NEXTSTEPS リハビリお役立ちコラム 半球間抑制とは?脳卒中後の後遺症にも深く関わる脳のはたらきについて

半球間抑制とは?脳卒中後の後遺症にも深く関わる脳のはたらきについて

半球間抑制とは?脳卒中後の後遺症にも深く関わる脳のはたらきについて

半球間抑制とは左右の脳が互いに抑制し合う、脳の神経現象の1つです。健常な脳の場合は一方ばかりが働かないよう左右の脳が調整しあうことで、両手足を同じくらい自由に動かすことができています。

しかし、脳卒中などで片側の脳に損傷が起きた場合、この半球間抑制のバランスが崩れてしまいまい、麻痺側の上下肢の改善を妨げる一因にもなります。

半球間抑制という現象をあまり聞きなれない方も多いのではないでしょうか。しかし、脳卒中後の麻痺症状の改善などに深く関わっている脳のメカニズムなので、ぜひ知っておきましょう。

半球間抑制のメカニズム|脳卒中後の麻痺と大きく関係する理由

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半球間抑制は両側の大脳半球が協調的に働くための大事な脳のメカニズムです。まずは半球間抑制がどのような働きをするのか、脳卒中などで脳に損傷が起きた場合どのような影響があるのかみていきましょう。

半球間抑制とは

左右の大脳は脳梁と呼ばれる情報の道でつながっています。運動機能や感覚機能を司る脳領域はそれぞれの大脳半球の反対側に位置し、脳梁を通じて情報のやりとりを行っています。

片方の大脳からもう一方の大脳へ送りだす情報は、神経細胞を活性化することはわかっていましたが、なぜか片方の大脳が活性化すると反対側の大脳では神経細胞の活動が抑制される現象が確認されました。この現象が「半球間抑制」です。

半球間抑制は人間がスムーズに動くことや情報の処理など、行動し考えるための必要不可欠な神経活動であると言われています。

参考:理化学研究所「左右の脳が抑制し合う神経回路メカニズムを解明」

半球間抑制のメカニズム

人間の身体は、左側からの感覚は右の大脳へ、右からの感覚は左の大脳へと伝えられます。そのため、脳卒中などで右脳に損傷がおきた場合、左側に麻痺や障害が出ます。

半球間抑制は、左右の情報の処理や運動出力を円滑に行うために、それそれが抑制し合う現象です。右脳が活性化すると左脳を抑制し、左脳が活性化すると右脳が抑制されます。このようにお互いを抑制して強調し合いながら適切な出力調整を行っているのです。

脳卒中後にうける影響

健常な脳では、お互いに一方ばかりが働かないように左右の調整を行うことで、両手足を同じくらい自由に動かすことができます。しかし、脳卒中などで右の脳を損傷した場合、左側の脳に対する抑制が減少してしまい、過活動を起こします。さらに過活動状態になった左脳は強く右の脳を抑制していまいます。

右脳は脳を損傷した上に抑制され脳の活動を抑えられてしまうのです。このように左右のバランスがとれなくなることで左上下肢は動かしにくい上に、回復も遅れてしまうという現象が起きてしまいます。

半球間抑制のバランスが崩れるとどうなる?改善を妨げる危険とは

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脳卒中などで片側の脳に損傷が起きたことで、半球間抑制のバランスが崩れてしまいます。半球間抑制のバランスが起きたことで、身体にどんな影響が起きるのか具体的にみていきましょう。

麻痺の改善を妨げる要因に

脳損傷で半球間抑制のバランスが崩れると、麻痺側の脳の働きを抑制してしまい、症状の改善に悪影響を与えてしまいます。

脳卒中などで、片側の脳に損傷が起きると反対側の上下肢に麻痺などの症状が出現します。麻痺の影響で手足が動かしにくいことに加えて、非麻痺側の手足を頑張って使ってしまうことでさらに障害を受けた側の脳の働きが抑制されてしまうのです。

急性期や回復期からこのような状況になると、脳が回復しようとする働きを阻害してしまう可能性が高くなります。

学習性不使用の危険性

「学習性不使用」とは、麻痺側の手足を使用しない状態が長時間続くことで、麻痺側の手足を使用しないことが定着し、使用しないことを学んでしまう現象です。

脳卒中の後遺症により、麻痺側の使用頻度が少なくなるうえに、半球間抑制のバランスが崩れてさらに脳のはたらきが抑制されている状態が続くと学習性不使用の状態になりやすくなります。

麻痺側の上下肢を使わないことで筋力低下が起こるだけでなく、運動機能を司る神経ネットワークが減少してしまい、機能低下をより進めてしまう可能性もあります。

半球間抑制の不均衡を改善|リハビリと日常生活でできること

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半球間抑制のバランスが崩れてしまうと、機能回復を妨げてしまう可能性が高いので半球間抑制の不均衡を改善する必要があります。そのためには適切なリハビリと日常生活での意識が大切です。具体的なリハビリ方法や日常生活でできることをご紹介します。

麻痺側を使用するCI療法

「CI療法」とは麻痺側だけを使い、非麻痺側は使用しない治療法です。非麻痺側の手を三角巾やミットなどで制限し、集中的に麻痺側上肢の使用を促し、機能回復を目指します。脳卒中ガイドラインでも麻痺側の上肢機能の改善が期待できる治療法として推奨されています。

また、CI療法により脳の活性化を認めることが明らかになっています。脳卒中後遺症の麻痺により、使用頻度が少なくなる麻痺側を積極的に使うことが機能回復において重要とされています。

参考:J-stage「脳卒中片麻痺患者に対するCI療法の現状と課題」

両側性のトレーニング

これまでは上肢麻痺のリハビリにはCI療法のような麻痺側のリハビリが集中的に行われてきましたが、近年、非麻痺側のみを含めた両手で行う両側性のリハビリも注目されています。

海外の研究では麻痺側のみのトレーニングを行ったグループよりも非麻痺側も含めた両手でトレーニングを行ったグループの方が麻痺側の手の運動機能が向上したと報告されています。

これは人間が持っている神経活動に由来していると考えられており、もともと人間は片手で作業を行うよりも両手を使った作業の方が圧倒的に多いので、両手を用いることで活動を始める神経経路が備わっているためです。

参考:BilateralArmTrainingvsUnilateralArmTrainingforSeverelyAffectedPatientsWithStroke:ExploratorySingle-BlindedRandomizedControlledTrial.Renner,2020

日常生活でできること

脳卒中後の麻痺側の上肢リハビリとして、目的を持った動作の繰り返し練習や、両上肢の繰り返し運動が推奨されています。日常生活において取り入れやすい動作を紹介しますので意識して行ってみましょう。

  • 両手で洗濯物をたたむ
  • 麻痺側の足に体重をかけて立つ
  • 非麻痺側の手で麻痺側の手足を擦る
  • 両手を使って手を洗う

どうしても動きづらい麻痺側ではなく非麻痺側を使ってしまいがちですが、補足的に麻痺側を使ってみたり、両手でひとつのものを持ってみたりなど意識することが大切です。

まとめ|半球間抑制について

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半球間抑制とは、左右の大脳がお互いにバランスを取りながら働くために、互いに抑制し合う脳の機能です。この機能は、人間が日常生活をスムーズに送るためにとても重要なものです。しかし、脳卒中などで脳がダメージを受けた場合、このバランスが崩れてしまうことがあります。そうなると、失われた機能が回復しにくくなることがあり、リハビリに影響を与えることがあります。

脳卒中で麻痺が起こると、麻痺側の手足をあまり使わなくなることが多く、反対側の手足ばかりを使うようになります。そうすると、脳の半球間抑制が強まり、麻痺側の脳の機能がさらに低下してしまうことがあるのです。

この不均衡を改善するためには、適切なリハビリを受けることがとても重要です。また、日常生活でも、麻痺側の手や足を意識的に使うことや、両手で作業をすることが機能の回復に役立ちます。リハビリを続けることで、少しずつバランスが整い、回復の可能性が広がっていきます。

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