
【高齢者向け】機能訓練とは何?リハビリとの違いや利用できる他のサービスとは
2025.04.07

心身機能を回復させようと思った時に、リハビリまたは機能訓練を受けるべきかで悩む方が多いです。機能訓練とリハビリは目的が異なるため、違いを知らないと思ったような効果が出ないかもしれません。
ここでは、高齢者向けの機能訓練とは何か、リハビリとの違いを交えてご紹介します。機能訓練で行われる内容や実施形態も知っておくと、見通しを立てて利用できるでしょう。
正しい知識を持って選択できると、心身の機能を維持・向上させて、生活を保てるようになります。
目次
機能訓練とは何か|受けられる場所とリハビリとの違いを解説

加齢や病気により、体が思うように動かなくなったら、リハビリを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、リハビリと同じような言葉で「機能訓練」があり、この2つには違いがあります。サービスを受ける前に、機能訓練とは何かを知っておきましょう。
機能訓練の目的
機能訓練の目的は、現在の体の機能を維持したり、新たな機能低下や怪我の予防です。高齢になってくると、体の機能低下により社会参加が制限されます。社会参加に制限がでると、さらに体の機能が低下したり、認知機能が低下したりする悪循環に陥る可能性があるのです。
機能訓練は、病院を退院した方や施設を退所した方が利用します。病気や怪我などで後遺症があったり、加齢により歩行・立ち上がりの動作が不安定になったりした方が対象です。
機能訓練は介護保険サービスで受けられる
機能訓練は介護保険サービスの一環として行われるため、介護認定を受けた方が利用できます。「要支援」「要介護」の方が対象で、デイサービスで実施されるのが一般的です。
デイサービスは、日帰りで施設に通い、食事・入浴などの介護サービスに加えて、機能訓練も受けられます。訪問看護ステーションによっては、機能訓練を実施している可能性があります。ご自宅で機能訓練を受けたい方は、ケアマネジャーに相談してみましょう。
リハビリとの違いは?
機能訓練とリハビリの大きな違いは、目的と訓練の提供者です。機能訓練の目的は、心身機能の維持であるのに対し、リハビリは病気や怪我の回復を行います。
リハビリは、医師の指示で理学療法士といったリハビリ専門職が実施するのも特徴的です。機能訓練は、必ずしもリハビリ専門職が行うのではなく、看護師や機能訓練指導員が行う場合があります。
介護保険サービスで行われる機能訓練の内容や実施形態とは

機能訓練は心身の機能を維持するのが目的ですが、それを可能にするために、どのような内容で行われるのでしょうか。機能訓練の一般的な内容を知っていると、サービスを受ける時の安心感が増します。集団で行われる可能性についても知っておきましょう。
身体の機能訓練
身体の機能訓練は、立ち上がり・歩行・階段昇降など日常生活に欠かせない動作を維持するのが目的です。年齢を重ねても移動能力が保てるように、以下のような内容で実施されます。
- 筋力トレーニング
- 関節の柔軟性を保つストレッチ・体操
- バランス訓練
- 歩行や階段の上り下りなどの動作練習
また、美味しく食事をしたり、誤嚥性肺炎の予防をしたりして生活の質を保つには、口腔機能の維持も大切です。口腔機能の維持のために、嚥下体操や口腔体操を行います。
認知機能の訓練
加齢とともに脳の細胞が変性し、細胞が少しずつ減ります。そのため、記憶力や判断力などの認知機能が低下するのです。特に、社会参加の機会が少ない方は、脳への刺激が少ないので認知機能が低下しやすいと言われています。
- 計算や漢字の読み書き
- パズル・間違い探しなどの脳トレ
- 日付や曜日、場所を確認する見当識訓練
- 会話をしてコミュニケーションを積極的にとる
このような機能訓練を実施して、認知機能の低下を防ぎます。認知機能が維持できると、自尊心を維持したり、人との関わりを円滑にしたりする効果があるのです。
集団で行われる場合もある
対象の方それぞれで、必要な訓練は異なるため、一人ひとりに合わせた個別訓練が基本です。しかし、施設によっては社会性や人との関わりを目的として、集団での機能訓練が実施されます。
- 体操やリズム運動
- 輪投げやボーリングなどのレクリエーション
- しりとりやクイズなどの脳を使う訓練
個別や集団訓練の希望がある場合は、利用したい施設の実施形態を調べておきましょう。
機能訓練を受ける流れと機能回復のために利用できる他のサービス

機能訓練を受けたい場合は、どのように手続きを進めれば良いのでしょうか。場合によっては、介護認定を受けられず、機能訓練が利用できない方もいらっしゃるかもしれません。心身の機能を維持・向上させるために利用できる他のサービスも知っておきましょう。
機能訓練を受けるための手続き
機能訓練を受けるには、まず介護認定を受ける必要があります。市町村の窓口に、介護認定申請を行いましょう。その後は、認定調査や医師の意見書が作成され、介護認定が決定します。
要支援または要介護の認定を受けたら、ケアマネジャーと介護サービスの利用計画(ケアプラン)を作成します。その後、デイサービスなどで機能訓練のサービスが利用できるようになる流れです。
既に介護認定を受けている方は、担当のケアマネジャーに機能訓練を受けたい旨を相談しましょう。
家で機能回復を目指したい場合
外に出るのが難しい方や自宅でゆっくりと訓練を続けたい場合は、訪問型のサービスも利用可能です。介護サービスで訪問看護を利用している場合、訪問看護の中で機能訓練を行える場合があります。
介護保険で訪問リハビリテーションを受ける場合は、医師の診察が必要です。または、民間の訪問リハビリサービスを利用する方法もあります。
リハビリ専門職による訓練を受けるには
デイサービスや訪問看護で機能訓練を受ける場合、理学療法士の専門職ではない場合があります。リハビリで心身の機能の回復を行いたい場合は、次の3つの方法を検討しましょう。
- 病院で外来リハビリを受ける
- 訪問リハビリテーションを受ける
- 通所リハビリテーション(デイケア)を利用する
- 自費リハビリサービスを利用する
自費リハビリサービスは、保険適用外ですが、利用開始の手続きが簡単でサービスがすぐに受けられます。介護保険での機能訓練を行っている場合も併用ができるので、今の訓練が物足りない場合や心身機能を向上させたい場合に利用してみましょう。
参考:公益財団法人長寿科学振興財団「訪問リハビリテーションとは」
まとめ|機能訓練

「機能訓練」とは、体の動きや働きをよくするために行うリハビリの一種ですが、実は、機能回復に努めるリハビリと、介護保険サービスとして受けられる内容の2つでは少し違いがあります。どちらも体の働きを高めたり、弱った部分をもとに戻したりするという大きな目的は同じですが、具体的な取り組み方や受け方が異なるのです。
例えば、リハビリ病院で受ける機能訓練は、けがや病気のあとなどに専門的な治療として行われることが多いです。一方、介護保険サービスとしての機能訓練は、地域の介護施設やデイサービスで受けることができ、日常生活を続けやすくするためのサポートが中心になります。このように、細かい内容や受け方が違うという点をしっかり理解しておきましょう。
年齢を重ねると、体の機能はどうしても少しずつ低下してしまい、日常生活に不便を感じるようになることがあります。階段の上り下りがつらくなったり、外出するのがおっくうになったりすることもあるでしょう。さらに、病気にかかったあと、体の回復に時間がかかる場合もあります。
こうしたときに役立つのが、「機能訓練」です。自分がどの程度体を動かせるのか、何を目標にしたいのかは人によって違います。だからこそ、今の自分の体の状態を知り、何が必要なのかを明確にすることが大切です。もし機能訓練を受けるなら、まずは主治医に相談し、適切なアプローチを一緒に考えてもらいましょう。自分の状態に合った方法で取り組むことで、体の機能をできるだけ維持したり、回復させたりすることが期待できます。