
脳梗塞の後遺症は治るのかを解説!基本的な対処法と最新の治療について
2025.04.23

脳梗塞になったら「後遺症は治るのか…」「治らなかったら自分の生活はどうなってしまうのだろう」と不安に思う方がいらっしゃるでしょう。脳梗塞は突然発症し、気づいた時には後遺症によって日常生活が困難になる方が多いです。
この記事では、脳梗塞の後遺症は治るのかについて、基礎知識や治療方法を解説します。後遺症の正しい知識があれば、見通しを持って治療に臨めることでしょう。
また、これまでの一般的な治療法に加えて、最新の方法もご紹介します。脳梗塞の後遺症を積極的に改善したい方は、ご自身の治療法を適切に選択できるようにしましょう。
目次
脳梗塞の後遺症は治るのかが不安…基礎知識と回復経過を解説

脳梗塞を経験した患者さんの60〜70%が何らかの後遺症に悩まされるといわれています。そのため、脳梗塞の後遺症は治るのかと不安に思う方が多いでしょう。どのような回復経過をたどるのか、原因とともに知るのが、対策の第一歩です。
なぜ後遺症が起こるのか
脳梗塞が起こると、血管が詰まり、脳の血流が遮断されます。血液が届かない部位の脳細胞が壊死して、脳の機能が低下してしまうのです。脳は部位ごとに役割が決まっているため、発症部位により後遺症の程度や種類が変わります。
発症から治療までの時間が短いと脳の障害が軽く、後遺症は残りにくいといわれています。
脳梗塞の後遺症の症状
脳梗塞の後遺症の症状は、脳の障害を受けた部位や範囲によって異なるのが特徴です。以下のような症状が1つまたは複数現れる可能性があります。
- 運動障害:麻痺・歩行障害・筋力の低下や拘縮
- 感覚障害:痺れ・痛み
- 認知機能の低下:物忘れ・感情が不定
- 言語障害:失語症や構音障害でコミュニケーションが困難
- 高次脳機能障害:自発性・集中力の低下、社会的な行動障害
- 嚥下障害:食事中にむせる、食べ物が喉に詰まる
- 排尿・排便障害:尿意や便意がわからず失禁する
- 精神状態の変化:うつ症状・感情のコントロールができない
脳梗塞の後遺症の回復経過
脳梗塞の後遺症への対策は、早ければ早いほど、回復しやすいといわれています。そのため、発症早期から積極的な治療やリハビリが行われるでしょう。
一般的には、発症後2週間〜6ヶ月が最も回復しやすい時期です。6ヶ月までの回復期にリハビリを行うと、神経系の回復を促しやすく、後遺症が改善しやすいといわれています。
発症から6ヶ月経った後は、後遺症の大幅な改善は難しいものの、ゆるやかに回復が続きます。この時期に後遺症があっても諦めずにリハビリを続けるのが大切です。
脳梗塞の後遺症は治るのか|一般的な治療法とリハビリの効果

脳梗塞の後遺症は治るのか、今後の見通しが欲しい場合は、まずは基本的な治療方法を知っておきましょう。発症初期から治療を受けると、改善する可能性が高いです。後遺症の回復とともに、再発予防を行うと、質の高い生活が維持できます。
薬で血流や血圧を改善
血栓や動脈硬化が脳梗塞の原因なので、血流や血圧のコントロールが重要です。脳梗塞が再発すると後遺症が改善しにくくなったり、日常生活動作が困難になったりします。そのため、以下のような薬を使って、血流や血圧を改善し、今の状況を悪化させないようにするのが大切です。
- 抗血栓薬:血栓の形成を抑制させる
- 降圧薬:高血圧の方の血圧をコントロールする
- 血糖降下薬:血管が傷つく高血糖状態を防ぐ
リハビリで動作を改善
運動麻痺や高次脳機能障害などの後遺症を改善するには、リハビリが必要です。
脳には可塑性(かそせい)といって、環境や経験に応じて新しい神経回路が形成されたり、別の神経回路が活性化したりするメカニズムがあります。一度損傷した脳細胞の再生は難しいですが、できない動作を練習すると、脳の可塑性によってできるようになる可能性があるのです。
再発予防も重要
脳梗塞を発症した人の再発リスクは、発症後1年で約10%、5年で約35%です。脳梗塞は生活習慣が原因で発症するため、根本の問題が改善されないと、再発するリスクがあります。
1度目の脳梗塞の後遺症が改善していても、再発すればまた症状が出るかもしれません。後遺症に悩まされないようにするためにも、次のような生活習慣の改善が必要です。
- 規則正しい生活:食事の時間や睡眠時間を規則的にする
- 適度に運動を行う:1日40分程度の運動が望ましい
- 禁煙
- 過度の飲酒を避ける
【最新の治療法】脳梗塞の後遺症は治るのか…論文を元に紹介

脳梗塞の後遺症は、薬物療法とリハビリを行うのが一般的です。しかし、医学は日々進歩しているため、最新の治療法も出てきています。脳梗塞の後遺症は治るのかが気になる方は、最新の情報と安全性をチェックして、治療法を選択しましょう。
脳の再生医療が注目されている
脳には可塑性がありますが、損傷を受けた脳細胞自体は機能回復しないのが現状です。そのため、脳の損傷部位や範囲によっては、後遺症からの大幅な回復が難しいかもしれません。最近では、脳組織の機能回復を目指す、再生医療に注目が集まっています。
例えば、幹細胞治療は、患者さん自身の細胞を損傷部位に移植して、神経再生を促します。損傷を受けた部分の再生を促せるため、後遺症の回復が期待できるのです。国内でも大学病院や研究センターなどで、脳の再生医療を行っています。
ロボットスーツを使用したリハビリ
脳梗塞で運動麻痺が起こると、歩行が困難になる患者さんが多いです。一般的には、歩行に必要な機能を回復させたり、繰り返しの動作をしたりするリハビリが行われます。
しかし、最近では、ロボットスーツを使用した歩行リハビリが注目されているのです。発症直後で運動麻痺があっても、ロボットスーツを着用すれば、実際の歩行体験が可能になります。ロボットスーツの補助を受けながらリハビリをし、歩行速度が改善したという効果が報告されています。
VRを活用したリハビリも
VRという仮想現実を利用してのリハビリも注目されています。専用のヘッドセットを着用し、コントローラーを使用して運動を行うのです。
VRを利用すると、よりリアルな環境で脳が実際に動いていると錯覚させられるため、脳が動作を再学習するのを促進する効果があります。
参考:京都大学iPS細胞研究所CiRA「治療として提供される再生医療、安全性・有効性に疑問―再生医療法に構造的課題か―」
参考:CiNiiResearch「ロボットスーツHALを用いた歩行練習の効果と追跡調査」
まとめ|脳梗塞の後遺症は治るのか

脳梗塞になったあと、「後遺症は治るの?」と不安に思っている人はとても多いです。脳梗塞とは、脳の血管がつまってしまい、その先に血が届かなくなる病気です。この病気になると、体の一部が動かしにくくなったり、話しにくくなったりすることがあります。これが「後遺症」です。
でも、脳梗塞の後遺症がどれくらい残るかは、人によって大きくちがいます。たとえば、つまった血管の場所や、どれだけ早く治療を受けられたか、年齢や体力などによっても変わります。
リハビリは、後遺症を少しでも改善させるために行う大切な努力です。最初のうちはやる気があっても、何カ月も続くと、「本当に良くなるのかな?」と不安になる人もたくさんいます。そうした不安が大きくなると、リハビリをがんばる気持ちがなくなってしまい、せっかく少しずつ良くなってきた体の状態が元に戻ってしまうこともあります。
では、どうすればこの不安と向き合えるのか?
まず大事なのは、「治る・治らない」だけで考えるのではなく、「どこまで回復できるかを少しずつ目指す」という前向きな気持ちを持つことです。そして、最近は科学が進んで、新しいリハビリの方法もどんどん出てきています。ロボットを使った訓練や、ゲーム感覚で行うトレーニングなど、楽しみながらできるものもあります。
不安を感じることは自然なことです。でも、リハビリの工夫や、周りのサポートを受けながら進めていけば、「できること」は確実に増えていきます。あきらめずに、一歩ずつ前に進むことが大切です。