脳出血からの驚異的な復活!段階別リハビリで機能回復を目指す
2023.06.27
脳出血は治療ができればある程度回復できる疾患となりつつありますが、その過程でリハビリなどを怠ると重い後遺症が残ることもあります。麻痺、脳障害、寝たきりといった後遺症です。
しかし、リハビリなどを行えば後遺症予防は十分にできます。脳出血から回復する過程ではどのような点に気をつけるべきなのでしょうか?
脳出血は3つの過程を経て維持期へと至るといわれています。そこで今回は、脳出血からの回復過程で注意すべきポイントをそれぞれの回復段階ごとに解説します。各段階でのリハビリ内容についても一緒に見ていきましょう。
目次
【脳出血の急性期】回復後の生活を考えて後遺症予防する過程に
まず最初に説明するのは急性期です。急性期は発症後から2週間ほどの期間。脳出血からの回復後の生活を考えながら治療に専念する過程となります。
とにかく症状の回復や現状把握が一番に
急性期ではとにかく症状の回復が最優先されます。と同時に、脳出血によって身体のどの部位に障害が及んでいるのかについても検査する必要があります。
脳出血は、発生した箇所によって障害が出る部位が異なります。脳出血の部位と障害の関係性は以下の通りです。
脳出血の発生箇所 | 起こる障害・部位(代表的なもの) |
被殻(脳のほぼ中央) | 半身の片麻痺、顔面神経麻痺 |
視床(間脳) | 半身の片麻痺、顔面神経麻痺、意識障害 |
小脳 | 運動失調、運動機能障害 |
橋(脳幹の一部) | 四肢の麻痺、外転神経麻痺 |
これらの障害に対して確認しながら、入院中は絶対安静となります。
廃用性症候群(寝たきり)予防のリハビリも並行
脳出血の治療中は基本的に絶対安静です。しかし、ここでずっと安静にしていると、将来寝たきりのリスクが高まる「廃用性症候群」になるおそれがあります。
廃用性症候群とは「身体の不活動状態により生ずる二次的障害」と定義されています。つまり、絶対安静で動かずにいることで、動かさない手足が不活動状態に陥り筋委縮などの症状を発してしまうのです。
それを防ぐため、介助を受けながらベッドの上で手足を動かす、体位転換などの軽い動きを加えます。この動きも、脳出血発症後のリハビリの一つです。
【脳出血の回復期】退院までは3種類のリハビリ過程をたどる
脳出血の回復期は、発症から症状が収まり、本格的なリハビリを始められる過程を表します。発症から半年までの期間です。まだ入院中ですが、回復期では退院後を見据えたリハビリを始めます。
退院後の機能改善を考えたリハビリが主に
回復期のリハビリでは、退院後の日常生活を見据えた内容が主となります。
発症から数週間は絶対安静となるため、どうしても筋肉が落ちてしまいます。その分体力も衰えるため、筋力を取り戻す訓練が必要です。
また、脳出血によって運動機能障害を発生しているおそれもあります。そのことから、脳出血の回復期では3つのカテゴリに分けてリハビリが行われます。
入院中のリハビリ1:運動機能
1つ目のリハビリは運動機能を取り戻す、もしくは強化のためのリハビリです。
- 歩行訓練
- 食事・排泄など生活に関わる訓練
- ベッドから立つ・車椅子に座るなど
こういった退院後の日常生活に必要不可欠となる運動の訓練が運動機能リハビリの内容です。基本的には入院先のリハビリルームで、理学療法士もしくは作業療法士の指導で行われます。
入院中のリハビリ2:嚥下・言語機能
2つ目のリハビリが嚥下・言語機能のリハビリです。基本的には言語聴覚士が担当します。
脳出血を発症すると、発話や食べ物・飲み物を飲み込む動作に必要な機能が低下することがあります。これは、嚥下や言語に関わる筋肉がすべて喉や口に集約されているからです。
また、急性期には食事や発話があまりできなくなり、普段使っている喉や舌の筋肉が衰えてしまう場合もあります。だからこそ嚥下・言語機能のリハビリが必要になるのです。
入院中のリハビリ3:高次脳機能障害(後遺症)予防
3つ目が高次脳機能障害に対するリハビリです。
脳出血は、損傷部位によってあらゆる認知機能が低下する場合があります。記憶障害や失語、思考力の低下などの症状を引き起こすことも。これが「高次脳機能障害」です。
損傷部位によって、引き起こされる症状は変わります。そのため、損傷部位に合わせて予見される症状や、すでに出ている症状を軽減させるリハビリが必要です。
例えば、記憶障害の場合はまず「物忘れをしてしまう」ことを認識し、メモを取る習慣をつけるようにします。入院中から習慣づけを行うことで、退院後にも習慣が残るようにするためです。
参考:福祉新聞WEB「代償手段を知って高次脳機能障害と生きていく〈高齢者のリハビリ〉」
【脳出血の生活期】退院後は回復の過程に合ったリハビリをしよう
脳出血では、症状から回復して退院後の過程を「生活期(または維持期)」と呼んでいます。ここでは回復期の生活とリハビリについて解説します。
リハビリ利用しないままだと質が落ちて生活能力低下も懸念
入院中(回復期)は生活機能のリハビリを受け、運動能力強化などもできました。しかし、退院するとそういったリハビリのサービスは受けられなくなります。
また、退院後の生活の変化でリハビリが思うように行えなくなり、せっかく取り戻した運動能力が低下するおそれもあります。運動能力の低下は寝たきりのリスクを高めることも。
リスクを軽減するためにも、退院後もリハビリが必要です。しかしここで出てくるのが、通所リハビリと訪問リハビリ、どちらを選ぶべきなのかという選択肢です。
通所と訪問、どちらを利用するべき?
リハビリには大きく分けて通所リハビリと訪問リハビリの2種類があります。どちらも介護保険・医療保険適用が可能なリハビリが多いです。
メリット | デメリット | |
通所リハビリ | ・外出の機会が増える ・コミュニケーションの機会を作れる ・施設・設備を使ったリハビリが可能 | ・外出できない症状では通所できない ・適切な施設が圏内にないと通所できない |
訪問リハビリ | ・外出が困難な症状でもリハビリを受けられる ・介助者も指導を受けられる ・住宅改造のアドバイスを受けられる | ・外出の機会は自分で作らなければいけない ・設備が使えない |
双方のメリット・デメリットを見ると、後遺症や目的に合わせた選び方が必要になるということがわかります。
自分の目標に合わせたリハビリの選び方
生活期のリハビリは、生活の目標に合わせたリハビリが必要になります。例えば、1人で買い物に行けるようになるところまで回復したいのであれば、長く歩行できるようになるリハビリが必要です。
通所リハビリと訪問リハビリを選ぶ場合も同じです。訪問リハビリは、理学療法士と共に長い時間の歩行訓練を外へ出て行うことが可能です。通所リハビリでは長い時間の歩行訓練は自主的に行う必要があります。
まずはどんな風に生活を改善したいか、理学療法士や担当医と相談してみましょう。その後にリハビリの内容を決めると、効果的なリハビリを受けられます。
まとめ
脳出血から回復する過程では、それぞれの段階に合わせた適切な治療とリハビリが必要です。回復過程では、主に以下のようなリハビリが行われます。
- 急性期…寝たきり予防の体位転換など
- 回復期…症状に合わせた高次脳機能障害対策や運動機能強化など
- 生活期(維持期)…生活の目的・目標に合わせたリハビリ
脳出血は、出血部位によって症状が変わります。症状に合わせたリハビリに合わせて、生活能力を向上させるリハビリも必要になります。患者さん一人一人に合わせたリハビリプランが必要になるのです。