
円背の放置は危険?リハビリでできる姿勢改善方法とは
2025.08.25

背中が丸くなったままの円背は、高齢者に多くみられる姿勢です。「加齢によるものだから仕方がない」と放置すると、どんどん進行して身体にさまざまな影響を及ぼします。
特に、バランス能力や呼吸機能の低下は、骨折や寝たきりのリスクにもつながるため注意が必要です。今回は、円背の改善や予防のためのリハビリ方法の紹介とあわせて、その原因や体・暮らしに及ぼす影響について解説します。
円背の改善は、見た目だけでなく健康寿命にも大きく影響するため、早めの対策が大切です。
目次
円背はどんな姿勢?リハビリ前に知るべき基礎知識

高齢者に多い円背ですが、その姿勢の特徴は単に「背中が丸まっている」だけではありません。曲がった背中は全身に影響を及ぼします。円背のリハビリ方法を知る前に、その特徴や原因など、基礎知識をおさえておきましょう。
円背の特徴
円背とは、背中が丸くなり、前かがみの姿勢がそのまま固まってしまう状態のことです。特徴として、前傾姿勢をカバーするために全身でバランスをとろうとすることが挙げられます。
例えば、下を向きがちな姿勢で、前方を見るためにあごを突き出すようになる状態です。また、腰が引けて膝が曲がる、すり足歩行になりやすい、といった傾向もみられます。
さらに、背筋や腹筋の衰えが進み、疲労感やだるさを感じやすくなることも少なくありません。背骨の曲がりが進行すると、仰向けで寝るのが難しくなる場合もあります。
円背の原因
加齢による筋力低下、骨粗鬆症による変形、長年の姿勢の悪さなどが円背の原因になります。中でも多い原因は、加齢による筋力の低下によるものです。
年齢を重ねると、筋力が落ちて背筋を伸ばした姿勢を維持することが容易ではなくなり、自然と猫背になってしまいます。背中が丸まった状態が続くと、背骨や骨盤がゆがみ、周囲の筋肉も固まって、円背の姿勢が固定されてしまうのです。
亀背や猫背との違いは?
猫背や亀背(きはい)は、円背とほぼ同じ意味として使われる場合が多いですが、違いは以下のように整理できます。
- 円背:背中全体が丸まった状態で、胸の部分の背骨が後ろへ強く曲がったもの
- 猫背:背中が丸まった姿勢全般を指し、日常用語としてよく使われる
- 亀背:背中の一部分(胸椎)が限局的に突き出て丸くなり、亀の甲羅のように部分的に盛り上がる
三者は少しずつ特徴が異なりますが、明確に区別されるものではなく、同義語として用いられることが多いです。
円背にリハビリが必要な3つの理由|体と暮らしに及ぼす影響とは?

背中が丸く固まる円背が進行すると、健康や日常生活に影響を及ぼすケースもあるため、リハビリにより改善させるのが望ましいです。ここでは、円背が及ぼす影響とリハビリの必要性を解説します。
転倒しやすくなる
背中が丸まった姿勢になると、体のバランスを保つために頭が下がる・腰が引ける・膝が曲がるなど、全身の姿勢に影響を及ぼします。
円背やバランスを保つための姿勢は、前のめりやすり足になりやすく、つまずいたり転びやすくなったりするのが特徴です。高齢者を対象とした調査でも、円背傾向のある群は足の筋力が低下しやすく、バランスが悪化し、転倒回数が増加することが報告されています。
転倒は骨折や寝たきりのリスクにもつながるため、姿勢の改善が必要です。
呼吸がしづらくなる
背中が丸まった状態で固定されると、胸の骨格(胸郭)の動きが制限され、肺が圧迫されるため呼吸のしづらさを招きます。
胸郭の動きが制限されると、呼吸筋が弱まり酸素の取り込みや咳の動作も難しくなります。さらに、体中に酸素が行き渡りにくくなると筋肉は十分な酸素を得られず、その働きも落ちてしまうのです。
誤嚥(ごえん)のリスクが高まる
円背では、あごが突き出した姿勢になりやすいのが特徴です。あごが上向きの姿勢だと、食事や飲み物、唾液が食道に送り込まれず、気管に流れやすくなります。その結果、誤嚥性肺炎の発症リスクが高まるのです。
さらに、通常は異物が気管に入ると咳で排出しようとしますが、円背では呼吸筋が弱くなり咳が出にくくなることで誤嚥のリスクが高まります。
円背におすすめのリハビリ|座ったままでできる姿勢改善法

ここでは、円背におすすめのリハビリ方法をご紹介します。どれも椅子に腰をかけたまま取り組めるため、比較的安全に行える方法です。ただし、転倒やケガのリスクはあるため、無理せずできる範囲で行いましょう。
リハビリは自宅でできる?取り組むときの注意点
円背は、バランスの取りづらさや呼吸のしづらさなどの症状があります。安全に行うためには、リハビリの専門家の指導のもと行うのがおすすめです。
痛みや呼吸の苦しさが現れたらすぐに中止し、休息をとる必要があります。症状が改善しなければ、すぐに医療機関を受診しましょう。無理せず、自分のペースで続けることが大切です。
腹筋でインナーマッスルを鍛えよう
背筋の伸びた良い姿勢をキープするには、腹筋を鍛えると効果的です。腹筋強化により、体幹を安定させたり、骨盤の位置を整えやすくなったりするなどの効果があります。腹式呼吸を意識し、常に背筋を伸ばすイメージで行いましょう。
- あごを引き、胸を張った姿勢で椅子に座る
- 両手をおなかに当て息を吸う
- ゆっくり息を吐きながらおなかをへこませる
- 10回くり返す
肩甲骨まわりを鍛えて姿勢改善
肩甲骨周りのトレーニングにより、背筋を伸ばす筋力が鍛えられ、丸まった背中の改善に期待できます。さらに肩甲骨を動かすと胸郭も開き、呼吸がしやすくなります。フェイスタオルを用意して、以下の方法で行いましょう。
- フェイスタオルの端を持ち、両手をまっすぐ上げる
- 肘を後ろに曲げる(タオルが首の後ろにくるまで)
- 肘を伸ばし両手をゆっくり上に戻す
- 10回くり返す
もも裏ストレッチで柔軟性アップ
もも裏が硬くなると骨盤が後方へ下がりやすく、背中が丸くなりやすくなります。もも裏の柔軟性を高め、骨盤の傾きを整えることで姿勢を改善させましょう。
- 椅子に座る
- かかとは床につけ、片足を前に伸ばす
- 伸ばした足の太ももの上に両手を置き、前にゆっくり上体をたおす
- 20秒キープ
まとめ|円背はリハビリで改善可能!正しい姿勢で健康な毎日を

年をとると、「背中が丸くなって、そのまま固まってしまう」ということがあります。これを「円背(えんぱい)」といいます。見た目の姿勢が悪くなるだけでなく、ひどくなると体をしっかり支えられなくなってしまい、寝たきりの原因になることもあるため注意が必要です。
でも、あきらめる必要はありません。正しいリハビリを続けることで、円背は改善する可能性があります。特に早いうちから対策を始めれば、進行を防ぐこともできるのです。
たとえば、ふだんから「自分は姿勢が悪いかも」と感じている人は、毎日少しずつストレッチをする習慣をつけることが大切です。特別な道具は必要なく、家でできる簡単な動きから始めてみましょう。いきなり難しいことをやろうとせず、続けやすい内容から始めることで、リハビリが長続きします。
すでに円背の症状が強く出ている人や、背中の痛み・体のかたさがつらいと感じる人は、理学療法士やリハビリの専門家に相談するのが安心です。その人の体の状態に合わせて、無理のない運動方法を教えてもらえます。
円背を防いだり改善したりするには、正しい姿勢を保つことがとても大切です。ストレッチや軽い運動を習慣にしながら、自分の体を大事にする気持ちを忘れず、健康な毎日を目指していきましょう。