疲れにくい歩行を実現!右足が悪い時の杖の使い方・選び方と機能訓練方法
2024.11.18
歩行は日常生活で欠かせない動作です。怪我や病気の後、右足で体重が支えられなかったり、右足に麻痺があったりする場合、杖を使うと楽に歩行できるかもしれません。しかし、正しい杖の使い方を知らないと、転倒や疲労の原因となってしまいます。
この記事では、障害の程度や生活場面別に、右足が悪い時の杖の使い方をご紹介します。杖の必要性や選び方などの基礎知識を知っていると、ご自分に合った杖を使えるでしょう。
杖の使い方と同時に知っておきたい、機能回復方法も紹介します。歩行動作を楽にし、生活の質を向上させましょう。
目次
右足が悪い時の杖の使い方を習得するには自分に合う杖選びが重要
杖には種類があり、障害の程度によって使用するものが異なります。購入やレンタルの前には、杖の必要性や種類などの基礎知識を知っておきましょう。安全に使うための杖の選び方を知っていると、怪我を防止でき、スムーズな歩行につながります。
なぜ杖を使う必要があるのか
右足に麻痺や感覚障害がある方が杖を使うと、転倒予防となります。杖を使うと体重を支える面積が増え、バランスを崩しにくくなるのです。また、杖に体重をかけられるため、股関節や膝への負担を避けられるメリットもあります。
さらに、杖を使って歩くとスピード調整がしやすく、疲労しにくくなるといわれています。
歩行を補助する杖の種類
杖には種類がありますが、次の3つから選ぶのが一般的です。
- T字杖
…持ち手がT字になっている杖です。比較的軽量で、使っていても疲れにくい杖として知られています。歩行の補助として使われるのが一般的で、軽度のサポートが必要な方にオススメです。
- 多点杖
…杖の先端に複数の支点がある杖で、T字杖よりも安定感があります。支点の数が増えるほど安定性が増すのが特徴です。しかし、凸凹した面では不安定になってしまうため、不整地が多い屋外での使用には注意しましょう。
- ロフストランドクラッチ
…手と前腕で体を支えるためのカフがついている杖です。T字杖をしっかり握れない方や握力が弱い方でも使えます。杖に体重をかけられるため、足の筋力が弱い場合にもオススメです。
どの杖が自分に合うのか迷う場合は、店頭で試してみたり、地域のケアマネージャー・担当のリハビリスタッフに相談したりすると、安心して購入できます。
安全に使うための選び方
杖を選ぶ時は、高さが重要です。高すぎても低すぎても体重をうまくかけられず、杖を有効活用できません。杖を左手で持った状態で、杖の先を左足先の前方20cmに置き、肘が30〜40度に曲がる高さの杖を選びましょう。
参考:フランスベッド「歩行補助つえの種類と選び方、使用時の注意点まで解説」
障害の程度・生活場面別|右足が悪い時の杖の使い方を3つ紹介
右足が悪い時の杖の使い方は、左手に杖を持ち、左側で体重を支えられるようにするのが基本です。右足の障害の程度や生活場面によって、杖の使い方が異なります。平地での杖と足の動かし方と、階段の上り下りを解説します。杖を使うのが初めての方は、まずはゆっくり試してみましょう。
使い始めは「3動作歩行」
杖の使い始めや、障害が重くうまくバランスがとれない場合、3動作歩行から行うと安心です。次の3ステップで歩きます。
- 杖を前に出す
- 右足を前に出す
- 左足を前に出し、右足と揃える
最初は「いち、に、さん」と数えながら動作をすると、リズムよく歩けるようになります。
歩くスピードが上がる「2動作歩行」
杖の使い方に慣れてきたり、後遺症が回復してきたりした場合は、2動作歩行を行いましょう。歩くスピードが速くなるため、移動範囲が広がります。
- 杖と右足を同時に前に出す
- 左足を前に出し、右足と揃える
3点歩行と比べると、不安定になりやすい杖の使い方です。急に屋外で試さず、家の中や訓練室などの屋内で練習してみましょう。
杖を使った階段の上り下りの方法
屋外に出かけるさい、階段や段差を上り下りできると、行動範囲がさらに広がります。
【階段の上り方】
- 杖を1段上につく
- 左足を杖と同じ段にのせる
- 右足を杖・左足と同じ段にのせる
【階段の下り方】
- 杖を1段下につく
- 右足を杖と同じ段へ移動させる
- 左足を杖・右足と同じ段へ移動させる
階段は上る時と下りる時で、足の出し方が変わってきます。上る時は、体重をしっかりかけらければならないため、体重を支えられる左足を先に上の段へ上げるのです。
右足が悪い時の杖の使い方と併せて知っておきたい機能回復方法
杖をある程度使えるようになると、長距離の歩行や自立した歩行を目指したい方もいらっしゃるでしょう。右足が悪い時の杖の使い方と同時に、日常でできるトレーニングを知っていると、身体能力が向上します。ここで紹介するのは、足の筋力やバランス能力を強化する方法です。
座ってできる足の筋力トレーニング
ふくらはぎの筋肉は、地面を蹴る動作を行い、歩く時には前へ進む力を生み出します。座ってできるふくらはぎの筋力トレーニングをご紹介します。
足の裏がしっかりとつく椅子に座りましょう。つま先立ちになるように、足首を曲げて踵を床から上げます。ゆっくりと踵を下げて、また上げる運動を10回程行うのが効果的です。
慣れてきた方は、踵を上げたところで5秒キープしたり、踵を下げる動作をよりゆっくりと行ってみましょう。
足を振り出す時の運動
歩行の際には、足を大きく振り出す必要があります。そのためには、股関節と膝関節の協調した動きが大切です。
足を振り出す時の運動は、片足ずつ行います。右足の振り出しを改善したい場合、左側に支えとなるものを用意しましょう。倒れにくい椅子や壁に手を添えて開始します。骨盤を立てた状態で、足を引き、膝蹴りをするような動作を10回程度繰り返します。
転倒予防になるバランス強化運動
バランス能力が上がると、転倒予防につながるため、杖がなくても歩けるようになる可能性が高まります。手軽に取り組めるバランストレーニングは、腰回しです。
立った状態で、腰に手をあてます。この状態で、足が動かないように腰だけを回します。最初は、重心の動きが少なくても大丈夫です。徐々に大きく回して、重心移動に対してバランスをとれるようにしていきましょう。
参考:歩行の加速時における腓腹筋の内側頭と外側頭の筋活動の違い
まとめ|右足が悪い時の杖の使い方
足に麻痺や感覚障害がある方にとって、生活をより楽に、そして安全にするための大切な方法の1つが「杖の使用」です。
杖を使うことで、歩くときの安全性が高まるだけでなく、外出できる範囲が広がります。これにより、リハビリへのやる気を保ちやすくなり、生活全体の質も向上します。例えば、スーパーや公園に行けるようになると、気持ちが前向きになり、リハビリに対する姿勢も積極的になる方が多いのです。
ただし、右足や左足のどちらかに特に大きな不自由がある場合、杖をうまく使いこなせないと感じることもあるかもしれません。このような場合でも、杖の正しい使い方を理解し、実際に練習することが重要です。特に、杖を使った歩き方が安定すると、転倒のリスクが減り、安心して日常生活を送ることができるようになります。
今回は、右足が悪い場合の杖の使い方を説明しましたが、どのような状況の方でも共通して大切なのは、筋力トレーニングやバランスを良くするリハビリを地道に続けることです。杖を使うだけではなく、体を鍛えることで、より安定して歩けるようになります。
最後に、杖の選び方や使い方に不安がある場合は、専門医やリハビリ施設のサポートを積極的に活用してください。自分一人で頑張るのではなく、頼れる人やサービスを活用することで、リハビリの成果をより確かなものにすることができます。