麻痺があると階段昇降が難しい?安全に階段を使うためのポイントとリハビリ継続のコツ
2025.12.12
麻痺があると、「踏ん張れない」「バランスを崩しやすい」などの症状が現れ、階段昇降が難しくなります。外出や在宅での移動が制限されるため、生活の質が大きく下がってしまうことも少なくありません。
しかし、正しい身体の使い方や継続的なリハビリによって、安全に階段を利用できるようになるまで改善する可能性は十分にあります。
麻痺があっても安心して階段昇降ができるように、身体の使い方のポイントや自宅でのトレーニング方法などをチェックしておきましょう。今回は、実践的なポイントとあわせて、階段昇降が難しくなる原因やリハビリ継続のコツなども解説します。
目次
麻痺が起こる原因とは|片麻痺患者が感じる階段昇降の難しさ

病気やケガ、食べ物など、麻痺が起こる原因はさまざまです。麻痺の程度によっては、階段昇降が難しくなり、長期的なリハビリが必要になることも少なくありません。
階段昇降が難しくなるのには、身体が動かない以外にもいくつかの要因が関わっています。麻痺が起こる原因とあわせて、階段昇降が難しくなる理由も理解しておきましょう。
麻痺が起こる主な原因
麻痺はさまざまな要因で起こる症状です。主に、以下のような原因が考えられます。
- 脳血管疾患(脳梗塞や脳出血など)
- 神経の圧迫(顔神経麻痺や手根管症候群など)
- 筋ジストロフィー
- 多発性硬化症
上記以外にも、長時間同じ姿勢を取ることによる神経の圧迫や、フグやきのこなどの自然毒の摂取などが挙げられます。全身が動かせない四肢麻痺や片側の上下股が動かない片麻痺など、症状の程度はさまざまです。
階段昇降が困難になる理由
麻痺があると、筋力やバランス能力の低下、運動制御の障害などが起こるため、階段の昇り降りが困難になります。また、転倒への恐怖心や不安感など、心理的要因も階段昇降が難しくなる理由の一つです。
これまで自然にできていた動作でも、思うように動かせない箇所があると、一連の動作手順をその都度考えて判断する必要があります。麻痺がある場合は、その判断と実行に時間がかかるようになるため、より一層階段昇降が難しくなるのです。
階段昇降を自力でできるようになるためには、焦らず、段階的にリハビリを進めていく必要があります。どのように進めていけば良いのか、階段昇降を安全に行うためのポイントをチェックしておきましょう。
片麻痺がある方も階段昇降を安全に行うためのポイントを紹介

ここでは、片麻痺の方が階段昇降を獲得するために、押さえておきたいポイントを紹介します。階段昇降の訓練は転倒や事故によるケガのリスクが高いため、一人で行わずに、専門家や介護者と一緒に取り組みましょう。
身体の使い方を覚えよう
片麻痺の方が階段昇降を安全に行うためには、まずは「二足一段」から始めましょう。
<二足一段のポイント>
- 麻痺している側の足は下段、麻痺していない側の足は上段になるようにする
- 一段昇ったら、両足を同じ段に揃える(二足一段)
- 連続で進まない
階段昇降は平地の歩行と比べて転倒リスクが高いため、ゆっくりと自分のペースで行うことが大切です。
また、前向きでの階段昇降(前方アプローチ)が難しい場合は、後ろ向きでの階段昇降(後方アプローチ)を取り入れてみると良いでしょう。後方アプローチは、前方アプローチよりも動作の難易度が下がるため、不安感がある方にもおすすめです。
これらの訓練を行う際は、転倒やケガを防ぐためにも、必ず介護者とともに取り組みましょう。
専門家と行うリハビリ方法
麻痺のある方が階段昇降を行えるようになるためには、筋力とバランス能力の向上が必要です。特に、階段昇降では麻痺側に体重をかけられるかが重要になるため、下肢と体幹の筋力強化が必要不可欠です。
スクワットや起立、その場での足踏みなど、麻痺側への荷重を意識して訓練を行います。理学療法士の指導のもと行えば、それぞれに合ったプログラムを組んでもらうことができ、より質の高いリハビリを受けることが可能です。
必要に応じて下肢装具を活用しながら、無理のない範囲で進めていきましょう。
自宅でのトレーニングも効果的
階段昇降の獲得を目的とする自宅でのトレーニングは、下肢を強化する運動がおすすめです。
<太もも上げ>
- 背もたれに寄りかからないように椅子に座る
- 左右交互に、太ももをゆっくりと上げる
→10回程度
<つま先上げ>
- 背もたれに寄りかからないように椅子に座る
- かかとを床につけて、麻痺側のつま先をゆっくりと上げ下げする
(麻痺側だけ動かすのが難しい場合は、両足でもOK)
→10回程度
座りながらできるため、比較的安全に取り組めます。トレーニングを行う際は、無理をせず痛みや違和感がある場合は中断するようにしましょう。
麻痺があっても階段昇降を諦めない!杖の使用方法とリハビリ継続のコツ

麻痺がある方が階段昇降の獲得を目指すには、段階的にリハビリを進めることが重要です。焦って進めると逆効果になる可能性があるため、無理せず自分のペースで行うことを心がけましょう。
ここでは、リハビリ継続のコツとあわせて、杖の使用方法や自宅環境を整えるポイントを解説します。
段階的にリハビリを進める
階段昇降の獲得に向けたリハビリは、段階的に進めることが重要です。焦って無理な訓練を行うと、転倒リスクが高まり、ケガや事故によってリハビリが中断してしまう可能性があります。
まずは、手すりのある安全な場所で足運びや重心移動などの練習を行い、一段ずつ確実に足を上げられるようにしていきましょう。その後徐々に段数を増やしていき、足の運び方や身体の傾け方など、昇降に必要なテクニックを習得していきます。
最初は専門家や介護者にサポートしてもらい、慣れてきたら徐々に一人で行えるように練習していきましょう。
杖を使用する
麻痺のある方が階段昇降を行う場合、杖を利用するのもおすすめです。杖は、健側(麻痺していない側)で持ちます。階段を昇る際の順番は、以下のとおりです。
- 杖を先に上段に上げる
- 麻痺していない下肢を上段に上げる
- 麻痺側の下肢を上段に持ち上げる
降りる際も同様に、杖を先に動かします。慣れないうちは動作の順番を考えながらゆっくりと行い、無理のないペースで練習を進めていくことが大切です。
自宅環境を整える
自宅環境を整えるのも、リハビリの継続には欠かせない要素の一つです。自宅の廊下や階段には、手すりや滑り止めマットの設置を検討しましょう。手すりが片側にしかない場合は、真ん中または両側に設置すると安心です。
また、段差のある箇所には踏み台やスロープを設置すると良いでしょう。「どのような物が必要かわからない」という方は、担当のケアマネジャーや地域包括センターなどに相談するのがおすすめです。
専門家に相談することで、身体状況や自宅環境に合わせて、適切な方法をアドバイスしてもらえます。
FAQ|麻痺のある方の階段昇降についてよくある質問

Q:麻痺が起こる原因は何が多いですか?
A:脳梗塞や脳出血、脊髄損傷などが代表的です。原因によってリハビリの内容や回復の過程が異なるため、まずは医師による正確な判断が必要です。
Q:麻痺があると階段の昇り降りが難しくなるのはなぜですか?
A:麻痺によって筋力低下や感覚の鈍さ、バランス能力の低下などが起こるため、階段昇降のような複雑な動作は負担が大きくなるのです。平地歩行に比べて重心移動が大きく、踏ん張りや片足支持が必要なため、安全性が低下しやすくなります。
Q:階段昇降を安全に行うために、まず取り組むべきことは何ですか?
A:まずは、正しい足の順番を習得して、ゆっくりとした動作で行いましょう。麻痺側の足を上げるタイミングや支え方を理解するだけで、転倒リスクが大幅に下がります。
Q:自宅でできる、効果的なトレーニングはありますか?
A:片足立ちや足上げ運動、つま先上げなどの軽いトレーニングが効果的です。安全のために、必ず壁や手すりに掴まり、無理のない範囲で行いましょう。
Q:福祉用具を活用すれば、階段昇降が楽になる可能性はありますか?
A:手すりの追加や滑り止めの設置などを行えば、安全性が格段に向上します。介護保険で費用補助を受けられることもあるため、ケアマネジャーに相談してみると良いでしょう。
まとめ|麻痺があっても自力で階段昇降するには小さな積み重ねが大切

麻痺があると、階段の上り下りは想像以上に体へ負担がかかります。足を上げる動作やバランスを取ることが難しくなるため、不安を感じる方も多いです。でも、正しい体の使い方を学び、コツをつかみながらリハビリを続けていけば、自分の力で階段を昇り降りできるようになる可能性は十分あります。
また、階段の練習だけでなく、体を支える筋力アップや、バランスを整えるトレーニングも大切です。これらを組み合わせることで、日常の動きが少しずつ安定していきます。
さらに、自宅の環境を整えることもとても重要です。たとえば、手すりを設置したり、滑り止めをつけたりすることで、転びにくくなり、安全性が大きく向上します。 家の環境が整っていると、安心して練習を続けられます。
階段昇降ができるようになるためのポイントは、「無理をしないで、できることをコツコツ続けること」です。たとえ小さな変化でも積み重ねれば、体の動きは確実によくなっていきます。
そして、一人で頑張る必要はありません。家族や理学療法士などの専門家のサポートを活用することで、より安全に、より確実にステップアップできます。困ったときは相談しながら、自分らしい生活を取り戻すための前向きな一歩を踏み出していきましょう。





