脳梗塞の後遺症における痛みやしびれにはマッサージは有効か?
2024.08.22
脳梗塞の後遺症によって手や足に痛みやしびれが出ることがありますが、マッサージはその症状を和らげるために役立つ方法の一つです。脳梗塞後にしびれを感じることがありますが、この「しびれ」は見た目では分かりにくいため、周りの人に理解してもらうのが難しい場合もあります。それでも、しびれによって体の動きがぎこちなくなり、普段の生活にも支障が出てしまうことがよくあります。
こういった場合、マッサージを行うことで痛みやしびれが軽減され、少しでも楽になることがあります。マッサージは血流を良くし、筋肉をほぐすことで、症状を和らげる効果が期待できるからです。
今回は、脳梗塞の後遺症によるしびれで困っている方に向けて、マッサージの効果や注意点について詳しくお伝えします。また、マッサージ以外にもどのような治療法があるのかも合わせてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
脳梗塞の後遺症のしびれの原因や症状は?マッサージ前に確認
しびれと一言で言っても症状や原因はさまざまです。脳梗塞の後遺症におけるしびれの原因や症状をマッサージを実践する前に確認しておきましょう。
脳梗塞の後遺症でみられるしびれ
脳梗塞の後遺症でみられる「しびれ」は脳や末梢神経(まっしょうしんけい)から感覚神経が通る部分が障害されることで起こります。障害された脳と逆側の手足にしびれが起きるのが特徴です。
また、脳梗塞によって運動麻痺や感覚麻痺が出現した場合、姿勢が崩れ筋肉の不均等や骨の歪みを生じます。そのため、血管や神経が圧迫されしびれを引き起こす原因になります。
しびれはこんな症状
しびれはよく「ピリピリ」「ジンジン」「ビリビリ」などと表現されます。脳梗塞の後遺症によるしびれは急に激しくビリビリとしたしびれが現れるのではなく、徐々に感覚の麻痺やしびれが起きるのが特徴です。
脳梗塞の後遺症でしびれが出る場合、運動麻痺と感覚麻痺の2種類に分けられます。
- 運動麻痺…脳から身体を動かす命令を伝える運動神経の経路に障害が起こり、手足に力が入りにくくなる
- 感覚麻痺…手足の感覚を脳に伝える感覚経路に障害が起こり、感覚が鈍くなり、温度や痛みを感じにくくなる。
脳の障害された部分によってどちらかのみ、あるいは両方を発生することもあります。
さまざまな種類のしびれ
しびれの程度や種類は多岐に渡ります。代表的なしびれの種類は以下の通りです。
- <感覚低下>
感覚が低下し、触れる・動かすといった動作の認識ができなくなる。障害を受けた部位や症状によって程度は異なり、感覚が鈍くなる場合や全く感覚を感じない場合もある。
- <感覚異常>
何もしていないのに、「ジンジン」「ビリビリ」といったしびれを感じること。何かに触れずとも自発的に起こる感覚。
- <錯感覚>
タオルなど刺激のないものに触れただけでも、痛みやヒリヒリ感を感じてしまう状態。触ったものから受ける本来の感覚とは異なった感覚をして認識してしまう。
- <感覚過敏>
本来の感覚よりも過敏に感じてしまう状態。痛みを強く感じる「痛覚過敏」や寒くなるとジンジンした感覚や痛みを感じる「温度覚過敏」、触れただけで痛みを感じる「触覚過敏」などがある。
【脳梗塞の後遺症】しびれに対してマッサージは有効なのか?
脳梗塞の後遺症におけるしびれに対してマッサージがどのような効果をもたらすのかみていきましょう。また、マッサージを行う時の注意点も確認しておきましょう。
しびれにおけるマッサージの効果
しびれや痛みがある部位は動きが少なくなるため、筋肉が硬くなり、関節の負担が大きくなり痛みを伴うこともあります。
マッサージによって筋肉をほぐし、神経の圧迫を改善させることで筋肉の緊張の緩和が可能です。また、マッサージをすることで血流促進や疼痛の緩和効果も期待できます。さらに、身体の循環機能の回復だけでなく、人と触れ合うことで患者さんのリラクゼーション効果も期待できます。
実際効果があった足浴後のマッサージ
脳卒中の後遺症としてい痛みを伴うしびれがある患者さんに足浴後にマッサージを行ったらどんな効果があるかの研究例があります。
痛みやしびれの後遺症がある患者さん20名に対して、40~41度のお湯に下腿を10分間浸けたのち、15分間の下腿(ひざから足首までの部分)マッサージを行いました。実験の結果、足浴後マッサージ前に比べて痛みやしびれが低下したと全員が回答したのです。
また、血圧や心拍数の低下も見られたため、リラクゼーション効果ももたらしていることがわかりました。よってマッサージは脳卒中後の痛みやしびれを軽減し、リラクゼーション効果も期待できる安全なケアの1つであるといえます。
参考:J-stage「脳卒中後遺症としての痛みやしびれに対する足浴後マッサージの効果」
マッサージが逆効果になることもある?
脳梗塞後のしびれに対する血行促進や症状の軽減にマッサージは効果的ですが、患者さんの状態によっては注意が必要です。
脳梗塞直後は血管の状態によっては血栓ができやすくなったり、出血リスクが高まったりすることもあります。マッサージによって血行が促進されるとリスクが高まる危険性があります。
また、感覚障害や知覚障害も出現している場合、異常感覚に気づきにくく過度な刺激をうけることもあります。適切なマッサージを行わないと状態が悪化することもあり危険です。
脳梗塞患者に対するマッサージは必ず個々の状態を確認した上で専門家の指示に従って行いましょう。
脳梗塞の後遺症におけるしびれの治療|マッサージ以外にできること
脳梗塞の後遺症であるしびれに対する治療にどのようなものがあるか気になるかと思います。脳梗塞後遺症の痛みやしびれに対する代表的な治療法をご紹介します。
投薬や外科的治療が必要な場合も
脳梗塞後の痛みやしびれに対する治療は主にリハビリ・投薬・手術の3つです。
- リハビリ…手足の機能改善のための運動療法や電気治療など患者さんの症状に合わせたトレーニングを行います。
- 薬物治療…症状を緩和するために鎮痛剤や漢方薬の他に、しびれによって気分が落ち込みやすくなっている場合は抗うつ剤を使用します。
- 外科的治療…痛みやしびれが強い場合は、身体に痛みを緩和させる電気刺激装置を埋め込む手術を行います。
しびれの原因を突き止める
脳梗塞後に起きるしびれの原因はさまざまです。脳の神経の損傷が原因なのか、姿勢不良による神経の圧迫が原因なのかによっても治療法は変わってきます。
痛みやしびれの根治的治療を行うためには原因を突き止めることが重要です。また、急に痛みやしびれが出現した場合は脳梗塞の再発の可能性もあります。いつもと違う症状がでたら早急に医療機関を受診しましょう。
まとめ|脳梗塞の後遺症|しびれに対するマッサージの有効性
脳梗塞の後遺症として起こるしびれや痛みを和らげるために、マッサージはとても効果的です。マッサージをすることで血の流れが良くなり、痛みが軽くなることがあります。脳梗塞後にしびれや痛みがあると、日常生活が不便になるだけでなく、気分が沈んでしまう人も多いです。
マッサージにはリラックス効果もあり、毎日のケアとして取り入れるのが簡単です。また、誰かに触れてもらうことで、心が落ち着く効果も期待できます。
患者さんの体調に合わせて、理学療法士のアドバイスを受けながら、適切なマッサージを毎日のケアに取り入れてみましょう。これにより、身体だけでなく心も少しずつ楽になるかもしれません。