fbsの検査内容やカットオフ値を解説!自立歩行に向けて今できる対策も
2024.10.14
歩行が難しかったり、バランスに不安がある方は、いくつかの検査を受けることが多いでしょう。その中の一つがFBS(Functional Balance Scale)というバランス能力を評価する検査です。
FBSには、歩行自立を判断する基準となる「カットオフ値」がありますが、研究によってこの基準が異なることがあります。その理由は、対象とする人の年齢や健康状態、リハビリ内容が異なるためです。ですから、一概にどの基準が正しいとは言えないこともあるのです。
この記事では、FBSのカットオフ値が異なる理由と、歩行自立を目指すためにできるトレーニングを紹介します。たとえば、足の筋肉を鍛える運動や、バランスを向上させるエクササイズが有効です。少しずつトレーニングを続けることで、安定した歩行に近づくことができるでしょう。
目次
なぜfbsが行われる?カットオフ値が研究ごとに違う理由も解説
fbsはFunctionalBalanceScaleの略で、バランス能力の評価方法です。カットオフ値とは、ある基準や判定のために設定された数値のことで、「正常」「異常」などを判別する際に使用します。fbsの目的やカットオフ値について知っておきましょう。
fbsの目的と対象となる人
fbsは患者さんのバランス機能を評価するさいに使用されます。以下のような方のバランス能力を評価し、転倒リスクや動作を安全に行うための判断を行うのが目的です。
- 高齢者
- 脳卒中後の運動麻痺がある方
- パーキンソン病の方
- 整形外科的な疾患がある方
カットオフ値が研究によって異なる理由
評価を行うとなると結果や判定基準が気になりますよね。しかし、「fbsカットオフ値」と検索しても明確な基準が出てこないのではないでしょうか。これは自立できる動作を判定するには、感覚障害の有無・運動麻痺の程度・筋力など様々な要素を組み合わせる必要があり、fbsだけでは判断が難しいためです。
歩行自立のためのカットオフ値は、検査を行う施設によって異なるかもしれません。一度検査を受けてカットオフ値を出してもらったら、再検査は同じ施設で受けるようにしましょう。
参考:J-STAGE「回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳血管疾患後片麻痺を対象とした歩行自立判断のためのパフォーマンステストのカットオフ値」
参考:研究テーマFBS得点からみた当院での歩行自立の妥当性について
fbsの評価項目とカットオフ値を知って検査の不安を軽減しよう
fbsを行う前は検査内容について不安になる方が多く、fbsを受けたあとは再評価の時にいい点数を取りたいと思う方が多いです。fbsの具体的な評価項目と歩行自立のカットオフ値を知ると検査に対する不安が軽減されるでしょう。
fbsは全14項目で構成される
fbsは全14項目で構成され、それぞれに対し0〜4点の5段階で評価されます。
- 椅子座位からの立ち上がり
- 立位保持(安全に立っていられるかどうか)
- 座位保持(両足を床につけ、背もたれに寄りかからずに座る)
- 着座(1人で座れるかどうか)
- 移乗(安全に移乗ができるのか)
- 閉眼立位保持(目を閉じて立った姿勢を維持できるか)
- 閉脚立位保持(足を閉じて立った姿勢を維持できるか)
- 上肢の前方リーチ(どの程度まで手を伸ばせるか)
- 床から物を拾う
- 左右の肩ごしに後ろを振り向く
- 360°回転(立ったまま回れるか)
- 段差踏み替え(台に交互に足をのせられるか)
- 継ぎ足位での立位保持(片方の踵ともう一方のつま先を合わせた状態で立てるか)
- 片脚立位保持(片脚立ちの保持ができるか)
各項目によって評価点のつけ方は変わりますが、以下のような基準で判定されます。
・5点…1人で達成できる
・4点…監視ありで達成できる
・3点…短い時間や代償的な動作で達成できる
・2点…より短い時間や代償的な動作があるが達成できる
・1点…最小限の介助や複数回実行すると達成できる
・0点…介助が必要
fbsのカットオフ値で判断されること
歩行自立度のカットオフ値は研究によって異なりますが、fbsの全ての点数を合計して45点以上で歩行が自立できるという報告が一般的です。44点以下は転倒のリスクが高いと判断されます。fbsのカットオフ値をみて、リハビリや退院後の計画が立案されるでしょう。
参考:19.FunctionalBalanceScale(FBS)
参考:回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳血管疾患後片麻痺を対象とした歩行自立判断のためのパフォーマンステストのカットオフ値*
fbsのカットオフ値を上回りたい…歩行自立のためにできること
fbsや他の検査から歩行自立のカットオフ値を上回っていない場合、焦りや落胆を感じるでしょう。リハビリを続けるのも重要ですが、ご自宅でできることがあります。歩行を自立させるために今すぐできることを紹介するので、生活の質を上げたい方は是非取り組んでみてください。
下肢の筋力をつける
膝を伸ばす筋肉を向上させると、fbsの閉眼立位保持・上肢の前方リーチ・継ぎ足位での立位保持・片脚立位保持の4項目が改善された報告があります。立っている姿勢のバランスを改善するには膝を伸ばすために働く筋肉(大腿四頭筋)を鍛える必要があるといえるでしょう。
【大腿四頭筋を鍛えるトレーニング】
膝が直角になるような高さの椅子に足の裏をつけて座りましょう。その姿勢から片足ずつ膝を伸ばします。伸ばした足と床が平行になるくらいまで上げると効果的です。
関節可動域を維持・向上させる
運動不足・加齢・麻痺などにより、足首の関節可動域が狭くなっていると転倒してしまうかもしれません。そのため、関節可動域を維持・向上させるのが重要です。
【足首の関節可動域トレーニング】
座った状態で片方の膝を伸ばし、足裏に細く畳んだバスタオルをかけます。そして、端をそれぞれの手で持ち、自分の方にタオルを引っ張るようにしましょう。ふくらはぎの筋肉が伸びる感覚があれば成功です。終わったら座った状態で膝を曲げ、足の甲を床につけて、すねの筋肉を伸ばすようにします。
重心移動を伴う経験を積む
歩行は重心の移動を行う動作です。そのため、重心移動を伴うトレーニングを行うと自立歩行に役立ちます。
どこかにつかまっても良いので、両足をしっかり床につけて立ちます。その状態で左右・前後に体重かける場所を動かしてみましょう。ゆっくり動き、足の裏の感覚を確かめることが重要です。
慣れてきたら片脚立ちや立った状態でつま先を上げて踵だけで立つ訓練などを行うと、さらにバランス能力が向上します。
まとめ|fbs(カットオフ値)について
BSは、Functional Balance Scale(ファンクショナルバランススケール)の略称で、患者さんのバランス能力を評価するための方法です。専門医がこの方法を使って、患者さんのバランス機能を数値化し、転倒のリスクや歩行能力をチェックします。特に、バランスが悪いと歩行中の転倒リスクが高まるため、バランス機能の改善は重要なポイントとなります。
このFBSの点数は、リハビリを行う際の一つの評価基準として非常に役立ちます。家族やサポートする周りの人たちにとっても、点数を基に患者さんの進捗を理解できるのは大きなメリットです。しかし、ここで気をつけたいのは、点数だけにとらわれてしまうことです。点数の変動に一喜一憂してしまうと、リハビリが短期間で終わってしまったり、逆に無理をしてしまうことがあります。リハビリは継続的に行うことが大切です。焦らずに少しずつ進めることで、結果的に大きな改善を得られます。
今回のトレーニングの例としては、大腿四頭筋を鍛えるトレーニングや、足首の関節可動域を広げるトレーニングが挙げられます。これらのトレーニングは、歩行を自立させるために非常に有効です。例えば、大腿四頭筋を強化することで、歩行中の脚の安定性が増し、転倒のリスクを減らすことができます。また、足首の可動域を広げることで、スムーズな歩行ができるようになります。
リハビリを進める際は、「数字に焦らず」、少しずつでも確実にバランス能力を向上させることを目指しましょう。最初は進展が少ないように感じるかもしれませんが、毎日続けることで、着実に改善されていきます。周囲の人たちも、焦らず温かくサポートしていくことが大切で少しずつ向上できるようにリハビリに取り組みましょう。