感覚障害へのリハビリアプローチ|下肢の感覚障害の症状や治療法とは
2024.10.04
脳卒中の後遺症として、約半数の人が感覚障害に悩んでいると言われています。下肢に感覚障害が起こると、しびれや痛み、歩行が困難になるなどの症状が現れます。
下肢に感覚障害が生じた場合、どのようなリハビリのアプローチがあるのか気になります。しかし、運動障害に対するリハビリと比べて、感覚障害に対するリハビリの方法はまだ数が少ないのが現状です。
それでも、感覚障害のリハビリに関する研究は世界中で進められています。今回は、下肢の感覚障害に焦点を当てて、その症状やリハビリ方法について解説します。
目次
感覚障害が下肢に起こる影響|原因となる疾患や運動障害との違い
感覚障害への適切なリハビリアプローチを知るためにも、まずは下肢における感覚障害の症状や原因を理解しましょう。原因となる疾患や混同されやすい運動障害との違いについても解説します。
感覚障害とは?下肢に生じた場合の影響は?
感覚障害は感覚がにぶくなったり、逆に過敏になったりなど感覚神経の異常反応を生じる障害です。「触れても温度がわからない」「痛みを感じない」などさまざまな障害が出現します。さらに、ビリビリとした痺れや痛みを伴う痺れを感じることも少なくありません。
下肢に感覚障害が生じると以下のような症状があらわれます
- 足のしびれや痛み
- 歩行困難
- ふらつき
- 排便排尿障害
歩行時にどこに体重が乗っているかわからなったり、足が伸びているか曲がっているかの感覚が鈍くなったりする影響で歩行困難になり、転倒などのリスクにも繋がります。
感覚障害の原因となる疾患
感覚障害の原因となる疾患は大きく分けて3つです。
- <脳の障害>
脳梗塞や脳出血、脳腫瘍などが原因で脳の感覚神経が障害されることで発症します。脳幹には感覚神経以外にも多くの神経があるので、手足の麻痺、ろれつが回らない、顔面麻痺、バランスが取れない、などさまざまな症状を伴います
- <脊髄の障害>
腰椎脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどの脊髄の病気が原因の場合もあります。片側にしか発症しない脳とは違い、両側に感覚障害が出現することもあるのが特徴です。
- <末梢神経の障害>
末梢神経が障害されることでも感覚障害が出現します。障害された末梢神経が支配している部分に感覚障害が起こるだけでなく、病気によっては運動麻痺を併発することも。末梢神経を障害する病気として糖尿病、手根管症候群、帯状疱疹などがあります。
感覚障害と運動障害は違うの?
感覚障害と運動障害は以下のような違いがあります。
- 感覚障害…感覚がわからなくなることで鈍くなる障害
- 運動障害…力が入りにくくなることで動かしづらくなる障害
実際には感覚と運動は一緒に機能するもので、互いに密接に関わりあっています。多くの研究では脳卒後の後遺症である運動麻痺の改善には感覚障害の程度が大きく関わっていると考えられています。
感覚障害におけるリハビリのアプローチ|下肢へのリハビリとは
感覚障害におけるリハビリにはさまざまなアプローチがあり、適切なリハビリが感覚障害の回復に繋がることもわかっています。今回は下肢に対するリハビリをご紹介します。
感覚刺激のリハビリ
足底にはたくさんの感覚受容器が存在し、立っている時や歩いている時に重要な情報を得る場所です。足裏の感覚を刺激することで、失った機能や作用を活発化させることができます。
具体的なトレーニング法に以下のものがあります。
- 識別課題…尖ったもの、角度がついたもの、材質の異なるものなど、さまざまなものを踏んで感覚を刺激します。
- タオルギャザー…タオルギャザーとは足指を使ってタオルを手繰り寄せるトレーニングです。足裏の感覚刺激だけでなく筋力強化効果もあります。
- ボール転がし…ボールの上に足を乗せて、踏んだり転がしたりするトレーニングです。足からボールが離れないようにするなど筋力コントロールも向上させます。
感覚統合のリハビリ
感覚障害があると、自分の足がどのような動きをしているか認識できない場合があります。感覚障害の改善にはどのような動作をしているか認識し、必要な動作を習得するためのトレーニングが重要になります。
- 位置感覚訓練…椅子に座った状態で目を閉じ、足の指先の位置をそろえるトレーニングです。どうすれば位置のズレが修正できるかを考えながら繰り返し行います。
- バイオフィードバック…バイオフィードバック療法は意識的に動かせない体内反応を測定機器を使って可視化し、その情報をもとに整理機能をコントロールする治療法です。コンピューターやセンサーを使って上手に動けているかを確認しながら訓練を行うため、患者さん自身も自分の力加減を確かめながら筋肉の使い方を学ぶことができます。
感覚入力
リハビリテーションにおける感覚入力とは、さまざまな感覚刺激の中から正しい動作を行うための必要な刺激を再学習することを言います。正しい感覚が入力されることで動作遂行の質の向上が期待できるのです。
- 装具の使用…長下肢装具を用いて立位練習を行うことにより、足底から荷重感覚入力、体幹や股関節に対する抗重力位での感覚が入力されます。その結果、適切な抗重力筋活動を引き出すことが可能になり、姿勢制御の改善を促します。
感覚障害にリハビリアプローチは必須?下肢へのリハビリはいつまで?
感覚障害が出現すると自然によくなることはあるのでしょうか?また、リハビリはどのくらいの期間必要になるのでしょうか。最後に感覚障害のリハビリについて解説します。
感覚障害は自然回復するのか
回復には個人差がある上に、自然回復による完全な状態への回復は難しいでしょう。むしろ悪くなる可能性もあるので注意が必要です。
感覚障害の回復は症状が出現後~6ヵ月までの間に最も回復力が高まるといわれており、この時期に適切なリハビリを行うことで、その後の回復に大きな差が生まれます。感覚障害を疑う症状があれば早期にリハビリを行いましょう。
感覚障害のリハビリはいつまで?
感覚障害のリハビリは即時的に効果が得られるものもありますが、基本的には継続して行うことで効果を発揮します。感覚障害は発症から6ヵ月以内が最も回復しますが、その後もリハビリを継続することで機能回復が期待できるからです。
また、リハビリで取り戻した感覚機能を維持するためにもリハビリは必要です。無理せず継続できるようなリハビリを続けることが望ましいです。
まとめ|感覚障害に対するリハビリアプローチ|下肢へのリハビリ
もし、足(下肢)に感覚の問題が起こると、足がうまく感じられなくなり、歩くのが難しくなったり、足がしびれたり痛くなったりすることがあります。これらの症状は、日常生活に大きな影響を与えてしまいます。
感覚の問題は、人によって症状の重さや出てくる症状が違います。それは、症状の程度や患者さんの年齢、そして原因となっている病気によって変わるからです。そのため、どうやって回復していくかの過程も一人ひとり異なります。また、足の感覚の問題に対するリハビリは、動きの問題に対するリハビリと比べると、あまり多くの方法がないのが現状です。
でも、あきらめないでください!足の感覚の問題に合った適切なリハビリを行うことで、症状の改善が期待できます。リハビリでは、専門の先生と一緒に、足の感覚を取り戻すための練習やトレーニングをします。これは時間がかかるかもしれませんが、続けることで少しずつ良くなっていきます。
大切なのは、自分の症状に合ったリハビリをあきらめずに続けることです。そうすることで、また元気に歩いたり、好きなことを楽しんだりできるようになる可能性が高まります。一緒にがんばっていきましょう!