肩の痛み脳梗塞後の辛さでお悩みの方へ|原因・治療・自主トレ方法を紹介
2024.12.25
「日常生活のちょっとした動作で肩が痛い」という脳梗塞後の合併症を抱える人が多くいます。肩に痛みがあると、リハビリが思うように進まなかったり、日常生活に支障をきたすなど様々な問題が考えられます。
肩の痛みに関しては、専門家によるリハビリとあわせて、自主トレができると効果的です。今回は、「肩の痛み脳梗塞」と調べられているほど脳梗塞後に生じやすい、肩の痛みに関する原因や状態を解説していきます。
また具体的な治療法を理解して、日々の生活を妨げないような痛みの回復を目指しましょう。
目次
肩の痛みは脳梗塞後に起こる?原因・症状と亜脱臼の可能性を解説
肩の痛みが脳梗塞後に起こる人は多くいます。脳梗塞というと半身の運動麻痺をイメージする人が多いと思いますが、肩の痛みのせいで生活に支障をきたし悩む人も。
なぜ肩の痛みに脳梗塞が関係するのか深堀していきましょう。
麻痺が原因で起こる
肩の痛みは脳梗塞の運動麻痺が原因になります。運動麻痺によって肩周りの筋力が弱くなったりすると、関節に負担がかかり、痛みにつながるのです。
<肩の痛みと脳梗塞運動麻痺の関係>
- 運動麻痺によって腱板(インナーマッスル)の筋力低下が起こる
- インナーマッスルの筋力低下により関節が不安定になる(関節を支える力が弱くなる)
- 関節が不安定になると、関節の内部や周りに負担がかかり痛みにつながる
肩関節が不安定な状態で日常生活を送ると、負担が重なり、炎症を起こしてしまいます。肩の痛みを起こさないよう、脳梗塞後は麻痺した肩に負担をかけないように配慮しましょう。
脳梗塞後に起こる肩の痛みの症状
脳梗塞後に起きる肩の痛みは、二つに分けられます。安静時の痛みと運動時の痛みに分けられ、それぞれ特徴があります。
<安静時に生じる肩の痛み>
- 夜寝ているときに、肩がうずくように痛い
- 日中、肩周りが重だるい
<運動時に生じる肩の痛み>
- 日常生活での痛み(服の着脱、食事、入浴動作)
- 肩の中が引っかかるような痛み
肩の痛みは様々な症状が出現します。放置しても治らない症状もあるので、長引く痛みは医師に相談しましょう。
約30%に肩の亜脱臼が起こる
脳梗塞を発症すると約30%の人に亜脱臼が起こります。肩の亜脱臼は脳梗塞の弛緩性麻痺が原因となり、やがて痛みにつながります。
「肩の関節に異常な隙間がある」、「腕がぶらんとなって力が入らない」といった症状があれば肩が亜脱臼している可能性があります。
無理に動かすと肩の痛みにつながるため、亜脱臼のような症状があれば専門家に相談してください。
肩の痛み脳梗塞にはどの診療科でどんな治療を受けると治るのか
肩の痛みが脳梗塞後に起きたら、必ず治療を受けるようにしましょう。「安静にしてれば治る」と油断していれば、病状が悪化する恐れがあります。
肩の痛みに対する治療について解説します。
整形外科を受診する
肩の痛みが脳梗塞後に起きたら、整形外科を受診しましょう。脳梗塞自体は神経内科や脳神経外科の医師が治療するため、肩の治療は専門外です。
主治医に相談すれば、整形外科あての紹介状を作成してくれるので、他院でもスムーズに診察してもらうことができます。
肩の痛みに悩んだら、主治医に必ず相談しましょう。
手術や薬での治療が行われる
肩の痛みに対する治療は、その原因や重症度によって異なります。軽度の場合は簡単な治療で済みますが、重症化すると手術を行うこともあるでしょう。
<肩の痛みに対する治療>
- 薬物療法(痛み止めなどの内服薬、湿布)
- 注射療法(ヒアルロン酸、キシロカイン、ステロイド)
- 手術療法(関節鏡を用いた手術)
始めは薬物療法と注射療法を併用します。しばらく経過を観察して、治療を継続したり、治療内容を変えていくのが一般的な流れになります。
肩の痛みにはリハビリも効果的
肩の痛みに対して、リハビリも効果的です。医師による薬物療法、注射療法とリハビリを併用することで効果を最大限に発揮させます。
<主なリハビリの内容>
- 関節可動域の拡大(マッサージやストレッチ)
- 筋力強化運動(自重トレーニングやセラバンドトレーニング)
- 姿勢改善
- 神経筋再教育(正しい筋肉の使い方を再学習する)
肩の痛みといっても原因は様々です。リハビリの専門家が状態を細かく評価して、最適のリハビリを提供してくれます。
自宅でラクに過ごすために|肩の痛み脳梗塞を緩和する3つの方法
肩の痛みを抱えたままでは、生活に支障をきたし、生活の質が下がります。そんな時、自分でリハビリをするのも効果的です。
肩の痛みで悩む脳梗塞の方におすすめの方法を説明します。
ポジショニングをする
自宅で楽に過ごすために、肩のポジショニングに気を付けましょう。特に、就寝時に意識する必要があります。
<就寝時の肩のポジショニング>
- 上腕の下にクッションを置いて、腕と身体が平行になるようにする
- 身体の上にクッションを置き、痛めてる側の腕で抱きかかえるような形で寝る。
ポイントは、身体に対して、腕が下がらないようにするところです。寝返りする時もクッションを抱えたまま動くと肩に負担をかけずにすみます。
関節可動域訓練をする
肩の痛みを解消するために、関節可動域を広げる体操を行いましょう。脳梗塞後は筋肉が固まりやすく、毎日体操する必要があります。
<関節可動域訓練の方法>
- 仰向けに寝た位置で両手を組みバンザイする。
- 両手で台ふきをする(正面、斜め方向に行う)
脳梗塞後は異常な筋肉の緊張を伴う人もいるので、麻痺してない手で上手に誘導するのがポイントです。痛みがでない範囲で行いましょう。
肩周辺の筋力トレーニングをする
肩周りの筋力が弱い事も痛みにつながってしまいます。自宅で筋力トレーニングを行い、筋力低下を改善しましょう。
<肩周りの筋力トレーニング>
- 両手を伸ばした状態で壁を押す(ボールを押すでもOK)
- 四つ這いの状態で手に体重をかける(左右交互に)
- 座った状態で両手にタオルを持ちバンザイする
肩周りの筋力トレーニングは自分の体重を使った自重トレーニングを行いましょう。軽く疲れを感じる強度で行ってください。
まとめ|肩の痛み脳梗塞は原因あるの?
肩の痛みが脳梗塞の後によく起こる理由は、脳梗塞で生じる運動麻痺と深く関係していると考えられています。
脳梗塞とは、脳の血管がつまって血液が届かなくなり、脳の一部がうまく働かなくなる病気のことです。この影響で体の一部が思うように動かせなくなり、これを運動麻痺と呼びます。運動麻痺になると、筋肉が弱くなり、十分に動かせなくなるため、肩の筋肉や関節にも悪い影響が出てしまうのです。
では、なぜ筋肉が弱くなると肩に痛みが出るのでしょうか?その理由のひとつとして、肩関節を安定させる筋肉(インナーマッスル)や腱板(けんばん)と呼ばれる部分が十分に働かなくなることがあげられます。
- 運動麻痺によって腱板(インナーマッスル)の筋力が低下する
インナーマッスルとは、肩の関節を内側からしっかり支える大切な筋肉群です。脳梗塞後に動かせない時間が長く続くと、これらの筋肉が弱くなります。 - インナーマッスルの筋力低下で関節が不安定になる
本来ならインナーマッスルが関節を正しい位置に保ち、スムーズに動かせるよう手助けしています。しかし、これらが弱くなると、肩関節は支えが足りず、ぐらぐらした状態になります。 - 関節が不安定になると負担が増え、痛みにつながる
不安定な関節は、動かすたびに余分な力がかかってしまい、肩周りの組織が傷つきやすくなります。その結果、関節内部や周囲が痛みを感じやすくなるのです。
上記のような仕組みが、脳梗塞後に肩が痛くなりやすい理由の一例といえます。
もちろん、原因は他にもあるかもしれません。そのため、専門家や主治医に相談して、しっかり診察してもらうことが大切です。また、痛みに応じた適切なリハビリ方法は人によって異なります。痛みを感じる場合は、その都度リハビリの先生や主治医と相談しながら、続けやすい方法を見つけていきましょう。