緩和ケアでリハビリを受けると生活の質が向上する理由と実施内容4つ
2023.09.05
緩和ケア期にリハビリを受けると生活の質が向上するのをご存じでしょうか。末期がんと診断されると、心身ともに辛い部分が出てきますがリハビリを通して、できる動作を維持したり、やりたいことを実現することができます。
緩和ケア期の患者様のリハビリ内容は人それぞれですが、主にどんな目的で何を行うのかを知っておくと、リハビリを続けるモチベーションになります。緩和ケアの対象となった方がリハビリを受ける方法は3つあります。それぞれ申請や利用開始方法が異なるため、リハビリを受ける前に確認しておくとスムーズです。
目次
緩和ケア期の方は体のどこが辛いのか…リハビリを行う重要性とは
がんと診断され、緩和ケアを受けると聞くと、周囲の方はどんなサポートをしてあげられるかで悩まれることでしょう。緩和ケア期の方にリハビリを行う重要性を知っておきましょう。
痛みなど身体的な症状がある
がんによる主な身体症状は「痛み」です。痛みで日常生活がままならない状態であったり、リラックスした時間が取れなくなってしまいます。痛みの他にもさまざまな身体症状がみられます。
・全身倦怠感・食欲不振・便秘・嘔吐・嘔気・不眠・呼吸困難
このような症状を抱えたまま生活しなければならないとなると、想像を絶する辛さが見えてきます。
無力感などの心理的な変化も
緩和ケア期の患者さんの症状は体だけでなく、心にも表れます。病気で何もできない無力感、落胆、絶望感などを抱える方が多いです。職場や家庭での役割をこなせないことで、自分を責めてしまったり、やりたいことができない不便さを感じます。
がんと診断された患者さんには、身体的なアプローチだけでなく、心理的なケアも必要です。ご家族だけで抱え込むには負担の大きすぎる問題なので、医療スタッフやケアワーカーなどに頼る必要があります。
リハビリで生活の質を維持・向上できる
緩和ケア期の患者さんにリハビリを実施したところ、自己価値観と自己効力感が向上したとの報告があります。リハビリプログラムをこなせると、達成感が得られたことが要因と考えられます。
今の身体能力でできる動作を学習し直したり、リハビリで動作を少し工夫することにより、生活能力も向上します。動作ができると活動範囲が広がるため、心理的な苦痛が軽減したり、安心感を持つことができます。
参考:ホスピス・緩和ケアにおけるリハビリテーション(作業療法)評価表作成のための調査研究
緩和ケア対象者様のリハビリ目標は「最高の生活」具体的な内容は
緩和ケアが対象の患者様のリハビリの目標は「最高の生活」を送れることです。今持っている能力を最大限に引き出すには、どのようなリハビリを行うのでしょうか。
寝たきりによる体力低下を防ぐ
痛みやだるさで体を動かしにくくなると、寝たままの状態が続きます。1週間寝たきりが続くと筋力の15%が失われ、筋力が低下すると血流が悪くなったり、呼吸のしにくさが表れます。
緩和ケア期のリハビリでは、痛みがなく動かせる部分は動かして筋力低下を防ぎます。起き上がったり、移動することが可能であれば、痛みのない範囲で動作を行います。また、動かしにくい部分がある場合は、今までとは違う動作ができないかどうか、道具を使うべきかなどを検討していきます。
呼吸を楽にするリハビリを行う
がん細胞がリンパの菅の中に入ると肺に水が溜まり、呼吸が苦しくなります。また、がん治療の影響で呼吸がしにくくなる場合もあります。呼吸が苦しいと、眠れないなどの影響が出ますので、リハビリで改善します。
リハビリでは、今の状態で呼吸が楽になる呼吸法や姿勢を提案します。さらに、呼吸に関連する筋肉を使いやすくして呼吸を介助します。
日常生活動作を行いやすくする
生活の質を維持・向上させることは、最高の生活を送る上で重要です。トイレや風呂などは介助なしでご自分のペースでできるとプライバシーも保たれます。ご自分でできることが多いと、「家族に迷惑をかけている」「自分では何もできない」という心理的な負担も軽減できます。
そのため、今できる日常生活動作が続けて行えるように、関節を滑らかに動かしたり、筋力をつけられるリハビリを行います。必要であれば、補助具や住宅に手すりをつけるなどの改修のアドバイスも行います。
ご本人の希望を叶えるためのリハビリ
最高の生活を送るために必要なのが、患者様ご本人の希望を叶えることです。日常生活動作だけができれば良いわけではなく、外出したり趣味活動を行うことも生活の中では非常に重要です。緩和ケア期の患者様の中には、ご自分で身辺の整理をしたい方もいらっしゃいます。
患者様の希望を叶えるためにはどんな能力を維持・向上させれば良いかを検討し、リハビリを提供します。現時点では難しいと思われるご希望でも、1つずつステップを踏めるようなリハビリ計画を提案します。
参考:緩和医療12巻4号「緩和ケア病棟におけるリハビリテーション実施患者の希望の調査および離床耐久性と予後予測スコアとの関係」
緩和ケア対象の患者様がリハビリを受ける方法は3つある
緩和ケア期の患者様はリハビリを受けることで、生活の質が改善します。在宅でリハビリを受けるには次の3つの方法の中から選びましょう。
通院してリハビリを受ける
治療で通院している病院でリハビリを行っている場合は、そちらでリハビリを受けられます。いつも通っている病院にリハビリテーション科がない場合は、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターで聞いてみると良いでしょう。
緩和ケアリハビリを行っている病院を探すきっかけにもなりますし、リハビリ以外の職種から受けられる援助が見つかるかもしれません。
保険適用で訪問リハビリを受ける
外出が難しい方は、在宅で訪問リハビリを受けられます。要介護の認定を受けている場合は介護保険が適用になり、それ以外の方は医師の診断書があれば保険適用でリハビリが受けられます。
要介護の認定を行ってもらうためには、お住まいの自治体の窓口に問い合わせましょう。健康保険を適用する場合は、月に一回、主治医に訪問リハビリテーション指示書を書いてもらう必要があります。
自費で訪問リハビリを利用する
保険適用でリハビリを受ける方法の他に、自費で訪問リハビリを利用する方法もあります。自費なので費用は事業所ごとに異なりますが、1回あたりの時間や回数をご自分で選ぶことができます。
医師の指示書や介護認定も必要ないので、通院が億劫な方やすぐにでもリハビリを始めたい場合は、自費訪問リハビリを選ぶ方も多いです。
まとめ
緩和ケア期の患者さんがリハビリを受ける意義やリハビリの実施内容をご紹介しました。がんになると身体だけでなく、精神的にも辛い状態となりますが、リハビリを受けると生活の質の維持・向上ができます。
緩和ケアを受けている方のリハビリ目標は最高の生活を送ることです。寝たきりを防止するために筋力をつけたり、呼吸を楽にする介助を行います。さらに、日常での動作をよりスムーズにする提案、ご本人の希望を叶えるためのリハビリを実施します。
患者様やご家族の方の生活スタイルに合うリハビリを受けられるような方法を見つけて利用してみると良いでしょう。