CI療法とは|脳卒中の上肢リハビリテーションとしての有効性や注意点
2024.06.17
CI療法は脳卒中などで片麻痺になった患者さんに対する上肢リハビリテーションの1つです。麻痺していない側(非麻痺側)の腕や手を使わずに麻痺側を強制的に使うことで運動機能の改善を目指すリハビリです。
上肢のリハビリテーションとして活用されるCI療法ですが、具体的な方法や効果、デメリットなどはよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
今回はCI療法の基本的なやり方や効果・注意点と、CI療法以外の上肢リハビリも詳しくご紹介します。
目次
CI療法は脳卒中後の上肢リハビリの1つ!基本的なやり方や効果
CI療法は脳卒中などの後遺症で片麻痺がある場合に活用される上肢リハビリです。まずはCI療法のやり方や効果についてみていきましょう。
CI療法とは
CI療法とは主に脳卒中後の片麻痺に対する上肢の機能向上を目的としたリハビリです。非麻痺側の上肢をアームスリングやミトンで拘束することによって、強制的に麻痺側の腕や手を使うように促し、機能改善を目指す手法です。
CI療法は多くのエビデンスも確立しており、脳卒中ガイドラインにも行うべき治療(グレードA)と記載されています。
片麻痺は発症後6カ月を経過すると機能回復は難しいとされていますが、CI療法を用いると生活期の患者さんでも機能回復が得られると考えられています。
CI療法の基本的なやり方
ではCI療法の基本的な手順をご紹介します。
1、非麻痺側を拘束する
CI療法では非麻痺側の代償行為を制限して、麻痺側の運動を誘導します。アームスリングやミトンを使用して拘束するのが一般的です。
2、1日3時間~6時間の10日間の集中訓練を行う
集中的に様々な課題を行います。患者さんの状態や目標によって難易度を設定し、段階的に目標達成ができるように訓練します。
3、麻痺側の利用を実生活への汎化
CI療法では生活の中で使えるようになるためにセラピストと一緒に課題をこなしていきます。運動機能に応じて課題をこなしていき、麻痺側を日常生活でも活用できるようにトレーニングを行います。
CI療法の効果や有効性
片麻痺になると日常生活において、どうしても使いづらい麻痺側ではなく、非麻痺側を使用する機会が多くなってしまいがちです。
CI療法によって1日3~6時間の非麻痺側の拘束を行い、集中的・反復的にトレーニングを行うことで麻痺側の上肢を使わないという習慣を是正します。また、強制的に麻痺側を使用することで大脳機能の再教育を促します。
CI療法の有効性を示すエビデンスも証明されており、世界的にも有用なツールとして知られています。
参考:Constraint-induced movement therapy for upper extremities in people with stroke
CI療法は誰でもできるわけじゃない?デメリットや注意点も確認
CI療法は上肢リハビリとして、有効な手法の1つですがCI療法の特性上、誰でも行えるわけではありません。CI療法を行う上での注意点やデメリットについてもみていきましょう。
集中的な時間が必要
CI療法は1回あたり60分以上、週5回以上、3週間以上の集中的なリハビリが必要です。そのため、リハビリを行える施設も限られてきます。退院後の外来リハビリやデイケアでは医療保険や介護制度の問題もあり、集中的なリハビリ時間の確保が難しいのが現状です。
CI療法は入院中は病院で行うことが可能ですが、退院後は訪問リハビリや自費リハビリなどを利用して行う必要があります。
<<<適応患者が限られる>>>
CI療法は適応基準が定められており、全ての患者さんが行えるわけではありません。
<CI療法の上肢運動の適応基準>
・手関節が20度以上伸展ができる
・母指を含む3本指の、真ん中の指の第3関節とその隣の指の第2関節が10度以上伸展できる
<その他の適応基準>
・重度の高次脳機能障害や精神疾患がない
・歩行を含むバランスに問題がない
・重度な痙縮がない
・強い痛みがない
・日常生活で麻痺手があまり使用されていない
上記から見ても麻痺の程度が軽度~中等度の患者さんがCI療法の対象となります。
制限によりストレスも
CI療法は使いやすい非麻痺側の上肢をスリングやミトンで拘束し、動きを制限します。動きが鈍い麻痺側を強制的に使うことへの疲労に加え、治療時間も3~6時間を長く行うためストレスも大きくなるでしょう。
患者さんご自身がCI療法をしっかりと理解した上で取り組む意欲があるか、長時間の訓練に耐えられる精神力があるかも重要な要素となってきます。
CI療法以外にもある!脳卒中後の上肢リハビリテーションの種類
CI療法は脳卒中後の上肢リハビリとして有名ですが、他にも上肢リハビリとして有効なものがいくつかあります。ここではよく活用されるものをいくつかご紹介します。
上肢リハビリの種類
脳卒中後の上肢リハビリは世界中にたくさんのリハビリがあります、中でも有効性が高く良く知られているものをご紹介します。
<脳卒中における上肢リハビリ>
課題指向型訓練 | 色々な課題を通して麻痺側の運動を行う(CI療法もこの1種) |
電気刺激療法 | 電気刺激を身体に与えるリハビリ |
ミラーセラピー | 鏡を使って麻痺側上肢が動いているように錯覚させるセラピー |
運動イメージ療法 | 頭の中で手足を動かしているところを想像するリハビリ。慢性期に有効 |
運動観察療法 | タブレットやテレビを観ながら誰かが運動しているところをみるリハビリ。60歳未満の患者に有効 |
ストレッチ | 関節可動域制限を改善させる目的で行う。痙縮に有効 |
筋力トレーニング | 発症6ヵ月未満の患者の筋力向上に有効 |
自分に合ったリハビリを
上記のとおり、脳卒中後の片麻痺の上肢リハビリには様々なものがあります。手あたり次第行うのではなく、麻痺の重症度や発症後からの時間経過によって最適なものを選んでいくといいでしょう。
また1つだけ行うのではなく、さまざまなリハビリを組み合わせて行うことでより効果を発揮します。医師やリハビリ専門家と相談しながらご自身の症状や状況にあったリハビリを行うことがとても大切です。
まとめ|CI療法について
<CI療法のまとめ> ・CI療法は、世界的に知られている脳卒中後の片麻痺の上肢リハビリテーション方法です。 ・非麻痺側の手足を拘束することで、麻痺側の運動機能を改善することを目指します。 ・この療法は、片麻痺の軽度から中等度の人に有効です。 |
今回は、CI療法について詳しく解説しました。CI療法は、エビデンスの高いリハビリテーション方法であり、片麻痺の上肢リハビリとして推奨されています。しかし、この療法は多くの時間を要するため、誰にでも適用できるわけではありません。また、適応基準もあるため、事前の確認が必要です。
CI療法を始めたいと思ったら、まずご自身の麻痺の重症度や身体の状態を確認しましょう。そして、医師やリハビリ専門家(理学療法士)と相談の上、適切なリハビリ計画を立てることが大切です。