頸椎の損傷はリハビリで回復可能?家庭・社会復帰を目的に充実したリハビリを受けるには
2023.11.07
頸椎(けいつい)を損傷すると、程度によっては重篤な後遺症が残ることがあります。もちろん、まずは早期に適切な治療を受け、リハビリを行うことが重要です。
頸椎の損傷による後遺症はリハビリで回復することができるのか不安に思っている方も多いでしょう。適切に治療からリハビリに移ることで、後遺症が残るリスクを軽減したり症状を緩和することが可能です。
万が一、頸椎の損傷で重篤な後遺症が残ってしまった場合には、入院可能な期間を知っておくことが大切です。入院中からその後のリハビリ体制について考えておくようにしましょう。
目次
頸椎の損傷はリハビリで回復できるのか?損傷レベルで後遺症も変わる
頸椎を損傷した場合にはどのような治療・リハビリが行われるのでしょうか。その内容は損傷のレベルによって異なります。
頸椎の損傷を疑うべき症状
頸椎の損傷は、交通事故やスポーツなど様々な要因で起こりえます。まずは症状を知ることで早期に適切な対処ができるかが重要です。
頸椎を損傷している恐れがあるか確認する方法では、必ず頭を固定して絶対に首を動かさないようにしてください。
◯頭痛、めまい、吐き気、首の痛みがある
◯意識ははっきりしているが、手指や肘・肩が動かない
◯両方の上肢や腹部や胸部に痛みを感じない
◯呼吸の際、胸が動かず腹だけで息をしている
このような症状がある場合には頭部や首を必ず無理に動かさず、救急隊の到着を待つようにしましょう。
頸椎を損傷した後の経過|治療法
頸椎の損傷はレベルによって症状や後遺症も異なります。それらの症状に合わせた治療・リハビリをすることに。
頸椎の損傷によって運動神経が損傷すると、四肢や体幹を動かすことができない状態に。また、知覚神経を損傷すると、痛みや熱さ冷たさ、深部感覚を失ってしまいます。
内臓に影響が及ぶと、直腸膀胱障害(尿意や便意を感じられなくなる)や呼吸障害(横隔膜麻痺)、内臓の機能に障害が残ることも。
病院への搬送時には気道確保、呼吸管理、血液循環状態の管理が重要視され、脊椎の損傷も伴っている場合には脊椎の修復や固定など外科的処置がなされます。
参考:頚髄損傷について-岐阜市-森整形外科リハビリクリニック
頸椎の損傷では損傷レベルでリハビリも変化
頸椎の損傷はリハビリの内容も症状によって変化します。残存筋力によって動作様式は変わりますが、可動域、バランス能力とプッシュアップ能力、移乗能力を鍛えるリハビリを。リハビリ内容は、頸椎の損傷レベルや年齢、運動歴、体型、可動域、筋力、バランス等によっても変化するでしょう。
全身麻痺ではない場合には、関節可動域(柔軟性)の確保が重要です。麻痺していない残存筋の筋力増強を行うリハビリが行われます。また、全身麻痺の場合には、長座位での安定した座位を取れる練習をするリハビリです。
頸椎の損傷で脊髄損傷になれば再生は不可能…リハビリで機能回復を目指すためには
7個ある頸椎の骨の中心には脊柱管があり、その中に脊髄があります。脊髄の損傷を伴うと麻痺などの重篤な後遺症が残る可能性も。後遺症はリハビリで回復するのでしょうか?
頸椎を損傷…重度後遺症の場合の入院可能期間
まず、頸椎を損傷により脊髄の損傷も伴ってしまった場合の入院可能期間を知っておくようにしましょう。
脊髄や脳にも損傷を負ってしまった場合には、日常生活を送る機能回復のために早期にリハビリに移行することが望ましいとされています。これが症状の悪化を防ぐための急性期・リハビリです。急性期・リハビリが認められるのは受傷後2ヶ月までとなります。
その後、回復期・リハビリのためにリハビリの病棟へと転院します。ただし、この回復期・リハビリが認められるのは一般的な頸椎の外傷による脳や脊髄の損傷でも、150日が限度となります。高次脳機能障害を伴う重症脳血管障害、重度の頚髄損傷、頭部外傷を含む多部位外傷の場合でも、限度は180日です。
頸椎の損傷|回復期のリバビリの内容
頸椎の損傷における回復期のリハビリでは、医師・看護師の他に理学療法士や作業療法士、言語視覚士らがチームとなり行われます。
その内容は主に、失われてしまった機能の回復と日常生活に復帰するための訓練を行うリハビリになります。
運動機能の向上のためには様々な形でリハビリを行います。機能訓練には、筋力が弱く腕を自身では持ちあげることが難しい場合には、腕の重さを補助する機器を用いて行うなど多くの機器も導入されるでしょう。同時に物をつまむ、運ぶなどの動作練習のリハビリも。
麻痺した機能を補う、新しい運動パターンを学習するために装具を用いた訓練のリハビリも取り入れることになります。
参考:〔特集〕脊髄損傷者、頸髄損傷者のリハビリテーション|国立障害者リハビリテーションセンター専門情報誌
リハビリで回復を目指すための選択肢
頸椎を損傷した後、回復期・リハビリの期間が終了すると日常生活が可能であると判断されれば退院せざるを得ない状況になってしまいます。
実際には、その後のリハビリが頸椎の損傷による後遺症の軽減、リハビリによって回復した身体機能の維持には重要となるのです。
つまり、入院期間中からその後、異なる療養期間へと移るか通所・訪問リハビリの利用をしながら自宅で過ごすかということを決めておかなければなりません。
もし、交通事故で頸椎の損傷による脳損傷を負ってしまった場合には『独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)』の入院施設に転院することも検討しましょう。特にNASVA療護施設では高度先端医療機器を使用した効果的なリハビリが可能で、最長3年間入院することが可能です。
頸椎を損傷したら通所・訪問でのリハビリは必須!治療技術は日々進歩
入院期間が終わった後のリハビリを行う期間を維持期と呼びます。頸椎の損傷における維持期のリハビリはとても重要です。目的のゴールを定めてリハビリに取り組むようにしましょう。
訪問・在宅でのリハビリという選択
頸椎を損傷して、退院後に自宅でのリハビリを行う場合には日常生活の環境に合わせた動作の工夫や装具や機器の選定が必要に。自宅の改修なども必要になるかもしれません。
医療相談や訪問リハビリの理学療法士との連携を図り、スムーズに維持期のリハビリに移行できる準備をしておきましょう。
頸椎を損傷し後遺症が残った場合には、生活環境や介護者の有無から大まかなゴールを設定。その後、詳細な社会的ゴールを設定して日々リハビリに取り組むことになります。
頸椎の損傷から職業復帰を目指すリハビリ
平成20年10月には自立支援局において、頸髄損傷者の自立・機能訓練、施設入所支援が開始され、医師、看護師、介護福祉士、理学療法士、作業療法士がサポートをしています。平成28年7月には、伊東重度障害者センターを統廃合し、自立訓練、施設入所者の支援の定員は90名に増員されました。
また、リハビリ・センターでは頸椎の損傷において重度の後遺症を負った患者を対象とした、職業復帰、復学を目的とした職業・リハビリを設置している施設も。職業講習などは直接就労には結びつきませんが、職業復帰の動機付けを目的として受講が推奨されています。
参考:頸髄損傷におけるリハビリテーション医療の戦略|古澤一成、徳弘昭博吉備高原医療リハビリテーションセンター
頸椎の損傷における最新医療研究
頸椎の損傷により、脊髄損傷となった場合には脊髄を修復することは不可能と言われています。ただし、近年の医療発展により新たな治療法も研究されているのです。
急性期の患者の硬膜内にHGFを注射する『HGF(肝細胞栄養因子)投与』は臨床治験を経て数例の投与の実績が。亜急性期(2〜4週間)の患者に対して手術的に患部を露出し損傷部に直接iPS細胞を注射する『iPS細胞移植』は、慶應義塾大学病院と国立医療機構村山医療センターにて共同研究で臨床治験がされています。
参考:頚髄損傷と戦うスポーツ外傷や事故整形外科│トピック│村山医療センター
まとめ
頸椎を損傷した場合には、重篤な後遺症が残る可能性があります。頸椎を損傷した可能性がある場合には、早期に適切な治療を受け充実したリハビリを行える環境を目指しましょう。
特に患者自身も家族などの介護者も大変な時期である入院期に、あらかじめ先のことを考えるのは難しいかもしれません。しかし、回復期に行ったリハビリの効果を無駄にしないためにも、維持期のリハビリの重要性を知っておくことは重要です。
急速な医療の進歩により、頸椎の損傷による脊髄の損傷においても様々な治療法が臨床試験に入りつつあります。新たな治療法の確立を期待すると共に、常にリハビリの大切さについては心に留めておきましょう。