人で歩けるレベルはレベル4以上と判定されます。
参考:群馬県理学療法士協会「FunctionalAmbulationCategories(FAC)」
歩けるようになるまでの道のり
早く歩けるようになりたいと焦る気持ちはあると思いますが、しっかりと段階を踏んで治療、リハビリを行わなければ転倒のリスクや症状の悪化を招いてしまうこともあります。
脳梗塞直後は、まず意識が回復し、ある程度の体力がついてから歩行訓練を始めます。その後、装具や手すりを使いながら、徐々に一人で歩けるようにリハビリを進めていきます。
特に初期は状態が安定しない場合もあるので焦らずに、徐々に行いましょう。
脳梗塞発症後から歩けるようになるまでの目安は4カ月~6ヵ月!
脳梗塞を発症した患者さんのほとんどが6カ月以内に歩けるようになると報告されています。歩けるようになるまで回復した患者さんの特性やリハビリについてご紹介します。
ほとんどの人が歩けるようになる?
一般的には脳梗塞になった患者さんの7割~8割は6カ月以内に一人で歩けるようになると言われています。2017年に行われた研究では対象者の方々は発症から6ヵ月までに毎日1~2時間、週5回のリハビリを受けた結果、発症から3ヵ月で70%の人が歩行自立しており、発症から6ヵ月で86.7%の人が歩行時自立したとの報告がされました。
こちらの研究では杖や装具を使用しての自立歩行も含まれているので、杖や装具を外れるかどうかまではわかりません。また、リハビリを受けなかった人や発症1ヵ月で重度な歩行障害がある場合は可能性が下がります。
参考:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29201557/
参考:JStrokeCerebrovasc.2019Nov;28(11):104367.doi
早く歩けるようになる人の特性
早く歩けるようになる人と時間がかかる人には違いがあるのでしょうか?2021年にオーストラリアで発表された研究によると、以下の特性を持つ人は3~4ヵ月で歩けるようになる可能性が高いことがわかりました。
- 皮質脊髄路を損傷していない
- 寝返りや起き上がり、座るなどの基本動作ができる
- 脚の筋力が強い
- 認知機能が低下していない
- 年齢が若い
年齢などは個人差もありますが、歩けるようになるまでの目安として考えましょう。
参考:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34238016/
早期のリハビリ開始と継続が必要
上記の研究結果からもわかるように、歩けるようになるにはリハビリが必須です。現在の脳梗塞のリハビリは急性期から行うことが推奨されています。基本的には発症後48時間以内に開始し、身体機能の低下防止を目的に行われます。
急性期からリハビリを行うことで、その後の回復期での集中的なリハビリに必要な基礎体力や筋肉を保持することができ、より効果的なリハビリが可能です。
また、リハビリは継続することがとても大切です。1日に詰め込むのではなく、毎日少しづつでも継続することが重要です。
脳梗塞から半年経ったら歩けるようになるまで回復は見込めない?
脳梗塞から半年が過ぎてしまうともう歩けるようにならないでしょうか。そんなことはありません。半年経った後も回復されている方はどのような特徴があるのか見ていきましょう。
本人の意欲がリハビリ効果を高める
脳梗塞から6ヵ月以上たったあとも回復される患者さんもたくさんいらっしゃいます。回復していく患者さんの特徴としては本人の意欲も高い方が多いです。
リハビリ効果を高めるには患者さん自身のモチベーションがとても重要です。リハビリを行う時にやる気にかかわる脳の部分を活性化することで、運動機能をより効果的に回復できると考えられています。
本人のモチベーションが維持できるような環境や、信頼できる医師やリハビリ担当者とリハビリに励むことで、今まで以上に効果を感じられるようになるでしょう。
自費リハビリの併用も検討
脳梗塞のリハビリを病院や施設で受けられる期間は、発症から最大180日と定められています。また、保険適応内でのリハビリも時間や頻度が限られているので、希望する内容をすべて行えない場合もあります。
制限なく、自分の希望に柔軟に対応できるリハビリを行いたい方には自費リハビリがおすすめです。自費になるので、保険適応のリハビリと比べて高額にはなりますが、その分自由度も高く、納得いくまでリハビリを続けることができます。
まとめ|脳梗塞後歩けるようになるまで
今回は脳梗塞後、歩けるようになるまでの道のりについて解説しました。
脳梗塞後、7割から8割の人が6ヵ月以内に歩けるまで回復。特に、回復が早かった人たちは週5回、毎日1~2時間のリハビリを続けていました。一方、脳梗塞から1カ月以内に重度の歩行障害がある場合、回復が難しいこともあります。重要なのは、早期からリハビリを開始し、それを継続することです。納得のいくまでリハビリを行いたい場合は、自費リハビリの利用も一つの方法です。 |
脳梗塞を発症したあとも歩けるようになるまで回復される方はたくさんいらっしゃいます。しっかりと目標をもってリハビリに取り組みましょう。また、医師や家族など周囲の人の協力も大切です。みんなで協力しながら目標達成に向けてリハビリに励みましょう。