NEXTSTEPS リハビリお役立ちコラム 脳の可塑性とは?脳科学の発展とともに進化する脳卒中リハビリ

脳の可塑性とは?脳科学の発展とともに進化する脳卒中リハビリ

脳の可塑性とは?脳科学の発展とともに進化する脳卒中リハビリ

脳の可塑性(かそせい)という言葉を知っていますか?難しい言葉ですが、可塑性をわかりやすくいうと「脳内で壊死した神経細胞の機能を他の神経細胞が代替えしてくれる機能」です。

脳卒中などで一度壊死した細胞は元には戻りませんが、他の神経細胞が代替することで、結果として機能回復が期待できるということです。脳の可塑性は未だ解明されていないことも多いですが、脳卒中後の麻痺側に対するリハビリの有効性があるのではと考えられています。

今回は脳の可塑性とはなにか、脳卒中のリハビリにどう影響するのかを解説します。

脳の可塑性|脳卒中が脳にもたらす障害と可塑性の影響

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脳の可塑性とは最近の脳科学の研究によって発見された比較的新しい概念です。まずは、脳の可塑性と脳卒中における脳への影響について解説します。

脳の可塑性とは

脳の可塑性とは、壊死した細胞が担っていた機能を他の細胞が代償することです。

脳卒中などで一度失われた神経細胞は二度と再生することはありません。しかし、リハビリなどで脳を刺激することにより、新たな神経細胞のネットワークが形成され、失われた機能を代償するようになります。

回復できないと思っていた脳機能に、自らカバーできる力が備わっていたことが明らかになったため、適切なリハビリテーションを受けることで機能回復が可能になると考えられるようになったのです。

参考:CiNii「脳の可塑性」

脳卒中による障害

脳卒中とは脳の血管が破れたり、詰まったりすることで十分な血液が流れなくなり、脳細胞が壊死してしまう疾患です。脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などがこれにあたります。

脳卒中による障害は以下の通りです。

  • 言語障害
  • 運動障害
  • 認知障害
  • 運動障害
  • 感覚障害
  • 嚥下障害
  • 自律神経障害

脳卒中は脳の損傷部位によってさまざまな症状が合わさって出現するので、患者さんによって症状は異なります。また、脳のダメージによってはこれらの障害が後遺症として残ってしまうことも少なくありません。

失われた機能の代償

失なわれた機能の代償とは具体的にどういうことかイメージがつきにくいですよね。

例えば、脳梗塞により指を動かす神経細胞が壊死してしまったとします。壊死した細胞はもとには戻りませんが、繰り返し訓練をすることで、手首を動かす神経細胞が指を動かす指令をだせるようになります。その結果、再び指を動かすことが可能になるのです。

麻痺の症状がある筋肉を動かすことによって、脳が自ら学習し新しい神経ネットワークを作り、麻痺した筋肉の治療が可能になるのです。

脳の可塑性が脳卒中リハビリの考え方を大きく変えたワケ

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脳の可塑性を発見してから、脳卒中のリハビリは大きく変化しました。今までの脳卒中リハビリの考え方と脳の可塑性を活用したリハビリの違いについて解説します。

今までのリハビリの考え方

壊死した脳細胞は二度ともとには戻らないので、その神経細胞が担う機能も失われると考えられていました。従来のリハビリでは麻痺が出現した場合、麻痺した部位の機能回復は諦めて、ほかの部分を強化し補うことを重要視していたのです。

また、脳卒中発症から6ヵ月を過ぎると機能回復は難しいとされてきました。そのため、後遺症が残った場合、麻痺側をサポートする装具の活用や、非麻痺側を使って日常生活を送ることができるようなリハビリを行うことが主流だったのです。

脳の可塑性を活用したリハビリへ

脳が新たに神経回路を構築できることが明らかになったことで脳卒中のリハビリへの考え方は大きく変化したのです。

脳の可塑性を活用し、リハビリを繰り返すことで運動の記憶が戻り、新たな神経細胞のネットワークが構築されると言われています。そのため、麻痺側に対するリハビリアプローチも重要であると考えられるようになりました。

また、脳の可塑性を活用したリハビリを行うことで脳卒中発症から6カ月以上経過した後でも機能回復が可能になることは多くの研究で報告されています。

可塑性を高めるにはリハビリが必須!脳のネットワークを再構築!

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脳の可塑性と高めるには適切なリハビリを行うことが重要です。実際、脳の可塑性を活用した脳卒中のリハビリはどのようなことが行われているのか具体的にみていきましょう。

脳の可塑性を高める運動療法

反復練習が脳の可塑性を活性化するといわれています。上肢に麻痺がある場合、何度も何度も上肢に対するリハビリを繰り返すことで、新たな神経ネットワークを形成し、強化し始めるのです。脳の神経の可塑性は400回以上繰り返すことでより早く活性化します。

できれば毎日400回同じ動作を繰り返すのが望ましいです。1つの動作ができるようになってきたら、負荷をかけるなど新しい課題を見つけて、繰り返しリハビリを行います。

神経回路を新しく形成するためには、単純に繰り返す量を増やすだけでなく、意図した運動の誘発に必要な神経回路に興奮を伝えることも重要です。

参考:J-stage「可塑性と運動療法」

進化するリハビリ機器

脳の可塑性が明らかになったことでリハビリ機器も進化しています。脳卒中のリハビリで用いる2つのリハビリ機器をご紹介します。

  • ◆電気刺激療法(IVES)

IVESは脳からの電気信号を察知し、麻痺や筋力低下のある筋肉に収縮を促す電気刺激を送る仕組みになっています。

運動信号を読み取り、よりよい筋活動を促すことで脳の運動学習を高めるのです。患者さん自身の随意運動を電気の力で補う治療法です。

  • ◆反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)

rTMSは、脳卒中を発症してから時間が経過していても回復の効果がある治療法として近年注目されてます。抑制し合っている左右の大脳の神経活動のバランスを調整することができます。

頭の外側から大脳を継続的に刺激することにより、障害された脳を活性化する治療法です。

脳を調整するリハビリも必要

左右の脳のバランスを調整するようなリハビリも大切です。

脳には半球間抑制と呼ばれる、右脳と左脳が相互に抑制しあう神経現象があります。健常の場合、抑制しあうことで均等に働けるように調整していますが、片方の脳が損傷された場合、バランスが崩れて損傷された脳の活動性が低下してしまうのです。

損傷をうけていない脳ばかり使ってしまうと、損傷を受けた脳の本来の力まで抑制してしまうので、リハビリで両側の脳を同じくらい使うことが重要です。

まとめ|脳の可塑性を活用した脳卒中リハビリ

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今回のコラムでは、「脳の可塑性(かそせい)」を活用した脳卒中のリハビリテーションについて解説しました。

まず、「脳の可塑性」とは何でしょうか?これは、脳が新しい経験や学習に応じて、その働きや構造を変える能力のことを指します。簡単に言うと、脳は変化し成長する力を持っているということです。

脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳の一部がダメージを受ける病気です。その結果、手や足が動かしにくくなったり、言葉がうまく話せなくなったりすることがあります。しかし、脳の可塑性を活用することで、ダメージを受けた部分の機能を取り戻すことが可能になります。これは、脳の他の部分が新たに働きを担うようになったり、ダメージを受けた部分が回復したりするからです。

以前のリハビリでは、失われた機能を他の方法で補うことが主流でした。たとえば、手がうまく動かせない人に対しては、道具を使って生活を助けるといった方法です。しかし、最近のリハビリでは、問題がある部分そのものを訓練することが重要だとされています。これは、脳の可塑性を活かして、本来の機能を取り戻すことを目指しているからです。

脳の働きについては、まだわからないことがたくさんあります。脳科学の研究が進むにつれて、脳卒中のリハビリ方法も日々進化しています。そのため、一人ひとりの患者さんに合った最適なリハビリを見つけることがとても大切です

そのためには、信頼できるリハビリの専門家に定期的に相談することが重要です。自分に合ったリハビリ方法を一緒に見つけることで、より効果的に機能を回復させることができます。

脳卒中のリハビリは、一人で頑張るものではありません。周りのサポートを受けながら、脳の持つ力を信じて取り組んでいきましょう。

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