筋ジストロフィーは早期リハビリが重要! 生活の質を維持する方法を解説
2023.10.06
慢性疾患の一つである筋ジストロフィー。進行性である筋力低下に合わせてさまざまな合併症を発症していく病気なので治療が長期になる場合があります。
以前は、「成人するまで生きるのが難しい病気」とされていましたが、薬物療法や機能訓練の発達により、成人期以降も病気と向き合いながら生活できる患者さんも増えてきました。
現在では、根本的な治療薬の研究も進みつつあるため、希望を持ちながらも冷静にリハビリをこなし、将来に備えることが重要です。
今回は、筋ジストロフィーにリハビリが必要な理由やリバビリのポイントについてご紹介します。
目次
筋ジストロフィーにリハビリって必要?治療が長期になることも
筋ジストロフィーは、重大な合併症も引き起こす難病ですが、リハビリなど適切に対処していくことで生活の質を維持しながら成人後も生活していくことが可能です。筋ジストロフィーの特徴について見ていきましょう。
筋肉が徐々に弱る|筋ジストロフィー
筋ジストロフィーとは、リハビリが必要な国指定の難病の一つで、「筋ジス」とも呼ばれています。筋肉が少しづつ弱くなっていく遺伝性の筋疾患で、小児期に発症し、成人前に歩行不能となることが多いです。
発病する原因は解明に至っておらず、筋肉の変性や壊死が起こると再生されにくいので、筋力低下により身体を動かすことが難しくなっていきます。
筋ジスの種類によっては、呼吸機能や心筋に障害を及ぼすなど命の危険性を伴う合併症や、言葉の発声が難しくなる構音障害、白内障や難聴などの合併症を併発することもあるため治療が長期にわたることもあります。
最も多いのが「デュシェンヌ型」
筋ジストロフィーにも種類があり、筋ジスのなかでもっとも多く70%を占めているのが「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)」です。2013年の時点で男子が出生して3500〜5000人に一人の割合で3歳〜5歳の小児期に発症しています。
症状には歩行障害、筋委縮などがあり、進行が早いので20歳前後で死亡してしまうケースもあります。
DMDは、主に男児にみられますが、DMD以外にも症状の出始めが遅い「ベッカー型」、男女問わずに発症する「福山型」など先天性の筋ジスもあります。
リハビリで生活の質を維持することが可能
現在に至るまで根本的な治療法のない筋ジストロフィー。以前は、「生きられるのは20歳まで」といわれていましたが、リハビリの効果により50代以上の患者さんも見られるほどになりました。
筋ジスによる機能障害や合併症を止めることはできないのですが、リハビリは、患者さんが成人後も自宅で生活したり、障害があっても生活の質を維持していくことを可能にしています。
【参考:J-STAGE「筋ジストロフィーのリハビリテーション」】
筋ジストロフィーのリハビリ|介助してもらいながら行う方法
筋ジストロフィーのリハビリは、自分で手足を動かせない場合が多いので、リハビリスタッフや家族に介助してもらいながら行うのがポイントです。各部位につき30秒×3セットを目安にして行いましょう。
リハビリ①足首を柔らかくする
足首が固くなると、つま先歩き(尖足)になりやすく、尖足になると転倒しやすくなったり歩くさいに疲れやすくなったりします。
足首をやわらかくして尖足を防ぐ筋ジストロフィーのリハビリをご紹介します。
①患者さんを仰向けに寝かせ、患者さんの踵を持って足の裏に介助者の腕をぴったりくっつけます。
②患者さんの膝が曲がらないように、片方の手で介助者は膝を抑えます。
③その状態で足首を徐々に反らせ、筋肉を伸ばします。
リハビリ②膝をのばしやすくする
膝が伸びにくくなっていると、歩くさいに太もも全面に余計な負担がかかり、長く歩くことが困難になるので、膝を伸ばしやすくする筋ジストロフィーのリハビリを説明します。
①患者さんを仰向けに寝かせます。介助者は、患者さんの足首を踵から持って、患者さんの膝を伸ばしたまま天井のほうへゆっくりと上げます。
②膝が曲がらないように介助者が上から押さえます。
③患者さんの反対側の足が持ち上がらないように脚などを使って上から押さえます。
リハビリ③脚を曲げやすくする
脚を曲げやすくする太もも前側の筋ジストロフィーのリハビリです。立つ・歩くといった動作に役立ちます。
①患者さんをうつ伏せに寝かせ、介助者は、患者さんの足の甲を持ってゆっくりと膝を曲げます。
②お尻が浮かないように手でお尻を上からしっかり押さえます。
リハビリ④猫背姿勢を防ぐ
太ももの外側の筋肉が弱くなると、脚が閉じにくくなるので、ガニ股のように開いてしまったり猫背姿勢にもつながります。猫背姿勢を防ぐための筋ジストロフィーのリハビリをご紹介します。
①患者さんはうつ伏せの状態で、介助者は患者さんの膝を90度に曲げた状態で、膝を抱え込みながら太ももを持ち上げます。
②太ももを上げたままで、患者さんの脚の内側に倒します。
③お尻がついてこないようにしっかりと上から押さえます。
筋ジストロフィーの治療後に自宅で過ごす生活での4つの注意点
筋ジストロフィーにリハビリは欠かせないものですが、リハビリの実施にあたっていくつか注意するべき点があるので見ていきましょう。
日常生活の動きだけでもリハビリになる
歩くことが一人でも可能な患者さんは、起き上がる・立つ・家事動作など、日常生活に必要な動きだけでも十分な筋ジストロフィーのリハビリになります。
一日の適度な運動の量は人によって異なるため、リハビリ終了時に「やや疲れた」と感じる程度が適切な運動量です。万歩計で歩数を確認しながら一日に活動する量を決めていきましょう。
運動のし過ぎと廃用を予防する
適度な筋ジストロフィーのリハビリは、運動機能を維持し、廃用症候群を防ぐためにも重要ですが、運動のし過ぎは病気で弱くなった筋力をさらに痛めてしまうおそれがあるため、注意が必要です。
高い負荷をかける筋トレは筋肉を障害するおそれがあるので、低負荷な運動をリハビリスタッフのもとで行うことが効果的です。
転ばないような環境設定をする
筋ジストロフィーのリハビリの際に、転倒などでケガをしてしまうのを防ぐためにも、プロテクターなどの装具を使用したり環境整備には十分注意して行いましょう。骨折などケガによる動けない時間の増加は、筋力がさらに弱るので廃用による機能障害の原因にもなります。
環境整備のポイントとしては、転倒を防止するために家では床にものを置かない、段差をなくしたり、トイレやお風呂に手すりをつけるなどがあります。
体重は定期的に確認する
筋ジストロフィーのリハビリの一貫として、体重は定期的に測るようにしましょう。ステロイド療法の副作用により、食欲が出て体重が増加し過ぎることがありますが、急激な体重の増加は、筋肉への負担になります。
また、急激に体重が減少することも、栄養不足になっていたり合併症を併発している可能性があるため、早期発見のためにも体重のチェックは欠かさないことが重要です。
筋ジストロフィーのリハビリ内容や生活の注意点まとめ
筋ジストロフィーのリハビリで注意すべきポイントや病気の特徴についてご紹介しました。
筋ジストロフィーは、治療方法の改善により、今では50代以上の患者さんもみられる程に生命予後が改善してきました。
病気があっても、身体の状態に合わせた適度なリハビリを行うことで、筋力の低下を遅らせることができるようになっています。
大人も子供も長期休暇時の際は、特に運動不足になりやすいので、意識的に継続的な運動を心がけ、生活の質を維持していきましょう。