注意障害のリハビリプログラム|4つのタイプとリハビリの注意点
2024.10.21
注意障害は、脳卒中や事故などで脳が傷つくことで起こる高次脳機能障害の1つです。外見からは理解されにくいので「見えない障害」と言われています。
脳卒中や事故の後に「ぼーっとすることが増えた」「1つのことに集中できなくなった」などの症状がある場合は注意障害かもしれません。注意障害を改善するためにはリハビリが有効です。
リハビリ効果を高めるためには、注意障害のタイプに合わせたリハビリプログラムを行う必要があります。今回は注意障害の4つのタイプ別にリハビリプログラムをご紹介します。また、注意障害のリハビリプログラムを決める際に大切なこともぜひ知っておきましょう。
目次
注意障害とは?リハビリプログラムの前に知っておくべきこと
高次脳機能障害の1つである注意障害は外見からは判断しにくく、理解されにくいのが特徴です。日常生活や社会復帰に影響を及ぼす可能性もあるので、注意障害のリハビリプログラムを知る前に、症状や対応法を理解しましょう。
注意障害の症状
注意障害の症状には以下のような特徴があります。
- 集中力が持続しない
- 周囲の状況を見ずに興味のあるものへとびつきやすい
- 二つのことを一度にできない
- 頭の切り替えがうまくできない
- 少しの音や出来事に気をそらされてしまう
- アイコンタクトがとれない、もしくはごく短い
- いくつも質問されると返答に時間がかかる
注意障害は他の高次脳機能障害に比べて発現頻度が高く、種類や重症度により幅が広いと言われています。また、注意機能は全ての高次脳機能の基礎となるため、優先して改善する必要があります。
注意障害への対応法
注意障害の方に接する時は以下のことに注意して対応しましょう。
- 集中しやすい環境と整える
- ひとつずつ作業を行うようにする
- 休憩時間をしっかりとる
- 混乱しないように統一した声掛けをする
- 必要に応じてメモやアラームを使用する
注意障害の場合、注意力の低下に本人が気づいていないこともよくあります。自覚がない状態は注意障害の改善を遅らせる原因となります。まずはご自身が注意力が落ちていることに気づいてもらうことが大切です。
注意障害のリハビリ|4つのタイプに合わせたリハビリプログラム
注意障害は4つのタイプに分けられます。それぞれの特徴に応じたリハビリプログラムを行うことで症状の改善が期待できます。それぞれのタイプの特徴とおすすめのリハビリプログラムを紹介します。
①持続性注意障害
「続けられる力」が乏しいため、集中力の持続が難しく途中で投げ出してしまったり、ミスが多くなったりといったことがみられます。また考えごとをするとすぐ疲れてしまうのも特徴の1つです。
<適したリハビリプログラム>
- 末梢課題:数字や仮名を順番に見つける課題
- 数字系列:100から1ずつ引いていく。徐々に-2、-3など難易度をあげる。
<リハビリを行うときの注意点>
- こまめに休憩がとれるように配慮する
②選択性注意障害
「見つけられる力」が乏しく、多くの情報から必要な情報をピックアップすることが困難になります。例えば「お店の商品から必要なものを見つけられない」「物音が気になって注意がそれる」などといった症状です。
<適したプログラム>
- 雑音下での数字抹消・図形抹消
- 視覚妨害化での数字抹消・図形末梢
- 持続性注意課題を雑音がある状態や斜線付きの用紙を用いて行う
<リハビリを行う時の注意点>
- 仕切りをつけるなど周りの刺激を取り除く
③転換性注意障害
「変えられる力」が乏しく、注意を向ける対象を切り替えることが難しく、1つのものに対して注意が根強く、それ以外に注意が向けられなくなります。「課題を変えることが苦手」「ずっと同じ話をする」などの特徴があります。
<適したリハビリプリグラム>
持続性注意の課題を15秒ごとに切り替えて実地
- 末梢課題
- 加算/減産切り替え計算
- 逆唱課題:検査者が言った数字や曜日を逆唱する
<リハビリを行う時の注意点>
- 注意の転換が必要ない環境をつくる
④分配性注意障害
「同時に何かを行う力」が乏しく、2つの作業を同時に行うことが苦手です。また順序よく作業を行うことも難しくなります。「電話をしながらメモが取れない」「3人以上での会話が難しい」などの症状が特徴です。
<適したリハビリプログラム>
注意配分:複数の課題を同時の行う
1~3の中から2つを行う
- 流れている曲名を答える
- 計算
- 障害物をよけながら歩く
1+2計算を終えた後に曲名と答える
2+3障害物をよけながら計算問題を解く
<リハビリを行う時の注意点>
- なるべく1つずつ行う(課題に集中できる環境作り)
注意障害の最終的なリハビリプログラム決定において大切なこと
注意障害は周囲に理解されにくい上に、患者さんご自身でも気づきにくい疾患です。まずはご本人や家族、周囲の人が注意障害を正しく理解し、改善できるように協力して取り組むことが大切です。
目に見える目標が最終目標ではない
注意障害のリハビリはさまざまな課題をおこないますが、課題などの「目に見える目標」を達成することが最終的な目標ではありません。
リハビリを行うことで「生活の質を改善していく」ことが最終的な目標となるので課題の成果を生活の中に落とし込むことが大切です。
例えば2分間集中して行う課題ができるようになったら、日々の身支度を2分で終わる作業に分割して組み合わせるなど工夫してみましょう。
家族や周囲の協力が不可欠
日常生活において欠かせない機能に障害があることは本人にとってもとても辛いことです。そのことを家族や周囲の方が理解し、リハビリを行いやすい環境づくりを工夫しましょう。
注意障害はさまざまなので、その人の注意の向きやすさを活かしたアプローチをしてみましょう。例えば、視覚的注意が向きやすい人には高さや色を工夫しながらポスターや張り紙を有効に使ったり、聴覚的注意が向きやすい人はアラームや声を有効な手段として利用することもおすすめです。
このような患者さんへの家族の配慮はよりリハビリ効果を高めてくれます。
まとめ|注意障害におけるリハビリプログラム
注意障害などの高次機能障害のリハビリは、発症から1年以内が最も効果的だと言われています。この期間は、脳の回復力が高いため、できるだけ早くリハビリを始めることが大切です。発症直後には意識障害が伴うこともあるため、患者さんの回復状況を見ながら、早い段階で訓練を始めると良いでしょう。
注意障害にはいくつかのタイプがあり、症状は人それぞれです。ですので、患者さんに合った個別のリハビリプログラムを行うことで、より効果的に機能を改善することができます。また、注意機能は感情や疲れと深く関わっているため、リハビリだけでなく、家族や周囲の人が患者さんの状態を理解し、不安を和らげてあげることも非常に重要です。
注意障害を持つ患者さん一人ひとりに合ったリハビリを続けることで、生活の質を改善し、より良い日常生活を送れるようにサポートしましょう。