オンエルボーとは?脳梗塞後の後遺症と生活期の向き合い方について
2025.01.08
起き上がりに必要とされるオンエルボー。脳梗塞などによる後遺症を抱える方にとって生活に欠かせない動作の1つです。
オンエルボーによって生活の幅を広げるのはもちろんですが、大切なのはそこからリハビリへの意欲を高められるかです。正しい動作を身につけ、少しずつ自分の動作範囲を増やしていきましょう。
今回はオンエルボーとは何かを解説しながら、脳梗塞による後遺症、生活期のリハビリへの向き合い方を解説します。
目次
オンエルボーは起き上がり動作の一部|脳梗塞による後遺症とは?
まずはオンエルボーの動作、その言葉の意味するところを理解していきましょう。脳梗塞による後遺症で体が思うように動かせない時はゆっくりと正しい動作を覚えましょう、
オンエルボーとは?
オンエルボーとは「起き上がり動作」を指しています。これは一般生活だけでなく臨床の現場でも用いられている言葉で、効率よく起き上がる動作を行うための「動き」の一部を指しています。
側臥位(そくがい)から片肘を付き、状態をおこす動作を「オンエルボー」と言います。ちなみに側臥位は、横向きに寝た姿勢を指していて、右側であれば右側臥位、左側は左側臥位となります。
肘を付き、体を支ながら肩を外転し、進展位を行って上体を起こしていきます。
肘は固定されて支点の役割を持つため、主に動かすのは荷重してからの体幹や肩甲骨周りが主になってきます。
参考:jstage・側臥位からの起き上がり動作時の肩甲骨周囲筋特性
オンエルボーが必要な脳梗塞の後遺症
脳梗塞は脳出血よりも生存率が良いという特徴があります。しかし、再発率の高さに注意が必要です。
<脳梗塞の特徴>
- 死亡率は約10%
- 脳出血より数が多い
- 再発率が高い(3年以内で25%、10年で50%が再発)
脳梗塞を再発すれば後遺症も重症化しますし、最悪の場合死に至ることも。再発防止のために、正しい生活習慣を送る意識をしましょう。
脳梗塞後に生活が自立する可能性は何割?
就労世代の比較的若い患者は、脳梗塞を発症しても約7割が介助を必要としない状態まで回復すると言われています。
逆に75歳以上で発症すると、5割の人は介助が必要な状態になります。高齢者になれば他の病気の影響もあるため、重症化しやすくなるのです。
脳梗塞後の予後は、年齢や合併症による影響で変わってきます。
高齢になるにつれ介護が必要になる
高齢者が脳梗塞を発症すると、介護の必要性が高まります。加齢によって足腰が弱くなったところに運動麻痺の後遺症まで重なると、自分だけで生活するのが難しくなります。
<要介護の現状>
- 80~84歳23.9%
- 85~89歳22.8%
<要介護の原因>
- 脳卒中24.1%
- 認知症20.5%
脳血管性認知症と言って、脳梗塞が認知症を引き起こしたり、悪化させるケースもあります。以上のことから、高齢者の脳梗塞は、要介護の大きな原因となるのです。
脳梗塞からの回復の3つの過程|どこでどんな治療を受けるのか
脳梗塞を発症した後は、急性期、回復期、慢性期の3つの過程を経て回復に向かいます。急性期と回復期は入院しながらリハビリを受け、慢性期は退院後に自宅や通院のリハビリを受けるのが一般的。
それぞれの時期のリハビリについて、特徴と注意点を解説します。
急性期は早期離床が重要
脳梗塞を発症した後は、全身状態を管理しながら、早期離床を促します。寝ている時間を少なくすることで、寝たきりによる筋力低下の予防や早期の機能回復を狙います。
脳梗塞後にすぐ身体を動かす事が心配になると思いますが、リハビリの専門家が医師の指示の元進めるので安心してください。
回復期は回復のゴールデンタイム
脳梗塞発症後、1ヶ月過ぎると回復期に突入します。病院によっては棟を移したり、リハビリ専門の病院に転院するのもこの時期です。
脳梗塞は発症後3カ月まで急激な回復を見せ、プラトーとなる6か月まで回復を続けます。この期間に集中したリハビリが必要です。
回復期では、休日関係なく、毎日リハビリを提供できる環境になっているので、6か月までは頑張ってリハビリに励みましょう。
生活期では持続的なリハビリが必要
回復期に入院できるのは最大で発症後6か月まで。そのあとは、生活期と言って、在宅や通院によるリハビリに移行します。
生活期では、残された機能を生かして生活を送る練習をしたり、さらなる機能向上を目的にリハビリを行います。
生活期のリハビリは、回復期のリハビリと違って、リハビリの回数や時間に制限がかかるデメリットがあるので注意しましょう。
脳梗塞からの回復はあったけれど介護が必要…利用できる制度は?
脳梗塞を発症すると、何かしらの後遺症を抱えることになります。その後遺症が重ければ介護が必要な状態に。
日本には、介護者や本人の金銭的、精神的な負担を緩和させる制度があります。制度を上手に活用し、介護によって起こる様々な負担を軽減させましょう。
家族の介護は心身・金銭の負担がある
在宅介護には様々な負担がかかります。肉体的、精神的な負担はもちろんのこと、金銭面にも大きな負担が。
<介護における心身の負担>
- 排泄動作、入浴動作の介助
- 夜間の介護による睡眠不足(夜間のトイレ介助など)
- 介護に時間を取られ、自由な時間がなくなる
<介護における金銭面の負担>
- おむつ代、介護食などの生活費
- 介護用品の購入、レンタル費用
- 住宅改修費用(バリアフリー化、手すりの設置など)
在宅介護による介護者の負担は計り知れません。介護保険などの制度を利用することで介護者の負担が減らせることを覚えておきましょう。
介護保険を利用する
介護保険とは、介護サービスを受けた人の一部費用を負担してくれる制度のことです。介護認定を受けることで利用することができます。
<介護保険におけるサービス>
- 訪問看護、訪問介護
- 生活期のリハビリ(通所リハビリ、訪問リハビリ、デイサービス)
- ショートステイなど
- 福祉用具のレンタル、購入費用の軽減
- 住宅改修費用の軽減
介護保険を利用する場合は、近くの市町村窓口に相談してください。介護認定調査を経て、介護度が決まる仕組みです。
65歳以下でも脳梗塞は特定疾患に含まれ、介護保険を利用することができるので安心して下さい。
身体障害者手帳を申請する
介護保険が適応とならない場合は身体障害者手帳の申請を行いましょう。身体障害者手帳を申請することで各種福祉サービスを受けることができます。
<身体障害者手帳で利用できるサービス>
- ホームヘルパー等の介護サービス
- 医療費の助成、車椅子、装具などの助成
- 住宅改修費用の助成
- 各種税金(所得税、住民税、自動車税)の控除や免除
障害者手帳の交付を受けるためには、医師の診断書を持って市町村の窓口で申請してください。65歳以上の高齢者は介護保険が優先される仕組みになっているので覚えておきましょう。
まとめ|オンエルボーとは
脳梗塞を経験すると、体のまひや言葉がうまく出てこないなど、さまざまな症状が出る場合があります。これらの症状を改善し、元の生活に近づくためには、長いリハビリが必要になることが多いです。毎日コツコツとリハビリを続けるのは大変ですが、そこで大事なのが、回復までのビジョンをしっかり持つことです。目指すゴールや目標をはっきりイメージしておくと、日々のリハビリへのモチベーションが高まり、「がんばろう」という気持ちを保ちやすくなります。
では、脳梗塞からの回復までには、どのような道のりがあるのでしょうか。まず、医師の診察や治療を受けた後、専門のリハビリスタッフ(理学療法士)といっしょに、体の動かし方や言葉の練習を少しずつ進めていきます。周囲の家族や友人のサポートも欠かせません。さらに、医療スタッフやケアマネジャーなど、いろいろな人たちの役割を理解しておくと、「この人にはこんなサポートをしてもらおう」と安心して任せることができるでしょう。
また、リハビリや生活の負担を少しでも減らすために、脳梗塞後に活用できる制度も存在します。たとえば、医療費を軽くするための支援や、リハビリ施設への通所を支えるサービスなど、知っておくと便利な制度がたくさんあるのです。これらは国の制度として用意されているものも多く、自分一人でがんばるのではなく、適切に利用することで生活を続けやすくなります。周囲のサポートとあわせて、こうした制度を上手に活用しながら、あきらめずに日々のリハビリを続けていきましょう。