
脳梗塞リハビリに使われるTMSを解説!注意点や効果を高める方法を深堀
2025.05.26

脳梗塞の治療方法でTMS(径頭蓋磁気刺激)という方法があります。TMSとは、電磁コイルを用いて、頭皮から脳に向かって磁気刺激をすることで、脳の活動を正常化する治療方法です。
脳梗塞を発症すると、片側の運動障害や感覚障害などさまざまな後遺症を抱えることになります。TMSは脳梗塞後の片麻痺に対して高いエビデンスも報告されており、最先端の治療方法と言えます。TMSの具体的な効果や注意点、脳梗塞後遺症を改善させるポイントについて解説します。
目次
【脳梗塞リハビリ】TMSの具体的な方法と禁忌などの注意点を解説

TMSは脳梗塞のリハビリに効果があると言われており、高いエビデンスも示されてる治療です。しかし、「径頭蓋磁気刺激と言われてもよくわからない」、「危険性はないのか?」と不安に思う人も少なくないと思います。
TMSの具体的な方法と禁忌事項や注意点について解説します。
TMS(径頭蓋磁気刺激)とは?
TMSは、電磁コイルを用いて、頭皮から磁気刺激を当てることで脳を刺激する治療方法です。脳梗塞によって脳がダメージを受けると、脳から送られる電気信号にエラーが生じ、スムーズな運動を行うことができません。
TMSでは、高頻度の刺激と低頻度の刺激を用いて脳の興奮バランスを整えます。
<TMSが脳に与える効果>
- 低頻度の磁気刺激によって、興奮している健側大脳の働きを抑える
- 高頻度の磁気刺激によって、麻痺側大脳の働きを高める
脳梗塞によるダメージで、右脳と左脳の働きが不均衡になります。TMSで脳の興奮バランスを調整することで、脳梗塞後遺症の改善が期待できるのです。
NEUROについて
TMSとリハビリを組み合わせた治療に「NEURO」と呼ばれる方法があります。NEUROは東京慈恵会医科大学付属リハビリテーション科の「安保雅博医師グループ」が世界に提案した脳卒中後上肢麻痺に対するアプローチ方法の事です。
NEUROは、TMSのみを行うのではなく、並行して集中的なリハビリテーションを行うことで、上肢運動機能の回復をより確固たるものにしたアプローチ法と言われています。
NEUROが提供できる病院には限りがあり、慈恵医大及び関連病院における既定研修プログラムを終了していることが前提条件です。他にも100例以上の施行症例を有する医療機関、安保雅博先生が直接指導を行っている医療機関のみが使用できる治療アプローチと言われています。
TMSの注意点や禁忌事項は?
TMSは非侵襲的で比較的安全性が高い治療方法ですが、副作用や禁忌事項もあるので解説します。副作用などの頻度は少ないものの、発生する可能性は0ではないので注意しましょう。
<TMSの副作用>
- 頭皮痛や顔面の不快感刺激
- けいれん発作
<TMSの禁忌事項>
- 全身状態が落ち着いていない
- てんかん発作、心疾患、痙攣などの発生確率が高い
- 半年の間にけいれん発作の既往がある
- 心臓ペースメーカー、シャント留置、人工内耳、脳動脈瘤クリップ、妊娠中、月経中の女性
TMS治療を受ける前に、医師の診察があるので心配な事は確認してください。事前の問診票で、自分の既往歴を細かく記すことで事故の確率を減らすことができます。
【脳梗塞リハビリ】TMSの適応となる症状と期待できる治療効果

TMSによって脳梗塞後に起こるさまざまな後遺症の改善が期待できます。感覚や運動、歩行能力や認知機能まで幅広い効果が見込める治療です。TMSの具体的な効果を解説します。
感覚障害の改善
脳梗塞によって、痺れや痛み、関節の位置感覚(深部感覚)の低下などが起こります。脳梗塞後の痛みや痺れで悩む人も多く、生活の質を悪化させます。痛みや痺れは、「脳の異常な興奮」が原因になってることもあり、TMSで脳の信号を抑制することで改善が期待できると言われています。
他にも、関節の位置感覚などが低下しますが、TMSで動きの感覚を認識することで、関節を動かす感覚を再学習することができます。
運動麻痺の改善
TMSでは脳梗塞によって生じた運動麻痺の改善が期待できます。磁気刺激によってダメージを受けた脳神経を興奮させることで、リハビリの効果を高めることができると言われています。TMSによる具体的な効果は以下の通りです。
<運動麻痺の改善によって得られる効果>
- 歩行能力の改善(歩行速度の向上)
- バランス能力の改善による転倒予防
- 麻痺側上肢の運動改善(手指、手関節の随意性改善)
TMS治療によって、後遺症が改善されるので、生活の質が向上します。TMSによる刺激は、通常のリハビリだけでは得られない効果が期待できるのです。
高次脳機能障害の改善
TMSは高次脳機能障害にも効果があるという報告があります。高次脳機能障害は社会復帰を困難にさせる悩ましい後遺症です。TMSによって全般的認知機能の改善が見込めるという研究もあり、高次脳機能障害に一定の効果を示します。
<高次脳機能障害の改善>
- 半側空間無視の改善
- 失語症の改善
- 注視障害の改善
- 遂行機能障害の改善
TMSによって高次脳機能障害の損傷領域に刺激が加わることで、症状改善が期待できます。運動麻痺と同様に、リハビリテーションとの組み合わせが重要です。
脳梗塞のリハビリ効果を最大限に!TMSとの組み合わせが重要

TMS単独の治療より、リハビリテーションと組み合わせることで最大限の効果が得られます。TMSで脳に刺激を与え、リハビリで正しい運動を導くことで後遺症を改善させることができる可能性が期待できます。最後にTMSの効果を引き出す方法について解説します。
再生医療と組み合わせる
TMSと再生医療を組み合わせることで、脳梗塞の後遺症改善や、リハビリ効果を高めることができると言われています。再生医療とは自分の幹細胞を摘出し培養、再投与することで、神経や血管の修復を図る治療です。
各治療を組み合わせることで、それぞれのメリットを最大限に発揮させ、後遺症を改善させます。
<TMSと再生医療の組み合わせによる効果>
- TMSで脳神経を刺激、興奮のバランスを整える
- 再生医療によって脳の神経回路を再構築する材料を届ける
- リハビリテーションで脳の可塑性向上と運動の再学習を行う
脳梗塞後遺症は複雑な症状なので、各治療を組み合わせることで、改善が期待できると言われています。
リハビリと組み合わせる
TMS治療で一番重要なのが、「適切なリハビリと組み合わせること」です。例えば、磁気刺激で手を動かす神経を刺激しても、自分で手を動かす感覚を学習できなければ、実用的な動作には繋がりません。
TMSの刺激とリハビリによる動作の学習を組み合わせることで、上肢や下肢の運動麻痺を改善することに繋がるのです。TMS治療を行うときは、必ずリハビリテーションも組み合わせるようにしましょう。
自宅でのリハビリも重要
脳梗塞後遺症を改善するには、自宅で運動やリハビリを継続することが重要です。病院や施設でのリハビリは毎日受けることができません。通院しない日に、自主トレーニングを行ったり、体力や筋力を落とさない努力を重ねることで、後遺症改善が期待できます。
TMSによって劇的な変化が見込めるわけではないので、地道な自主トレーニングを重ねることを意識しましょう。
まとめ|脳梗塞のリハビリに対するTMSの役割

TMS(経頭蓋磁気刺激)という治療法は、頭に磁気を当てて脳の働きを調整する方法です。磁気といっても痛みはなく、頭の外からやさしく刺激を与えるだけです。
たとえば、脳梗塞という病気で脳がダメージを受けたとき、体の動きが悪くなることがあります。TMSは、ダメージを受けた脳の神経を元気にしたり、逆に元気すぎて動きをじゃましている反対側の脳の働きをおさえることで、体の動きや症状を少しずつよくする効果が期待されています。
この治療は比較的安全といわれていますが、人によっては軽い副作用が出ることもあります。たとえば、頭が少し重く感じたり、まれにけいれんを起こすこともあるため、TMSが合わない人もいます。治療を受ける前に、必ず担当の先生と相談して、自分に合っているかを確認することが大切です。
また、TMSだけをやっても十分な効果が出ないこともあります。そのため、リハビリと一緒に行うことがとても大事です。たとえば、手足を動かす練習や歩く訓練などを組み合わせることで、脳の回復を助け、体の機能もより改善しやすくなります。
もし、脳梗塞の後に体が思うように動かなくて困っていたり、今の治療に不安がある場合は、TMSという新しい治療法も選択肢のひとつとして考えてみましょう。生活の中での悩みや体の状態をしっかり先生に伝えることが、よりよい回復につながります。