
深部感覚のリハビリで日常生活動作を改善!自宅でできる実践例を紹介
2025.07.09

深部感覚(しんぶかんかく)は、筋肉や関節などの身体の深部で感知されるような感覚のことを指します。これは、日常生活動作を行うのにも重要な役割を担っており、障害が起きると自立した生活が送れなくなるかもしれません。
そのため、運動機能の改善・ニ次障害を軽減をするために、深部感覚に対する適切なリハビリを行い、改善を目指す必要があります。
深部感覚の障害を改善する方法を理解し、自立した生活を目指しましょう。この記事では、深部感覚に関する具体的な知識の解説と、自宅でできるリハビリ方法を紹介します。
目次
深部感覚の3つの要素|リハビリが必要な理由と身体状態の確認方法

深部感覚は、身体の位置や動きを感知する感覚のことを指します。深部感覚が障害されると、日常生活に影響を及ぼす可能性があるため、それぞれの感覚に対するリハビリが必要です。ここでは、深部感覚に関する知識を網羅的に解説します。
深部感覚の3つの要素
深部感覚は、筋肉や関節などの身体の深部で感知されるような感覚のことを指し、主に以下の3つの要素にわけられます。
- 位置覚:関節の位置や姿勢を感知する感覚
- 運動覚:動く方向を感知する感覚
- 振動覚:振動を感知する感覚
ほかにも、重さを感知する重量覚や力を加えたときの抵抗を感知する抵抗覚なども、深部感覚として挙げられます。これらの刺激を身体が受けると、刺激を受け入れる感覚受容器が感知し、脊髄や小脳などを伝って大脳に情報が伝達されるのです。
深部感覚の低下・障害が起こる原因
深部感覚の低下や障害は、脳卒中や脊髄損傷、末梢神経障害などにより起こる可能性があります。具体的には、加齢や病気によって脳や脊髄、末梢神経などの感覚を伝達する経路のどこかに障害が起こることが原因です。
深部感覚の低下や障害が起こると、手足がどのように動いているのかわからない、触っているものがわからないなど、感覚が鈍くなる症状が現れます。逆に、少し触れただけで強い痛みを感じる、冷たいものが熱く感じるなど感覚が敏感になる症状が現れることもあります。
身体状態の確認方法
自分の感覚障害の程度がわからない場合は、以下の方法を試してみましょう。
<運動・位置覚の確認方法>
- 床や壁に目印をつける
- 目印に足先または指先をあわせる
- できれば目をつぶった状態で曲げ伸ばしを数回繰り返す
- そのまま足元や手元を見ずに最初の位置に戻す
目印から1cm以内のズレ→正常
目印から3cm以上ズレている→中等度
目印から5cm以上ズレている→重度
<振動覚の確認方法>
- スマホなどのバイブレーター機能のあるものをONにする
- 胸→肩→肘→手首の骨の順に当てていく(足の場合は胸→腰→膝→足首)
- 振動しているかどうかがわかるかを確認する
手首でも振動がわかる→正常
胸や肩の骨で振動がわかる→中等度
どこに当ててもわからない→重度
これらを行う際は、正確に確認するためにも、ほかの方に行ってもらうのがおすすめです。
深部感覚のリハビリは自宅でできる?効果的な方法と注意点

深部感覚のリハビリでは、位置覚や運動覚などの障害を改善を目指し、それぞれの感覚に対して行います。効果的に行うためには専門家への相談がおすすめですが、自宅で自主トレーニングを行うのも効果的です。ここでは、自宅でできるリハビリ方法と注意点を紹介します。
【自宅でできる】荷重トレーニング
深部感覚のリハビリとして荷重トレーニングを行うと、関節や筋肉の動きを正確に把握できるようになったり、バランス能力が改善したりなどの効果を得られます。
<上肢のトレーニング>
- 1.100〜500gの重りを机に置き、障害のある方の手で持ち上げる
- 2.10cmほど持ち上げて机の上に戻す
2〜3回繰り返す
<下肢のトレーニング>
- 壁や手すりにつかまりながら、障害のある方の足にゆっくりお体重をかけていく
- 体重をかけた足をゆっくりと床から離す
2〜3回繰り返す
行う際は転倒に注意し、痛みや違和感があれば中止しましょう。また、正しい形で行うために、家族に確認してもらいながら取り組むのがおすすめです。
【自宅でできる】タオルや手を触る
比較的安全に自宅でリハビリを行う方法として、タオルや自分の手で触る方法があります。
障害がある方の手または足を、タオルでゆっくり優しくこすりましょう。また、お風呂で身体を洗う際に、ボディーソープをつけて障害がある部位をしっかりと触るのも効果的です。
自分で触ることでより効果が得られるため、意識して障害のある部位を触るようにしましょう。
【転倒に注意!】バランス訓練
バランス訓練は、身体の姿勢や動きをコントロールし、転倒予防や運動能力を向上させるために必要なリハビリです。ただし、転倒によるケガのリスクがあるため、身体状態にあわせて適切な方法で行いましょう。
バランス訓練の方法としては、片足立ちでバランスをとる、バランスマットやトランポリンの上で立つなどが挙げられます。
適切な姿勢、方法で十分な効果を得るためにも、まずは専門療法士に相談してから取り組むのがおすすめです。
イメージトレーニングも効果的
深部感覚のリハビリとして、イメージトレーニングも効果的です。実際に身体を動かすトレーニングとあわせてイメージトレーニングを取り入れることで、より効率的に運動機能の改善を目指せます。
イメージトレーニングを行う際のポイントはこちらです。
- リラックスできる環境を整える
- 手足の動きを具体的にイメージする
- 反復して行う
イメージトレーニングを行う際は、具体的に成功した動きをイメージしましょう。
深部感覚のリハビリの目的…感覚の改善以外に得られる2つの効果

深部感覚のリハビリは、感覚の改善を目指せるのはもちろん、運動機能やバランス能力の改善・向上にも効果的です。ここでは、感覚の改善以外に得られる2つの効果を具体的に解説します。どのような効果が得られるのかを理解し、自立した生活を目指しましょう。
運動機能を改善
深部感覚は運動のコントロールに重要な役割を担っており、深部感覚の低下や障害が起きると、運動機能も低下してしまいます。そのため、深部感覚に対する適切なリハビリを行い、運動機能を改善・向上させることが大切です。
また、深部感覚のリハビリは筋力や持久力の向上、バランス能力や歩行能力の改善にもつながります。
二次障害のリスクを軽減
深部感覚のリハビリは、転倒や関節の痛みなどのニ次障害のリスク軽減にも役立ちます。
深部感覚は、歩行や着替え、食事などの日常生活動作をスムーズに行うために欠かせない感覚です。そのため、深部感覚が低下するとこれらの動作ができず、自立した生活が送れなくなってしまいます。自立した生活を送るためにも、適切なリハビリを行い、深部感覚の改善を目指しましょう。
まとめ|深部感覚のリハビリ効果を高めるためには専門家に相談を!

深部感覚(しんぶかんかく)は、自分の身体が今どこにあるかを感じ取る大切な働きです。たとえば、目をつぶっても手が机の上にあることがわかったり、歩くときに足の位置をコントロールできたりします。しかし、年をとったり病気になったりすると、この深部感覚が弱くなり、転びやすくなったり服の着替えや歩く動作が難しくなったりすることがあります。
この問題を解決するには、療法士のリハビリ(訓練)が必要です。リハビリでは、理学療法士と一緒に行う運動だけでなく、自宅でできる自主トレーニングもとても効果的です。たとえば、バランスボールに座ってゆっくり体を前後に動かす練習や、片足立ちで目を閉じてみる練習などがあります。
自宅で練習するときは、転んでけがをしないように、まわりに危ない物がないか確認しましょう。また、痛みや違和感を感じたら、すぐに中止して療法士に相談してください。
リハビリの効果をしっかり得るためにも、まずは理学療法士などの専門家に相談し、自分に合った方法を教えてもらうことが大切です。続けていけば深部感覚が改善し、より安心して自立した生活が送れるようになります。