パーキンソン病のすくみ足とは何か…転倒予防のための歩き方や補助具を紹介
2024.12.02
パーキンソン病になると運動障害が出やすく、日常生活動作が行いにくい方が多いでしょう。歩行は生活の質にも直結するので、維持したい動作です。しかし、パーキンソン病では歩行がスムーズではなくなる、すくみ足の症状が発生する場合があります。
この記事では、パーキンソン病のすくみ足とは何か、症状や原因をご紹介します。すくみ足の症状は、対策を行うと歩行がしやすくなるので、転倒予防となる歩き方を知っておきましょう。
すくみ足の対策に有用な補助具もあります。歩き方の工夫や補助具をうまく活用し、歩行の悩みを改善しましょう。
目次
すくみ足とはどんな症状?なぜパーキンソン病の人に起こるのか
パーキンソン病では、筋肉が強張ったり、動作が遅くなったりする症状がみられます。歩行のしにくさの原因は何なのか、すくみ足とは何かを知っておきましょう。すくみ足の対策をしないと、生活にも影響が出るので、正しい知識を身につけておくのが重要です。
すくみ足の症状
すくみ足とは、歩きたい意思があるにもかかわらず、歩行の動き出しが難しくなる症状です。パーキンソン病の患者さんの約50%以上にみられる症状だといわれています。すくみ足がみられるのは、次の3つの場面です。
- 歩き始め
- 方向転換をするとき
- ドアを通ったり障害物を避けるとき
なぜすくみ足が起こるのか
パーキンソン病の患者さんは、脳の黒質という部分にあるドパミン神経細胞が減少します。ドパミン神経細胞の役割は、運動を調節するドパミンの生成です。ドパミン神経細胞の減少によりドパミンが不足し、動き出しにくくなったり、ふるえたりするなどの症状がみられます。
このような病態によりパーキンソン病では、特に動き始めの動作が難しく、すくみ足がみられるのです。
すくみ足は転倒の原因になる
歩行時の動き出しが難しくなる、すくみ足は転倒の原因となります。動き出しに時間がかかったり、ターンしにくくなったりするためです。パーキンソン病では、動き出しにくい症状のほかに、バランスが取りにくくなります。
そのため、すくみ足によりバランスを崩しても、適切な反応が出にくいため、転倒してしまうのです。転倒により怪我をすると、さらに運動ができなくなり、生活の質が低下する恐れがあります。
すくみ足とはどんな時に起こるのか…転倒を防ぐ歩き方を解説
すくみ足とは、歩行の開始時や障害物を避ける時などに起こります。また、パーキンソン病の患者さんは、動作が小さくなりやすく、ながら動作が困難になりやすいです。運動の特徴から、すくみ足による転倒を防ぐ歩き方を3つご紹介するので、日常生活に取り入れてみましょう。
日常でできる対策①大股で歩く
パーキンソン病患者さんは、動作が小さくなりやすいため、大きく動く意識を持つのが大切です。歩行時の転倒を防ぐために、大股で歩くようにしましょう。歩幅だけではなく、腕の振りも大きくするのがポイントです。早く動く必要はないので、ゆっくりと大きく動きましょう。
方向転換のさいは、大きく回るのを意識するとすくみ足が出にくくなります。
日常でできる対策②声を出したり目印を利用する
考え事をしながらの「ながら動作」は、すくみ足を発生させやすいです。そのため、歩行に集中できるような対策をしましょう。例えば、「1、2、1、2」とかけ声をかけながら歩いたり、足元の線を跨ぐように足を出したりします。
屋外を歩くときは、注意が逸れやすいため、話しながらの歩行は控えると安心です。
日常でできる対策③焦らない
すくみ足の症状が出ると、焦ってしまう方が多いです。しかし、焦りは、すくみ足をさらに悪化させるといわれています。すくみ足がみられた場合には、姿勢を整えて深呼吸をしてみましょう。
転倒予防のために、近くに手すりなど掴まれるものがあれば頼ります。方向転換や動き始めのきっかけになるため、落ち着いて周囲を確認しましょう。
参考:第16回歩行困難の改善のためのリハビリテーションと工夫
すくみ足とは歩行が困難になる症状|日常生活で使える補助具とは
すくみ足とは何か、原因や日常での対策を知っても、歩行が不安な方は多いです。焦りや不安などの外的要因もすくみ足を悪化させる原因となります。日常生活で使える補助具を利用して、安心できる環境を整えていきましょう。
杖を使用する
杖や歩行器があると、転倒の不安が軽減します。パーキンソン病の方は、バランス機能が低下しやすいため、複数の支点がある多点杖がオススメです。
レーザーポインターで1歩目がわかりやすくなる杖もあります。踏み出し位置がわかると、すくみ足が発生しても、1歩が踏み出しやすくなるでしょう。
速度制御付きの歩行器が有用な例もある
すくみ足のほか、バランス機能が低下している方は、歩行器があると歩行が安定します。しかし、歩行器はタイヤがついているため、突進現象がみられると、転倒してしまうかもしれません。
速度を抑制できる機能がついている歩行器では、急発進を防止でき、転倒予防に役立つのです。速度制御付きの歩行器が、パーキンソン病の患者さんの歩行機能に影響を与える報告もあります。速度制御付きの歩行器が気になる方は、福祉用具を扱う店に問い合わせてみましょう。
歩行補助具「Qピット」とは
パーキンソン病のすくみ足対策に「Qピット」という商品があります。身体にQピットを装着すると、脳に刺激が入り、歩行を改善するものです。脳への刺激は、視覚と聴覚の2つがあります。
Qピットを装着すると、床に光が照射され、足を踏み出す目印のラインを映し出します。さらに、イヤホンから一定のリズムが流れてくる聴覚刺激があるため、歩き始めのきっかけとなったり、歩行に集中できるのです。
屋内専用の歩行補助具なので、歩行練習や運動の時間を作りたい方にオススメです。
まとめ|パーキンソン病のすくみ足とは何か
すくみ足とは、歩き始めようとしたときや、道にある障害物をよけようとしたときに、足が前に出なくなってしまう症状です。例えば、学校で友達と歩いていて急に止まってしまうことがあります。今回は、このすくみ足の症状と、日常生活でできる対策方法をわかりやすく説明します。
パーキンソン病の患者さんは、動きがだんだん小さくなりやすいという特徴があります。これは、手や足の動きが小さくなってしまうことを意味します。そのため、歩いているときにバランスを崩して転んでしまうことがあります。転ばないようにするためには、わざと大きく体を動かすことを意識することが大切です。他にも、日常生活で気をつけるべきことがありますが、自分もサポートする人も「焦らないこと、焦らせないこと」が大事です。
落ち着いて生活したり、ゆっくり歩いたりするためには、時間をかけたリハビリが必要です。でも、普段から心にゆとりを持ってリラックスして生活することも大切です。そうすることで、すくみ足の症状を和らげることができます。