日射病と熱中症の違いとは?意外と知らない発症メカニズムと対処法
2024.08.03
日射病と熱中症の違いを知っていますか?「言い回しの違い」「室内にいるかいないか」など、言葉が単に違うと考える方も少なくないでしょう。
しかし、具体的に理解しておくことで、発症メカニズムに対する対処法も変わってきます。加えて、予防も講じることができるでしょう。特に、高齢者の方やリハビリを現在行っている方。自分自身ですぐ対処できないケースもあるかと思います。周囲の人の力も借りながら対策が必要です。
今回は日射病と熱中症の違いについて、対処法や予防法も含めて解説します。適切な処置で暑い夏を乗り切りましょう。
目次
熱中症・日射病の違いとは?熱中症の種類と発症原因や症状
暑い環境で発症しやすい熱中症と日射病ですが、どのように定義されどこに違いがあるのでしょうか。まずは言葉としての違いとメカニズムを理解しましょう。
熱中症とは?発症のメカニズム
熱中症は、気温や湿度の上昇に体温調節が追いつかず、体内に熱がこもることで起こるさまざまな不調の総称です。通常わたしたちの体は、体温が上がると血管を拡張させたり汗をかいたりすることで熱を放散し、体温を一定に保つ働きを備えています。
ところが、高温多湿の環境でうまく熱を逃がせない場合や、過剰に発汗することで多くの水分やミネラルを失う場合では体が正常に機能せず、体調不良を招いてしまうケースも。熱中症による体の不調は多岐にわたるため、症状を観察し適切な処置を施すことが重要です。
日射病とは?発症のメカニズム
では日射病と熱中症の違いはなんでしょうか。実は日射病は熱中症の種類のひとつです。
ですが、とりわけ屋外で強い日差しを受けて体調を崩した場合に「日射病」と呼びます。
長時間直射日光を浴びることで、脱水や電解質バランスの乱れを招き、吐き気や嘔吐・めまいなどを引き起こします。熱痙攣(ねつけいれん)という状態へ発展することもあり、注意が必要です。
日射病と熱中症の違いと熱中症の種類
熱中症と呼ばれる病態にはいくつかの種類があり、日射病もこの中に含まれます。熱中症は屋内で発症することもありますが、屋外で太陽光が原因となるものを日射病と呼びます。
日射病をはじめとした熱中症の種類と原因・症状は以下の通りです。
熱中症の種類 | 発症の原因 | あらわれる症状 |
日射病 | 直射日光を長時間浴びることで大量に発汗し、脱水や電解質バランスの乱れを引き起こす | 吐き気・嘔吐・めまい・顔面蒼白・一過性の失神 |
熱痙攣 | 暑い環境下の活動で大量に発汗し、水分と電解質を失う 多くの場合、塩分補給やストレッチでおさまる | 痛みを伴う筋肉の痙攣 |
熱疲労 | より多くの発汗があり脱水・電解質不足が進む 意識を失うこともあり、病院受診も視野に | 強い口の渇き・倦怠感・めまい・頭痛・吐き気・嘔吐 |
熱射病 | 発汗停止により体温が40℃を超え、各臓器にダメージを来たす 意識障害・昏睡も見られ最も重症度が高い 迷わず救急車を要請する | 熱疲労の症状に加え、40℃以上の高熱・発汗の停止・意識障害・痙攣発作 |
熱中症の症状が見られたら……今すぐ取りたい誰でもできる対処法
熱中症の症状が見られたら、速やかに適切な処置を行うことが大切です。とっさの事態でも少し知識を持っているだけで、人命救助につながることも覚えておきましょう。
症状の度合いを整理しておこう
熱中症は症状の度合いから、熱痙攣・熱疲労・熱射病のほか日射病に分類されます。
軽症とされる熱痙攣では、高温下での作業や激しい運動で大量に発汗することにより、水分やナトリウムの低下を生じます。塩分補給を十分行わない状況で起こりやすく、症状は筋肉痛やこむら返りなど、筋肉の痛みを伴うけいれんが特徴です。
さらに体温上昇や脱水が進むと、熱疲労と呼ばれる状態に移行します。熱疲労では、強い口の渇きや倦怠感・めまい・頭痛・吐き気などの症状も。意識を失うこともあるため、兆候が見られたら直ちに病院を受診しましょう。
熱疲労のまま適切な処置がなされない場合、重症である熱射病へと発展します。体温が40℃を超え、脳や心臓をはじめとした主要な臓器に損傷を来たす危険な病態です。熱疲労で見られる症状に加え、発汗の停止や意識障害・痙攣発作を生じることもあるため、すぐに体を冷やし、迷わず救急車を要請しましょう。
軽度な症状でも即実践すべき対処法
- 体を冷やし安静にする
まずは、風通しの悪い場所や直射日光が当たる場所を避け、日陰になる涼しい場所へ移動しましょう。着用している衣服を緩め、直接肌を濡らしたり濡れタオルを当てたりして体温の上昇を防ぎます。
また保冷剤を使用し、太い静脈が流れる首や脇の下・鼠径部を冷やすのも有効。脳への血流を低下させないよう、足を10cm程度高くした状態で安静にしましょう。
- 意識があれば水分補給を促す
意識があれば口から水分補給を促します。高齢者やリハビリ中の方に対しては意識的に水分補給を促すことが必要です。
その際、真水だけを補給すると血中のナトリウム低下を招くため、塩分を含んだスポーツドリンクなどを摂取することが重要です。スポーツドリンクがすぐ手に入らない場合は、水1Lに対し小さじ1〜2の塩を溶かしたものでも代用可能。
- 救急車を呼び病院へ搬送する
体温が40℃を超え、意識障害や痙攣発作などが見られたら直ちに救急車を呼び、病院へ搬送します。救急車を待っている間も、風を当て体を冷却するなどし応急処置を続けます。
こちらも自ら体を自由に、素早く動かせない高齢者やリハビリ中の方に関しては、体温が上昇し切る前に救急車を呼ぶことも考えるべきです。早め早めの行動が命を守ります。
熱中症にならないために、日頃から取り入れたい予防法
日射病と熱中症の違いを理解したら、熱中症にならないために、今からはじめられる予防法をご紹介します。特に、高齢者やリハビリを行っている方が身近にいる場合は、危険性を理解してしっかりと予防しましょう。
十分な睡眠とバランスのいい食事を摂る
睡眠不足や栄養不足は体温調節機能を低下させ、熱中症・日射病のリスクを高めます。普段から十分な睡眠をとり、ビタミンやミネラル・タンパク質の豊富なバランスのいい食事を心がけるようにしましょう。
ちょっとした体調の不安を押し切って無理をした場合、周囲に迷惑をかけてしまうケースもあります。事前の予防も大切ですが、無理をしない心がけも忘れないでおきましょう。
こまめな水分補給と温度調節を
一度に多くの水分を補給するのではなく、少ない量をこまめに摂取することが大切です。
とくに屋外や暑い環境で作業する場合は、無理をせず適度に休息を取り入れましょう。
また、室内ではエアコンやスポットクーラーを利用し、室温26~28℃・湿度40〜60%を目安に環境を整えるべきです。
他にも、首や手足を露出した、体を締め付けない服装もおすすめです。屋外では、熱を吸収しない白や黄色の服や速乾性のあるポリエステル素材の着用も効果的でしょう。
まとめ|日射病と熱中症の違いについて
今回は、日射病と熱中症の違いについて解説しました。
熱中症は、高温多湿の環境であれば太陽光がなくても発症しますが、日射病は長時間日光にさらされることで発症するという違いがあります。いずれも周囲の気温が上がることで発症するため、体温調節や発汗量に応じた水分・塩分の補給が重要です。
症状が見られたら速やかに適切な処置を行い、重症化を防ぎましょう。日頃から体のコンディションを整え、無理のない生活を送ることも大切です。