脳梗塞のリハビリは予後を左右する重要なもの!目的や継続の工夫
2024.05.09
「脳梗塞のリハビリ」は、脳梗塞発症後の生活の質や、状態の回復に大きく関係しています。
脳梗塞とは、脳血管疾患(脳卒中)の中でも、脳の血管が詰まることで引き起こされる疾患です。近年では、介護が必要になる原因の第二位の要因となっているものが脳血管疾患。元気で長生きをしたいと願う方が、できたら避けたい疾病の一つではないでしょうか。
では、脳梗塞を発症したら、その後の生活はどんなものになるのか…。また、発症後、脳梗塞のリハビリをする意味や目的、継続していくために必要なことはどんなことかを今回は解説していきます。
脳梗塞のリハビリ期間に対して不安を抱えている人も多いでしょうが、周囲のサポートや専門家の意見を受けながら慎重に進めることで、少しずつ日常生活を取り戻せることでしょう。
目次
脳梗塞のリハビリは早く始めるべき!早期リハビリのメリット
脳梗塞と聞くと、「寝たきり」や「コミュニケーションが取れない」などの後遺症を心配される方が多いと思います。そのため、脳梗塞のリハビリを早く始めることが予後に大きな影響を与えることを理解しておくことは、とても重要です。
ここでは、脳梗塞が発症後の生活にどのような影響を与えるのか、また早期リハビリによって期待されることはどんなことでしょうか。
脳梗塞は後遺症が残る病気
脳梗塞は、脳の血管が詰まることにより、脳の細胞が死滅するために、身体に麻痺や障害が現れる病気です。大きな後遺症の症状は主に6つに大別されます。
- 身体の麻痺:脳梗塞が起きた部位により、片方の手足または顔の半分が麻痺します。
- 感覚障害:触覚などの感覚が鈍くなるか、過敏になり、痺れを感じます。
- 言語障害:呂律が回らなくなる。言葉が出てこない。聞く、読むなどの機能も低下します。
- 嚥下障害:口に入れたものを飲み込む機能が低下します。嚥下障害により、栄養を経口摂取できなくなると胃瘻を造設し、栄養を摂る場合があります。
- 視覚障害:視野が狭くなったり、二重に見えたり、片方の目が見えなくなったりします。
- 認知障害:思考力や注意力、記憶力に障害が出ます。
早期リハビリのメリット
脳梗塞のリハビリを早くスタートさせることで、後遺症の回復が期待できます。特に、就労世代などの若い患者においては、約7割が発症直後からのリハビリや適切な治療によって、ほぼ介助を必要しない状態まで回復するため、職場復帰(復職)することが可能な場合も少なくないと言われています。
早期リハビリのメリットは主に3つあります。
- 機能回復の可能性を高める:運動や言語、嚥下などの様々な機能回復の可能性が高まります。それにより、誤嚥性肺炎などの合併症を防ぐことにも役立ちます。
- 認知機能の回復:記憶、注意、思考能力などの認知機能を回復させます。
- 生活の質の向上:発症後も、日常生活の動作ができるようになるためのリハビリを行います。
早期にリハビリを行うことによって、社会復帰を含む生活の自立支援、あるいは介護負担なども軽減することができます。また、患者自身も早期のリハビリによって、回復を感じやすく、自信にもつながるために、発症後の鬱を防止したり、リハビリへのモチベーションの継続もしやすくなります。
このように、脳梗塞のリハビリを早期に開始することは、患者の病状回復だけでなく、生活の質や、介護者の負担軽減にも繋がります。
参考:厚生労働省「脳卒中に関する留意事項」
脳梗塞のリハビリには3つのステージがある!時期別リハビリの目的
脳梗塞のリハビリは、その時期や段階によって3つに分けられます。早期のリハビリとはどの段階で、どのくらいの期間を想定しておくと良いのでしょうか。また、どのような内容のリハビリをどのような目的でプログラムされるのでしょうか。
急性期のリハビリ
脳梗塞のリハビリで、急性期と呼ばれる期間は、発症から2週間程度の症状が安定するまでの間の期間を指します。入院をした病院で進められます。
発症後すぐに行うことのできるリハビリで、麻痺や痺れ、言語障害などの身体的な障害や症状を抑えたり、機能を回復させる目的があります。そのため、脳梗塞の原因となった血栓を溶かす、除去するための治療(血栓溶解療法、血管内治療)が用いられることもあります。
また、容態が安定していれば、筋力や関節の機能低下を防ぐ目的で、ベッドの上で身体を動かすようなリハビリも行われます。
回復期のリハビリ
回復期は、急性期の治療を終えてから3〜6ヶ月程度を指します。脳梗塞の影響を受けた脳の機能を回復させる目的で行います。リハビリの専門病院等で行っていきます。
回復期のリハビリは大きく分けて2つあります。
- 理学療法士や作業療法士が担当する運動療法:生活をしていく上で必要になる筋力や関節などの動作の確認や練習を行っていきます。
- 言語聴覚士が担当する言語や嚥下のリハビリ:嚥下動作の確認や機能にあった食形態での嚥下訓練などを行うことで、機能の回復を計ります。
生活期のリハビリ
生活期は通院や自宅、施設等でリハビリを継続していきます。脳梗塞のリハビリの中でも生活の自立や社会復帰などを目的として進めていく時期になります。この頃になると、患者の日常に近い形で生活を送ることがゴールとなるため、生活の見直し(動作を助けるために必要な設備の検討)や、精神的なサポートなども含まれます。
また、機能面の回復や維持も、個人の生活や障害の状況に応じて、リハビリを選ぶため、個々に合わせたプログラムになります。
脳梗塞のリハビリの効果を高めよう|続けるために大切なこと
脳梗塞のリハビリを早くに開始することの大切さを解説してきました。脳梗塞のリハビリにおいて、その質を高め、より効果的に行っていく方法はあるのでしょうか。また、機能が回復した際には、リハビリを継続していくことが大切ですが、そのために大切なことはどんなことなのでしょうか。
脳梗塞のリハビリは継続が必要
脳梗塞のリハビリで大切なことは、実際に動かしてみて、それを続けていくことです。一度回復しても、リハビリできる状態を維持していくことができないと、せっかく回復した機能が低下してしまうことも考えられます。
そのため、リハビリを一時的ではなく、継続していくことは、身体機能の回復を早め、再発リスクを低減させるためにも重要で、リハビリの効果を高めます。
参考:慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト「脳卒中のリハビリテーション」
リハビリには目的をもって取り組む
脳梗塞のリハビリには、3つの目的があります。
- 脳の機能の回復
- 使えている機能の強化
- 環境を整える
①脳の機能の回復や②使えている機能の強化については、症状や障害が個々で違うため、医師はもちろん、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門家と相談しながら進めることが大切です。専門家と共に、どの部分のどの機能が、今どのような状態なのかを適切に評価し、状態にあったリハビリを選べるといいでしょう。
そして、③環境を整えることは、長期的に患者本人が自立し生活をしていくために、とても大切です。患者とサポートする側が、リハビリが何を目的としているのか、次のステップは何かを理解しておくことがモチベーション維持に役立ち、環境を整えていくことに繋がります。
家族のサポートが大切
脳梗塞の症状や障害の度合いによっては、リハビリが長期に及ぶこともあります。特に、生活期のリハビリでは、日常生活の中で行うため、ご家族の協力があると、モチベーションの維持やリハビリの継続をしやすいです。また、短時間でも、毎日継続できるよう、ご家族とも目的を共有し、どんなことをサポートしてほしいのかを話し合っておくことも大切です。
まとめ|脳梗塞のリハビリ
今回は脳梗塞のリハビリについて、どんな障害や後遺症があるのかということ、またその段階や効果的な方法について解説しました。重要なことは、早期に状態を適切に評価し、治療・リハビリを開始していくこと、そして脳梗塞後こそリハビリを慎重に継続することです。
個々の症状や障害に合わせた脳梗塞のリハビリを医師や専門職と相談しながらプログラムができたら、家族や、親しい方と情報や目的を共有することで、本人がリハビリを継続しやすい環境が整うため、効果的なリハビリにも繋がり、発症後の回復に大きく役立つでしょう。