
高齢者は歩行のふらつきがあると外出できない?改善のためのリハビリとは
2025.06.18

高齢者になると歩行の不安定さが出てくる方が多いです。怪我や病気の後だけではなく、加齢によってもふらつきが現れます。しかし、転倒が怖いからと外出を控えるのは、心身ともに悪循環に陥るかもしれません。
この記事では、高齢者の歩行のふらつきがある場合に、リハビリが有効であるか、改善する方法をご紹介します。対策をする前に原因をおさえておくのが大切です。
外出の機会を保ちながら、日々の生活を送るポイントも知っていると、制限の少ない豊かな人生を送れるでしょう。
目次
高齢者はなぜ歩行でふらつきが出る?リハビリは有効なのかを解説

つまずきやすかったり、左右に揺れたりするのを「ふらつき」といいます。なぜ、高齢者は歩行時にふらつきが出やすくなるのでしょうか。リハビリで改善できるのかどうかを知っていると、何をすれば良いかが見えてきます。
高齢者のふらつきの原因
年齢を重ねると、太もも・ふくらはぎ・体幹などの筋力が低下します。高齢者は1日安静にすると筋力が約1〜3%低下するのです。体調を崩したり怪我をしたタイミングで、安静状態が続くと、筋力が低下して急に歩行が不安定になる場合があります。
足裏の皮膚感覚が低下して体の傾きに合わせてバランスが取れなくなる方もいらっしゃいます。関節が硬くなって柔軟な動きができなくなったり、変形により重心の位置が変わったりするのも原因の1つです。
転倒への不安が行動を制限する
高齢者に歩行のふらつきが見られると、転倒への不安から行動が制限される恐れがあります。転倒は骨折や入院をイメージしやすく、外出を控える方が多くなるのです。しかし、安静にしていると体の機能はさらに低下します。
外出が減ると、脳への刺激も減り、認知機能の低下にもつながるのです。悪循環を断ち切るために、歩行時にふらつきがあっても、改善して外出をする機会を保つのが大切です。
ふらつきはリハビリで改善できる
高齢者でも歩行時のふらつきをリハビリで改善できます。高齢になると運動の成果があまりないのではないかと思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、高齢者でも適切なトレーニングを続けると、筋力が向上し、歩行能力が上がった報告があります。
リハビリやトレーニングを開始するのは、いつからでも遅くありません。ふらつきを改善し、制限のない毎日を送りたい方は、すぐに始めましょう。
参考:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18760151/
高齢者の歩行のふらつきが出たらどうする?リハビリの開始方法

高齢者が歩行のふらつきを感じたら、リハビリを行うのが有効ですが、どこに相談すれば開始できるのでしょうか。特定の病気や怪我が原因ではない場合、相談先に迷う方が多いです。受診科やリハビリを受けるための手順を知って、すぐに行動できるようにしましょう。
ふらつきを感じたら医療機関へ相談
歩行時に次のような症状がある場合は医療機関に相談しましょう。
- 歩行時に何もないところでつまずきやすい
- 足を出すたびにバランスが崩れる感じがする
- 最初の一歩が怖い
- 足が思うように動かない
- 方向転換でバランスを崩しそうになる
筋力低下・関節・バランス能力の低下がある場合は、整形外科を受診します。めまいや立ちくらみがある場合は、内科や神経内科・耳鼻科に相談するのも良いでしょう。
リハビリを受けられる場所
高齢者が歩行時のふらつきを改善したい場合のリハビリは、大きく分けて通所リハと訪問リハがあります。受診した病院でリハビリを受ける場合、医療保険を利用して通院をするのが一般的です。
ふらつきがひどい場合や他の介護サービスを受けたい場合は、要介護認定を受け、介護保険を利用してリハビリを行います。通所または訪問リハビリを選べます。
また、最近では自費リハビリサービスも増えているので利用するのも1つの方法です。保険適用外ですが、リハビリ専門職によるトレーニングを受けられ、回数・時間を自由に決められます。
リハビリを受けるための手順
医療保険を利用してリハビリを受ける場合、受診後、医師の処方を受けてリハビリを開始します。介護保険を利用したい場合は、地域のケアマネージャーに相談しましょう。
自費リハビリサービスの場合は、地域の自費リハビリ事業所を探し、直接電話をかけて申し込みます。自費リハビリでは医師の処方が不要なので、受診する前の相談も可能です。
高齢者向け|歩行のふらつきがあっても外出してリハビリができる

週に2回以上の歩行や筋力トレーニングなどの運動を行うと、高齢者でも身体機能が上がり歩行のふらつきを改善できる可能性が高いです。医療機関や介護施設でのリハビリの回数が少ない場合は、ご自身でも運動の機会を作りましょう。外出の機会を保ちながら、安全にトレーニングする方法をご紹介します。
家でできるトレーニング
転倒を予防するために基礎的な筋力をつけるのも大切です。椅子に座った状態で太ももを片方ずつ上げる練習も、下肢と体幹の筋力トレーニングとなります。
また、足裏の感覚とバランス能力を鍛えるトレーニングも行いましょう。壁や椅子など安定したものにつかまり、足裏を床にしっかりとつけます。裸足で行うと感覚の入力がより強く入ります。足裏は床につけたまま、体重を左右・前後に揺らしましょう。足裏から入った感覚に合わせて、バランスをとる練習になります。
外出がリハビリになる理由
リハビリやトレーニングというと、黙々と一人で行うイメージがある方もいらっしゃるかもしれません。しかし、必要なものを買いに行ったり、ちょっとした散歩に出かけたりする外出がリハビリになるのです。
外の地面は平坦ではなく、凹凸や勾配がついているでしょう。ご自身がよく行動する範囲で、歩行練習をすると体の機能を維持できます。また、日光を浴びたり、外の景色をみるのは脳の刺激となるのです。
外出で歩行が安定するポイント
外出時の転倒を予防するために、歩行が安定するコツや使えるアイテムをご紹介します。まず、安心できる外出ルートを決めましょう。段差が多い場所や急な坂があるルートは避けると安心です。
段差や障害物に気づきやすいよう、天気が良く明るい時間帯に外出するようにしましょう。ふらつきの程度によっては、杖や歩行器などがあるとより安全です。
まとめ|高齢者は歩行のふらつきがあると外出できない?

まず前提として、高齢者の方が歩行中にふらつきを感じた場合は、早めに専門医の診察を受けることが大切です。ふらつきの原因は、筋力の低下だけでなく、脳・神経・内耳の異常や内科的な病気など、多岐にわたる可能性があります。特に、病気や後遺症によるリハビリの最中であれば、自分の体の状態を正しく理解し、適切な対応をとることが必要不可欠です。
そのうえで、ふらつきを軽減・改善していくためには、段階的なリハビリや日常生活でのトレーニングが重要になってきます。たとえば、下半身の筋力を強化する運動や、バランス感覚を養う訓練などが効果的です。これらは、専門職による評価のもとで、個々の体力や症状に合わせて計画的に行う必要があります。
しかし、実際には「歩くのが不安」「転びたくない」「外出が面倒」と感じる方も多く、リハビリをしたくても一歩が踏み出せない現実があります。無理に行動するのではなく、室内でもできる運動から始めたり、訪問リハビリを利用するなど、現在の状況に合った選択肢を見つけていくことが大切です。
ふらつきは放っておくと転倒や骨折につながり、生活の質を大きく低下させる要因となります。だからこそ、早い段階で療法士の力を借りながら、できることから少しずつ取り組むことが、将来の安心につながります。
いつまでも自分の足で、安全に外出できる生活を続けるために、歩行のふらつきに気づいたら、行動することが第一歩です。