MVC(最大随意収縮)で筋力アップを確実に。リハビリの努力を成果に変える負荷設定のコツ
2026.01.19
「毎日リハビリを頑張っているけれど、本当にこれで筋肉がついているのかな?」 そんな不安を感じたことはありませんか。リハビリの現場では、一生懸命に取り組んでいるのに、負荷の設定が「なんとなく」になってしまっていることで、本来得られるはずの成果を逃してしまっているケースが少なくありません。
せっかく貴重な時間を使ってリハビリに励んでいるからこそ、その努力を最短距離で「動ける喜び」に繋げてほしい。そのために知っておいていただきたいのが、「MVC(最大随意収縮)」という指標です。
難しく聞こえるかもしれませんが、中身はシンプルです。「今の自分は、最大でどれくらいの力が出せるのか」を知る。ただそれだけで、筋力を高めるためのトレーニングは、迷いのない、確かな一歩へと変わります。筋力をつけたい時、あるいは長く動けるようになりたい時、今のあなたに最適な「力加減」を導き出してくれるのが、このMVCという考え方なのです。
この記事では、専門用語をできるだけ噛み砕きながら、今日からのリハビリをより効果的にするための「負荷の選び方」をわかりやすくお伝えします。
目次
MVCとは何か|筋力評価で用いられる最大随意収縮の基礎知識

まずは、MVCがどのように測られ、どんな場面で役立つのかを押さえることが大切です。ここでは、基本となる考え方と%MVCとの関係を整理します。
MVC(最大随意収縮)の定義と測り方
MVC(最大随意収縮)とは、特定の姿勢や条件下で自分の力を最大限に発揮したときの筋力を数値化したものです。筋力の評価やトレーニング負荷の基準として用いられ、理論上の力ではなく、実際に意識的に発揮できる力を基準としています。
測定は、筋力計を用いて行います。条件が変わると数値も変動するため、測定時の姿勢や方法を一定にすることが重要です。
筋力トレーニングにおけるMVCの役割
筋力トレーニングの成果を高めるには、どれほどの力で負荷をかけているかを把握しておくことが欠かせません。MVCを基準にすると、今出している力が「最大の何%か」を数字で確認できるため、強度の位置づけが理解しやすくなります。
MVCは、以下のような場面で役立つ指標です。
- 筋力アップに適した強度を見極める
- 目的に合わせて負荷を調整する
- 過度な負担を避けて安全性を高める
感覚だけに頼らないことで、効果の安定にもつながります。
%MVCとは?負荷設定に便利な指標
%MVC(PercentMaximumVoluntaryContraction:最大随意収縮比)とは、測定したMVC(最大随意収縮)に対して「今どれくらいの力を使っているか」を割合で示す指標です。強度を数値で確認できるため、次のような場面で適切な負荷を判断しやすくなります。
- 筋力アップに必要な強度を決めたいとき
- 目的別に負荷を切り替えたいとき
- リハビリで安全な範囲を設定したいとき
数値を基準に強度をそろえやすくなるため、安定したトレーニングにつながります。
参考:j-stage「随意収縮強度別(%MVC)による表面筋電図周波数特性」
MVC強度の基準|筋力を高めるために必要な負荷設定とは

MVCを基準にすると、今のトレーニングが「十分な刺激になっているのか」を客観的に判断することが可能です。ここでは、高強度・低強度それぞれの特徴や、安全に効果を出すための強度設定の考え方を整理します。
筋力を伸ばすには高強度が推奨される理由
筋力を伸ばしたいとき、よく使われるのがやや強めの負荷である60〜80%MVCです。
この強度は多くの筋線維を働かせやすく、深部まで刺激を届けることができます。短い時間で成果が出やすい点もメリットです。
一方で負荷が大きくなるため、安全に続けるには、フォームや休息を整えながら進めることが欠かせません。
低強度でも努力度が高ければ筋力向上は可能
重い負荷でなければ筋力はつかない…と思っている方は多いのですが、実は低〜中強度でも、限界近くまで動作を続ければ十分に効果はあります。
疲労が進むほど多くの筋線維が働くため、軽い負荷でも強い刺激になるからです。また、低~中強度はフォームを保ちやすく関節への負担も少ないため、安全に続けやすいというメリットもあります。
強度が高くない日でも丁寧にやり切ることで、筋力向上を狙うことが可能です。
伸張性収縮でのMVC強度の特徴
伸張性収縮(エキセントリック)は、筋肉が伸びながら力を出す動きで、同じ%MVCでも刺激が強くなりやすい特徴があります。重さをコントロールしやすいため、比較的低い強度でもしっかり負荷をかけられる点がメリットです。
この動きは軽い負荷でも大きな刺激を与えやすく、筋肥大や筋力アップに向きやすい面があります。一方で負荷が強く出やすいため、安全に続けるには回数やフォームを丁寧に整えることが欠かせません。
参考:j-stage「筋力低下に対する神経-筋電気刺激の処方-その安全性と有効性ー」
目的別|%MVCでわかる最適なトレーニング負荷の使い分け

筋力を伸ばしたいのか、持久力を高めたいのか、あるいは安全に身体を動かしたいのかといったトレーニングの目的によって、最適な%MVCは変わります。
ここからは、それぞれの場面に合った負荷の目安を整理しましょう。
MVCと1RM(最大挙上重量)はどう違う?
筋力トレーニングの指標としてよく使われる「1RM(1回持ち上げられる最大重量)」と「MVC」は、どちらも最大筋力を基準にする点では似ていますが、測り方が異なります。
- 1RM(最大挙上重量): 重り(ダンベルやバーベル)を1回持ち上げられる限界の「重さ」を基準にします。
- MVC(最大随意収縮): 特定の姿勢で筋肉をグッと収縮させた際に出る「力の強さ」を数値化したものです。
例えば、ベンチプレスなどで「重り」を扱う場合は1RMが便利ですが、重りを使わないリハビリや、より精密に筋肉の稼働率を知りたい場合にはMVCが適しています。 ここで紹介している%MVCの基準は、回数に換算すると1RMとおおよそ連動するため、自分のトレーニングスタイルに合わせて使い分けるのが正解です。
筋力アップに必要なMVC負荷の目安
筋力を伸ばしたい場合は、やや強めの負荷が必要です。一般的な目安は%MVCで60〜80%ほどで、この範囲は多くの筋線維が働きやすく効率のよい強度とされています。
ただし負荷が高くなる分、フォームが乱れやすくなったり疲労が溜まりやすくなったりするため、ケガがないように注意しながら行うことが大切です。
| 目的 | 推奨強度 (%MVC) | 特徴・期待できる効果 |
| 筋力アップ | 60〜80% | 多くの筋線維を働かせ、短期間で成果を出す 3 |
| 筋持久力向上 | 40〜60% | 長く動作を続けやすく、疲労をコントロールできる 4 |
| リハビリ・高齢者 | 20〜40% | 関節負荷を抑え、安全に機能を改善する 5 |
| 機能改善(中等度) | 50〜70% | 動作の再学習に適し、幅広い場面で有効 6 |
まずは、ご自身の目的が『筋力アップ』なのか『リハビリ』なのかを明確にし、この表の数値を一つのゴールに設定してみてください。
筋持久力向上に適した低〜中強度のMVC
筋持久力を高めたい場合は、比較的軽めの強度が向いています。目安となる数値は、40〜60%MVCほどです。この範囲は長く動作を続けやすく、疲労もコントロールしやすい点が特長です。
強度が低い分、回数や時間で刺激を積み重ねることが、持久力アップにつながります。
高齢者・リハビリで推奨の安全な強度設定
高齢者やリハビリに適しているのは、身体への負担を抑えつつ動ける強度です。一般的な目安は20〜40%MVCほどで、この範囲なら関節への負荷を抑えながら安全に継続できます。
無理のない範囲で反復を重ねることが、機能改善につながるでしょう。
研究に基づくMVC負荷のリハビリ効果と筋力改善のメカニズム

MVCを使った負荷設定は、トレーニングだけでなくリハビリの分野でも研究が多く進んでいます。安全で効率よくアプローチするためにも、どの強度が効果を生みやすいのか、どんな組み合わせが改善を後押しするのかを把握しておきましょう。
中等度(50〜70%MVC)の有効性
無理なく取り組めるわりに筋力改善を得やすい強度とされるのが、50〜70%MVCほどの中等度の負荷です。この範囲は筋活動が安定しやすく、動作の再学習にも取り入れやすい点がメリットであるといえます。
リハビリの初期から中盤にかけて使われることが多く、幅広い場面での応用が可能です。
課題指向型訓練との併用で改善が大きい理由
課題指向型訓練に%MVCの負荷を組み合わせると、日常動作に近い形で筋を働かせやすくなります。動作練習と筋力向上が同時に進むため、改善につながりやすい点が魅力です。
特に生活場面での動きを取り戻したいケースでは、より効果を発揮しやすい傾向があります。
負荷量・回数・頻度が効果に与えるポイント
筋力改善を進めるには、負荷量だけでなく回数や頻度の調整も欠かせません。軽めの強度でも回数を重ねれば刺激が蓄積し、一定の効果が期待できます。
また、週に数回の継続が改善を左右する大事な要素です。無理のない範囲で積み重ねることが成果につながります。
FAQ|MVCに関するよくある質問

Q:MVCを測るときの注意点はありますか?
A:あります。MVCは姿勢や関節の角度が少し変わるだけで値が大きく変わるため、毎回同じ姿勢・同じ固定で測ることが大切です。信頼性を高めるため、最大の力が出るようにしっかり声かけを行い、2〜3回測った後で、最も高い値を使いましょう。
Q:%MVCとRPEは何が違い、どう使い分ければ良いですか?
A:%MVCは「最大の何%か」を示す客観的な強度で、RPEは「きつさ」を数値化した主観的な強度です。器具がない自宅トレーニングではRPEが便利で、正確な進捗管理や評価には%MVCが向いています。両方を組み合わせると調整しやすくなります。
Q:自宅で%MVCをおおまかに推定する方法はありますか?
A:あります。負荷は変えずに「何回で限界になるか」で強度を推定できます。
- 10回で限界→約75〜80%MVC(1RMベース)
- 15回で限界→約65〜70%MVC(1RMベース)
- 20回以上で限界→約60%MVC以下(1RMベース)
まずはフォームを優先し、回数を目安に負荷を調整すると扱いやすくなります。
Q:伸張性収縮(エキセントリック)では強度設定は変わりますか?
A:変わります。エキセントリック収縮は同じ%MVCでもより大きな筋力を発揮できるため、コンセントリック収縮と同じ負荷設定でも相対的に低い強度となります。初めて取り組む場合は、回数やテンポを調整しながら慎重に進めてください。
まとめ|MVCを理解して安全かつ効果的に筋力を高めよう

筋力を鍛える。言葉にすれば簡単ですが、それがどれほど苦しく、根気のいることか、私たちは現場で痛いほど見てきました。今回お伝えした「MVC(最大随意収縮)」という言葉、難しく感じたかもしれません。でも、これだけは覚えておいてください。この数値は、あなたが流した汗を「なんとなくの努力」で終わらせないための、確かな道しるべです。
「今日はこれだけ頑張れた」「この負荷なら、明日はもっと動ける」。そうやって自分の現在地を数字で知ることは、リハビリの孤独な戦いの中に、小さな、でも確かな「自信」を灯してくれます。研究データや%MVCの指標は、私たちがあなたの体を守り、最短距離で成果を出すための武器です。でも、その武器をどう使うか以上に大切なのは、あなたが「また自分の力で歩きたい」と願う、その気持ちを私たちが絶対に形にするという覚悟です。
人の体は、一人ひとり違います。だからこそ、教科書通りのトレーニングではなく、あなたの今の限界に合わせた、あなただけの「最適解」が必要です。もし、今のリハビリがどこに向かっているのか不安になったなら、いつでも私たちにその不安をぶつけてください。
数値の先にある、あなたが自分らしく笑える日常を取り戻すまで。私たちは、あなたの隣で、その一歩を支え続けます。







