
クローヌスに対するアプローチ方法とは|原因を理解して適切な治療に取り組もう
2025.09.12

「膝関節が勝手にガクガク動く」「足首がピクピク動くのを止められない」などの症状は、クローヌスが疑われます。クローヌスは、足首や膝の関節に現れやすく、自分の意思とは関係なく筋肉が動いてしまうのが特徴です。
症状は自分では止められないため、座位や立位が不安定になったり、歩行が困難になったりすることもあります。日常生活動作が難しくなると自立度が低下し、介助が必要になる可能性もあるため、早めに適切な治療・リハビリを行うことが重要です。
この記事では、クローヌスが起こる原因の解説とあわせて、治療法や自宅でできる対処法も紹介します。
目次
クローヌスはなぜ起こる?痙縮との違いは?足首・膝がピクピク動く理由

クローヌスが発生すると、足首や膝の関節がピクピク動いて自分では止められないため、日常生活に大きな影響を及ぼします。では、なぜクローヌスが引き起こされるのでしょうか。
まずは、クローヌスが起こる原因を理解し、適切な対処ができるようにしておきましょう。
クローヌスとは
クローヌスとは、自分の意志とは関係なく、ピクピクとリズミカルに筋肉が繰り返し動いてしまう異常な運動現象のことを指します。特に、足首や膝の関節などによく見られる現象で、貧乏ゆすりのような動きになるのが特徴です。
自分で止めることができないため、座位・立位が不安定になり、転倒や転落のリスクが高まります。また、寝ているときに発生して睡眠の妨げになることも珍しくありません。
このように、クローヌスは日常生活に大きな影響を及ぼすため、なるべく早く適切な治療を行うことが大切です。
クローヌスの原因
クローヌスは、脳卒中や脊髄損傷などの中枢神経系の障害によって引き起こされる、筋肉の亢進反射が主な原因です。(亢進反射:通常よりも反射が強く現れる症状)
通常、脳や脊髄からの抑制指令によって伸長反射は調整されていますが、脳や脊髄に障害が起こると抑制が効きにくくなります。これにより、筋肉がわずかな刺激に過剰に反応して、クローヌスが発生するのです。
クローヌスと痙縮の違い
どちらも神経系の障害であるクローヌスと痙縮ですが、それぞれ異なる特徴があります。
<クローヌス>
- 自分の意思とは関係なく筋肉がピクピク動く異常な運動現象
- 筋肉がリズミカルに収縮と弛緩を繰り返す
- 痙縮によって引き起こされることもある
<痙縮>
- 筋肉が過度に緊張して硬くなる状態
- 手指が曲がったまま伸びない、開かないなどの症状
- 痛みや不快感が出ることもある
どちらの症状であっても、早期の治療開始とリハビリ介入によって、改善に期待ができます。
その症状!クローヌスかも…簡単な確認方法と日常生活に及ぼす影響

「足首が勝手にピクピク動く」「膝関節が動くのを自分で止められない」などの症状が見られたら、クローヌスが発生しているかもしれません。症状が進行すると、日常生活に影響を及ぼし、何を行うにも介助が必要になるおそれがあります。
放置する危険性を理解し、早期に適切な治療やリハビリを始めることが大切です。
クローヌスの確認方法
足や膝の関節に起こることが多いクローヌスは、以下の方法で判断できます。
<膝関節の確認方法>
- 膝を伸ばして仰向けになる
- 膝蓋骨を持って下方に押し下げる
…膝蓋骨が上下に連続的に動いたらクローヌスと判断される
<足関節の確認方法>
- 膝を軽く曲げて仰向けになる
- 足の甲を足首のほうに引き寄せる(背屈させる)
…足関節が連続的に動いたらクローヌスと判断される
参考:一般社団法人日本神経学会「神経学的検査チャート作成の手引き」
日常生活動作が困難になる
クローヌスは、足首や膝の関節が勝手にピクピク・ガクガクと動いてしまうため、日常生活に大きな影響を与える可能性があります。
- 歩行困難による転倒や怪我のリスクの増加
- 座位が不安定になる
- 膝の痛みや腰痛が現れやすくなる
クローヌスが発生すると、身体的な不自由さが増すことで自立度が低下します。その結果、何を行うにしても介助が必要となり、生活の質の低下や精神的ストレスの増加につながります。
尖足になる危険性も…
クローヌスを放置すると、足首が足底方向に固定される尖足を伴うことがあります。これは、クローヌスが続くことで下腿三頭筋(ふくらはぎ)の筋緊張が高まることが原因です。
尖足は、つま先が下を向いたまま固定されてしまう状態で、特に歩行能力に大きな影響を及ぼします。悪化すると治療が困難になることもあるため、早めに医師や専門家に相談し、適切な治療やリハビリ、ストレッチなどを行うことが大切です。
クローヌスは止められる?自宅・医療機関でできる対処法

クローヌスの症状改善を目指すには、医療機関での治療はもちろん、自宅でのストレッチや運動も大切です。また、専門家に介入してもらうことで、より質の高いリハビリを行えます。
自宅でできる対処法と医療機関での治療法を、詳しく見ていきましょう。
【自宅でできる】3つの対処法
自宅でもストレッチやリハビリを行うことで、クローヌスの症状軽減に期待できます。
<自宅で意識したいこと>
- ストレッチで筋緊張を抑制させる
- 深呼吸や軽いマッサージなどで心身をリラックスさせる
- 無理のない運動習慣を身につける
ストレッチは、間違った方法で行ったり無理に伸ばしたりすると悪化するおそれがあります。正しい姿勢を確認しながら、痛みを感じない程度の強さで数十秒ゆっくりと伸ばしましょう。
【医療機関で行う】3つの治療法
医療機関では、主に以下の3つの治療を行います。
- 装具療法
- ボツリヌス治療
- 物理療法(温熱療法や電気刺激療法)
ボツリヌス治療は、毒素を直接筋肉に注射して筋緊張を低下させるのに効果的な治療法です。ただし、定期的な注射が必要となるため、治療費がそれなりにかかります。ボツリヌス治療を希望する方は、まずは医師と相談するのがおすすめです。
専門家とのリハビリも効果的
クローヌスのリハビリは、自己判断で行うと症状が悪化し、治療が困難になることがあります。そのような状態を避けるためにも、理学療法士や作業療法士などの専門家とリハビリを行うのがおすすめです。
専門家なら、原因を理解したうえで状態にあわせた適切なアプローチを選択し、効率的かつ効果的なリハビリを実施できます。例えば、理学療法士と作業療法士の場合は、以下のようなリハビリが可能です。
- 理学療法士
身体の動きの評価を行い、運動療法を中心にクローヌスの改善や機能回復を目指す
- 作業療法士
日常生活動作に与える影響を評価し、より具体的な生活動作の改善に向けたアプローチを行う
このように、専門家ごとに役割や目的が異なるため、まずは医師の診断を受けたうえで自分に必要なリハビリを選択するのがおすすめです。状態にあったアプローチができれば、早期の症状改善にも期待ができるでしょう。
まとめ|クローヌスの症状を軽減させて自立した生活を取り戻す!

クローヌスとは、自分の意思とは関係なく、筋肉がピクピクとリズミカルに収縮と弛緩を繰り返す現象です。普通の動きとは違う「異常な運動」であり、症状が進むと手足を自由に動かせなくなり、日常生活の動作が難しくなることがあります。場合によっては、食事や着替えなど身近な行為でも介助が必要になるおそれがあります。
症状を悪化させないためには、医療機関での治療や専門家によるリハビリが欠かせません。さらに、自宅でできる簡単な運動やストレッチを組み合わせることで、症状の緩和や機能改善を目指すことができます。大事なのは、正しい方法で無理なく続けることです。
もしクローヌスの症状が軽くなれば、自立度の低下を防ぐことができ、生活の質を高めることにつながります。ただし注意点として、ストレッチや運動を自己流で行うと、かえって症状を悪化させてしまう危険があります。そのため、まずは医師に相談し、専門家の指導を受けながらリハビリを進めることが重要です。専門家が介入することで、一人では難しい部分もサポートされ、より質の高いリハビリが可能になります。