【高齢者向け】廃用症候群から復活へ!自宅でできる運動と悪化を防ぐ生活習慣
2025.12.16
病気やケガでやむを得ず安静な状態が続くと、心身の機能が急激に低下してしまうことがあります。これこそが廃用症候群です。別名「生活不活発病」とも呼ばれ、一度発症すると元の状態に戻ることが難しいとされています 。
しかし、決して諦める必要はありません。
大切なのは、「身体を動かさない期間を可能な限り短くする」こと、そして「適切なリハビリや運動を継続する」ことです 。特に、ご高齢の方や、安静期間が長引いている方は注意が必要です 。
本記事では、廃用症候群からの回復を目指すための専門的なポイントから、ご自宅で無理なく取り組めるセルフケア、そして周囲の方ができる具体的なサポート方法までを徹底的に解説します 。心身の衰えを理解し、症状の悪化を防ぎながら、自立した生活を取り戻す一歩を踏み出しましょう 。
目次
廃用症候群とは?専門知識と全身に広がる危険性

「廃用症候群からの復活は難しい」と言われるのは、単に筋力が落ちるだけでなく、内臓機能を含む全身の機能に悪影響を及ぼすためです 。まずは、その原因と影響を正しく理解しましょう。
廃用症候群の定義と主な原因
廃用症候群とは、病気やケガによる長期安静や活動量の低下が引き金となり、心身のさまざまな機能が低下してしまう状態を指します 。
症状や回復に関する情報は、信頼性の高い健康長寿ネットなどの公的機関の情報も参考にしましょう。
廃用症候群の原因は、大きく以下の2つに分けられます 。
- 長期にわたる安静状態や寝たきり状態
- 病気やケガで筋肉を動かせない期間が続くと、筋力・身体機能が著しく低下し発症リスクが高まります 。
- 高齢者の生活環境による影響(生活不活発)
- ご高齢の方は、活動量の減少や過度な介護などによって、過度な安静状態に至らずとも廃用症候群になる可能性があります 。若年層に比べ身体機能が衰えやすい(可逆性が低い)ため、日頃から意識して身体を動かし、自立した生活を長く続けることが重要です 。
全身に広がる影響:身体機能から精神・内臓まで
身体を動かさない状態が続くと、影響は全身に及びます。
| 身体機能(運動器)への影響 | 精神・内臓機能への影響 |
| 筋萎縮(筋肉がやせて衰える) | 心機能の低下(心臓の働きが悪くなる) |
| 関節拘縮(関節萎縮)(関節の動きが悪くなる) | うつ状態(気分が落ち込む、意欲の低下) |
| 骨萎縮(骨がもろくなる、骨粗鬆症リスク | 逆流性食道炎(胃液の逆流による炎症) |
| 褥瘡(床ずれ)や皮膚障害 | 尿路結石(腎臓などに石ができる) |
| 代謝障害(糖尿病リスクなど) |
特にご高齢の場合、これらの機能低下が進行すると、「歩行ができない」「起き上がれない」といった状態になり、元の状態に戻ることが一層難しくなります。
復活を目指すための3つの専門的なポイント

廃用症候群からの回復を目指すには、ただ動くだけでなく、早期の専門的な介入と心のケア、適切な栄養管理が欠かせません 。
早期のリハビリ開始と「継続」が最重要
身体を動かさない時間が長くなるほど、症状は進行し回復が遅れます 。そのため、廃用症候群の症状が疑われたら、なるべく早くリハビリを始めることが極めて重要です 。
- 専門家の指導: 医師や理学療法士の指導のもとで段階的に身体機能を回復させることで、機能改善が期待できます 。
- 機能の定着: 早期のリハビリで筋力低下を最小限に抑えた後も、回復した機能を定着させ、日常生活動作の維持・改善を図るためには継続的なリハビリが必要不可欠です 。
心のケアと社会とのつながりを維持する
廃用症候群は、身体機能の低下だけでなく、精神的な落ち込み(うつ状態)を引き起こしやすいのも特徴です 。運動と並行して心のケアも欠かせません 。
- 運動による効果: 散歩や体操など適度な運動は、気分転換につながり、精神的な安定に役立ちます 。
- 社会交流の確保: 毎日同じことの繰り返しや孤独な状態は、モチベーションの低下、ひいては認知機能の低下を引き起こす危険性があります 。デイサービスや趣味の集まりなど、人との交流の機会を持つことが精神的な健康を保つ鍵となります 。
栄養管理:「低栄養状態」を防ぎ回復を後押し
運動やリハビリの効果を最大限に引き出すためには、栄養管理が土台として重要になります 。
- 低栄養状態のリスク: ご高齢の方は、食欲不振や咀嚼(そしゃく)嚥下(えんげ)機能の低下などにより、十分な栄養が不足する「低栄養状態」に陥りやすいとされています 。
- 必要な栄養: 筋肉の回復に必要なタンパク質を中心に、バランスの良い食事を摂ることが必要です 。
- 食事環境の整備: 食事が摂りにくい場合は、入れ歯の調整、食べやすいように食材を刻むなどの工夫を行いましょう 。また、「誰かと一緒に食べる」ことは、食欲増進や心の活性化にも効果的です 。
自宅でできる!悪化を防ぐセルフケアと運動習慣

タイトルにもある通り、自宅で安全に取り組めるセルフケアと、悪化を防ぐための環境整備が回復への近道です。
自宅で無理なくできる「運動化」のヒント
本格的なリハビリが難しい場合でも、日々の生活を「運動」に変える工夫が有効です。運動する際は、痛みを感じないよう、無理のない範囲でゆっくり行うのが鉄則です。
| 状態別 運動のヒント | 具体的な行動例 |
| 寝たきりの方 | 褥瘡(床ずれ)予防のため、ベッドの上で身体の向きを定期的に変える。可能であれば、ベッドから身体を起こして座る姿勢をとる。 |
| 座れる方 | 椅子に座ったまま足踏みを行う。椅子に座って足首を回したり、足をゆっくり曲げ伸ばししたりする。 |
| 日常生活の運動化 | 意識して立つ時間を増やす。近所への買い物は歩いて行く。エレベーターを使わず階段を利用する。料理や洗濯などの家事を積極的に行う 。 |
転倒を防ぐ「安全な環境整備」
廃用症候群からの回復期は、筋力やバランス能力が十分でないため、転倒による新たなケガ(骨折など)のリスクが高まります 。ケガは回復を大きく阻害するため、安全な環境を整えることは「悪化を防ぐ生活習慣」の最優先事項です 。
- 自宅内の整備: 廊下や階段に手すりや滑り止めを設置する 。つまずきの原因となる電気コードや敷物を整理する 。
- 専門家への相談: 自宅環境の整え方が分からない場合は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、適切なアドバイスを受けることを強く推奨します 。福祉用具のレンタルや住宅改修の助言を得られます。
FAQ:廃用症候群からの回復に関するよくある質問

Q:廃用症候群から完全に元の状態に復活できますか?
A: 適切なリハビリの早期介入と生活習慣の見直し、運動・リハビリの継続を行えば、機能改善は十分に期待できます 。特に、医師や理学療法士の指導のもとで段階的に身体機能の回復を目指すことが鍵となります 。完全に病気前の状態に戻るのが難しいケースもありますが、自立した生活を取り戻すことを目標に取り組むことが重要です。
Q:改善にはどのくらいの期間がかかりますか?
A: 個人差が非常に大きいですが、一般的に軽度であれば1〜3ヶ月、症状が進行している場合は半年以上かけて改善していくケースが多く見られます 。大切なのは、期間を焦らず「毎日少しでも身体を動かして継続すること」です。
Q:家族ができる最も重要なサポートは何ですか?
A: 家族のサポートは、特にメンタル面の維持において継続の鍵となります。
- 過度に手を貸しすぎないこと :できないことすべてに手を出してしまうと、本人の残された機能や意欲を低下させてしまいます。見守りつつ、自分でできることはやってもらう姿勢が大切です。
- ポジティブな評価 :小さな進歩でも「できたこと」を褒め、モチベーションの維持をサポートしましょう。
- 習慣化のサポート :毎日の運動やリハビリを一緒に習慣化し、孤独感を減らします。
まとめ:小さな積み重ねが「復活」の力になる

廃用症候群は、心身の機能を低下させますが、適切なケアとリハビリによって回復を目指せる可能性があります。
動ける状態にある方は、買い物や家事、料理、洗濯など、日常生活の動作を「リハビリ」と捉え、活動量を増やしていきましょう。起き上がるのが難しい方でも、ベッドの上で身体の向きを変える、上半身を起こすといった小さな行動が、予防と回復の第一歩になります。
ご本人だけでなく、ご家族や周囲の方が適切な知識を持ち、過剰ではない必要なサポートを行うことで、廃用症候群からの復活と、自立した生活の再獲得を実現できるでしょう。









