脳梗塞の後遺症で怒りっぽい性格に?理解されにくい高次脳機能障害とは
2024.02.05
脳梗塞の後遺症で怒りっぽい性格になってしまうことは少なくありません。脳梗塞は後遺症が残りやすく「怒りっぽい」「イライラしてる」など性格の変化を引き起こすこともあります。
これは脳の機能が障害されたことで起こる高次脳機能障害が原因の症状です。今まで優しかった人が脳梗塞後の後遺症で急に怒りっぽい性格になってしまうと戸惑いますよね。
高次脳機能障害は周りから理解されにくい障害なので仕事や家庭生活で大きな影響がでてしまいます。高次脳機能障害を理解して、症状に応じた対応ができるように考えていきましょう。
目次
【脳梗塞】目に見えない後遺症で怒りっぽいなど性格の変化も
「脳梗塞後に怒りっぽい性格になった気がする」「後遺症で性格が変化することはあるの?」
家族が脳梗塞後に性格が変わっていたら困惑しますよね。まずは脳梗塞後に起こる性格の変化について解説します。
脳梗塞発症後に性格が変わるって本当?
脳梗塞とは何らかの原因で脳の血管が詰まり血液が運ばれなくなり、脳が壊死してしまう病気です。人間の脳は「言語を理解する」「手足を動かす」「感情のコントロールをする」など様々な機能を持っています。
脳梗塞が起こる部位によって症状は異なりますが、後遺症が残ることも多いです。手足の麻痺などの「運動障害」や言葉が話しづらくなる「言語障害」の他に怒りっぽくなるなど性格の変化を引き起こす「高次脳機能障害」が後遺症としてあげられます。
脳梗塞の後遺症には2種類
脳梗塞の後遺症は人によって様々ですが、大きくわけると「目に見える障害」と「目にみえない障害」があります。
【目にみえる障害】
運動麻痺
感覚麻痺
排泄障害
嚥下障害
構音障害
【目に見えない障害】
高次機能障害
認知症・うつ病などの精神症状
高次脳機能障害や精神症状は見た目でわかりにくいため、理解されにくく家族の負担にもなりやすい症状です。脳梗塞後に急に怒りっぽい性格になったり、落ち込みやすくなるのは脳の障害が原因なのです。
脳梗塞の見えない後遺症
脳梗塞後の性格の変化は「高次脳機能障害」とよばれる後遺症の可能性が高いです。もともと穏やかだった人が怒りっぽい人になったり、趣味など精力的に活動して人が無気力になったりすることもあります。
妄想的な言動や、攻撃的な発言で周囲を戸惑わせてしまうことも少なくありません。感情のコントロールができないということが障害と理解されにくく、障害があることに気づくまでに時間がかかってしまう傾向があります。
本人も気づかない…脳梗塞の後遺症で起こる高次脳機能障害
脳梗塞の後遺症で怒りっぽいなど性格の変化があったとしても、本人は自分の性格が変化したことを認識できないことがほとんどです。怒りたくて怒っているわけではなく、脳の障害で柔軟に対処するのが難しいのです。
高次脳機能障害の4つの症状
高次脳機能障害の主な症状は以下の4つです。
・記憶障害
新しい情報を取り入れたり、思い出すのが困難。
<例>
約束を忘れてしまう
同じことを何度も話す
・注意障害
必要な情報に注意を向けたり、持続して注意力を保つのが困難
<例>
ボーっとしてる
周囲の人に気づかない
・遂行機能障害
段取りよく物事を行うことが困難
<例>
お金を計画的に使えない
急な変更に対応できない
・社会的行動障害
意欲や感情のコントロールが困難
<例>
イライラして怒りっぽい
欲求を我慢できない
怒りっぽい…は社会的行動障害の一種
「怒りっぽい」は高次脳機能障害のうちの社会的行動障害の一種です。社会的行動障害は「相手の気持ちが理解できない」「感情がコントロールできない」ことが原因で社会に適応するのが難しい状況のことです。
社会的行動障害は脳の前頭前野と関連が深いと考えられています。前頭前野は人の認知や行動に関わる部分で、考える、記憶する、感情をコントロールするなどの機能を担っています。
脳梗塞により、前頭前野に損傷が及ぶことで認知や行動をコントロールすることができなくなり社会的行動障害につながります。
家族が怒りっぽくなった時の対処法
脳梗塞の後遺症で家族が怒りっぽい性格になったら以下のことに注意しましょう。
・本人の意思や役割を尊重する
・周囲が症状について理解する
怒ったり不機嫌になるときは何か納得いかないことがあり、それが何かは人や状況によって異なります。どうして怒ってしまったのか、何をしている時に怒ったのかなどを知る事が大切です。本人の意思を聞いた上で怒りにくい環境を作ったり、リラックスできるように気分転換を用意しましょう。
脳梗塞の見えない後遺症への理解を…家族が怒りっぽいと感じたら
高次脳機能障害は、外見上あまり目立たず障害があることを本人や周囲の人が気づくまで時間がかかることも多いです。脳梗塞発症から時間がたっていても、今までできていたことができなかったり、困難を感じたら主治医に相談しましょう。
見えない後遺症は理解されにくい
私たちの脳は記憶、学習、思考など人間だけが持つ高度な機能を持っています。高次脳機能障害は、脳梗塞の後遺症などでこの高度な機能が正常に働かなくなり、社会生活に支障をきたしてしまう病気です。
外見から判断しにくく本人も気づきにくいので、周囲から理解されずトラブルに発展することも少なくありません。また高次脳機能障害を発症することで本人の生きがいが損なわれることもあります。周囲が病気を理解し、本人の意思や役割を慎重に確認する取り組みが大切になります。
専門家に頼ることも視野に
病気のせいだと分かっていても、今まで優しかった人の急な性格の変化に対応するのは家族としては心苦しいことも多いと思います。
家族だけで抱えきれない場合は専門家に頼る事も大切です。例えば理学療法士による訪問リハビリであれば、家の環境や実際の生活リズムを参考に今後の生活に関して具体的な支援も可能です。入院中のリハビリとは違い、在宅リハビリはより生活に適応したリハビリを受けることができます。
家族にとっても本人にとっても良い生活ができるように主治医や専門家に相談してみることも考えてみてください。
まとめ|脳梗塞の後遺症で怒りっぽい性格に…
脳梗塞の後遺症で怒りっぽい性格になってしまうケースは少なくありません。また脳梗塞後すぐには後遺症が見られない場合も多く、社会復帰してから「怒りっぽい」「忘れやすい」「以前できていたことができなくなっている」と気づくこともあります。
環境が複雑になってはじめて病気に気づくこともあるので、本人や周囲の人も戸惑ってしまいがちです。本人は怒りたくて怒ってるわけでなく、脳梗塞の後遺症として感情がコントロールできず怒りっぽい性格になってしまったことを周囲が理解する必要があります。
病気を正しく理解して、本人の意思や役割を尊重しましょう。また、家族の負担を減らすためにも専門家などに頼ることも視野にいれてみましょう。