【高齢者筋力低下】筋力量の低下から考えられる3つのリスク…予防・対処法を解説
2025.01.27
最近、若い頃に比べて体力、特に筋力が落ちたと実感することはありませんか?年齢を重ねると、以前は普通にできていた日常の動作が難しくなり、筋力の低下を実感しやすくなります。
筋力の低下を加齢による通常の変化だと軽視していると、症状はどんどん進行し、深刻な場合では寝たきりになることも⋯。
今回は高齢者筋力低下によって生じる3つのリスクと予防・対処法について解説していきます。
目次
高齢者と筋力の関係性|「つまずきやすくなった」は危険の合図
高齢者筋力低下は、加齢により誰もが起こる生理現象です。まずは加齢による筋力低下の原因と、早急に対処すべき症状についてみていきましょう。
筋力や身体機能の低下に関する主な原因
高齢者筋力低下の主な原因として、以下の3つが挙げられます。
- 加齢によるもの
筋肉量の低下は25〜30歳くらいから始まり、その後も徐々に低下していきます。また筋線維の減少や萎縮といった変化もみられ、筋力やバランス力なども低下します。
- 運動不足によるもの
筋肉は活動により強化されるものです。加齢による活動量の減少や長期間の安静は、廃用性筋萎縮の原因となり、筋力を低下させます。
- 栄養不足によるもの
高齢者は、咀嚼・嚥下機能の低下や食欲の減退により低栄養になりやすい傾向があります。低栄養状態では必要なエネルギーやタンパク質が不足し、筋力の維持が困難になります。
こんな症状があったらすぐに対処しよう
筋力低下により現れる症状をご紹介します。
- 歩行時につまずきやすくなった
- 立ち上がり時、何かにつかまったり支えが必要
- これまでに比べ疲れやすくなった
- 青信号で横断歩道を渡れないなど歩行速度の低下
- 階段の上り下りが辛く、手すりが必要
- ふらつきやすくなった
症状が現れたら早めの対処が必要です。特に、症状が急速に現れたり進行する場合、早急に医療機関に相談しましょう。
【高齢者筋力低下】3つのリスクは要介護となる可能性も…?
筋力の低下は、対処が遅れるとどんどん進行し、最終的には要介護となる可能性もあります。高齢者筋力低下による3つのリスクをみていきましょう。
①高齢者筋力低下はサルコペニアを発症するケースも
加齢に伴う筋力低下は自然な生理現象です。一方、サルコペニアは、日常生活機能が著しく低下するほどの筋力低下がみられる状態を指します。
筋力低下は、徐々に進行していきます。歩行時に何度もつまずく、手をつかなければ立ち上がりができない、などの症状を放置すると症状はさらに進行し、サルコペニアを発症することも。深刻な場合は寝たきりになるケースもあるため、見過ごしてはいけません。
②転倒による怪我や骨折のリスク増加
加齢による筋力やバランス能力の低下によって、転倒のリスクが高まります。転倒による骨折や頭部外傷等をきっかけに、要介護となるケースもあるため注意が必要です。
高齢になると怪我の回復に時間がかかります。長期間の安静は筋力の低下を招くため、そのまま寝たきりへ移行するケースも少なくありません。特に骨折は注意が必要です。高齢者は骨密度の低下により骨折を起こしやすいため、転倒予防は重要な課題の一つです。
③高齢者筋力低下はフレイルサイクルへの突入のきっかけ
フレイルとは、加齢に伴い身体的、精神的、社会的機能が低下し、心身の健康を害しやすくなった状態を指します。フレイルの要因には低栄養やサルコペニアなどが含まれ、これらの要因が互いに影響し合うことで起こる負の連鎖をフレイルサイクルと言います。
例えば、筋力の低下により活動量が減る→食欲が減る→食事量が減り栄養不足になる→更に筋力が低下する、といった流れは高齢者に起こりやすいフレイルサイクルです。
フレイルサイクルが進行すると、要介護リスクは非常に高まります。筋力の低下によってフレイルサイクルに入るのを防ぐため、早期から適切な対処をとることが重要です。
参考:厚生労働省「高齢者」
政府広報オンライン「たった一度の転倒で寝たきりになることも。転倒事故の起こりやすい箇所は?」
高齢者筋力低下|予防と対処法について…運動療法だけが全てではない理由
筋力低下への対処として、運動やリハビリを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、高齢者筋力低下は様々な要因が影響し合っているため、いくつかの治療を組み合わせる必要があります。詳しくみていきましょう。
高齢者筋力低下は運動療法だけでは解決できない
高齢者筋力低下は、加齢や活動不足、栄養不足など複数の原因が影響し合う場合が多く、個々の状況に応じて多方面からアプローチする必要があります。
有効な予防・治療は、運動療法と栄養療法です。運動療法では、筋力アップや日常動作の維持・改善が期待できます。また栄養療法により、必要な栄養を十分摂取することで、筋力の低下を防ぐことが期待できます。
症状が進行してからではなく、自分の体の変化に気づいた段階で予防的に取り組むことが大切です。
【高齢者筋力低下】に対する予防法
筋力低下を予防する方法をみていきましょう。
- 運動習慣をつける
適切な運動習慣により、全身の筋力をつけましょう。特にウォーキングや水泳などの有酸素運動や筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動が有効です。できれば週に2〜3回行うことが望ましいですが、無理なく継続できることが最も重要です。
- タンパク質を摂る
筋肉の主要な構成要素であるタンパク質を摂取しましょう。高齢になると、タンパク質の吸収効率は低下する傾向があるため、十分なタンパク質の摂取を心がける必要があります。
- 積極的に外出し人と交流する
外出することにより活動量が増える他、人との交流による精神面での安定も得られます。適度な活動や人との交流は食欲増進につながり、栄養状態の維持や改善が期待できます。
家族や周囲の人も予防の声かけを
高齢者筋力低下に対する治療や予防には、運動や食事など様々なアプローチが必要です。しかしそれら全てを一人で行うには限界があります。周囲の人が一緒に運動を楽しんだり、調理の工夫をこらしてあげることも、治療や予防の継続のためにはとても重要です。
また、普段から本人の様子をよく見守り、歩行や立ち上がりの様子などに変化を感じたら、早急に専門医に相談しましょう。専門医に現状を把握してもらい、症状に応じた治療法を選択する必要があります。
まとめ|【高齢者筋力低下】について
高齢者筋力低下とは、年齢を重ねるとともに筋肉が弱くなっていく状態のことです。たしかに、加齢によって体力が落ちるのは自然なことですが、「年だからしかたない」と放っておくと、筋肉の量や力が大きく落ちてしまい、体の動きが悪くなることがあります。たとえば、筋肉が減ってしまう状態であるサルコペニアや、体力や活動性が低下してしまうフレイルへと進み、さらに深刻になると、身の回りのことに手助けが必要な要介護状態になるリスクも出てきます。
また、筋力が弱くなると、立ち上がりや歩行が不安定になり、転倒リスクが高まります。高齢者の場合、転んで骨折をしてしまうと、長い間寝たきりになったり、さらに体力が落ちたりして、要介護状態につながることも少なくありません。ですから、転ばないように筋力を落とさないことは、とても大切です。
まずは、普段の生活で困っていることや、最近感じた体の変化をしっかりメモして、専門医に相談してみましょう。医師やリハビリの専門家に伝えることで、必要な検査や治療、日常でできる運動のアドバイスを受けることができます。
このように、高齢者筋力低下がもたらす3つのリスク(サルコペニア、フレイル、そして要介護状態)をまずは理解し、そこに転倒リスクや骨折の危険性も加わることを意識しましょう。そして、これらのリスクをしっかり把握したうえで、自分の体の状態や生活スタイルに合わせた予防・対処法を実践することが大切です。たとえば、自宅でできる筋力トレーニングや散歩などの軽い運動、バランスをとる練習、転倒を防ぐ住環境の整備など、できることから始めてみてください。こうした取り組みを続けることで、将来の健康を守り、より安心して毎日を過ごせるようになります。