リハビリのやる気ない高齢者には5つの課題が潜む…顕在化しない悩みを解決するための手段とは?
2025.01.01
大切な家族にリハビリを促したいけれど、本人のやる気がなくなかなか進まない⋯といった状況に悩む方は多いのではないでしょうか?
リハビリは本人のやる気が伴わなければ効果を発揮できません。なぜならリハビリ場面だけの訓練で完結してしまうケースやリハビリ自体を拒否してしまうケースもあるからです。
リハビリに拒否的でやる気ない高齢者に対しては、本人が意欲をなくしている原因を理解し、原因解決に向けたアプローチが必要でしょう。
今回は、意欲低下の原因と5つの対処法について解説します。
目次
【家族・専門職向け】リハビリのやる気ない高齢者(老人)に対する悩み
まずは、リハビリを嫌がるなどやる気ない高齢者によくあるケースと、意欲低下にはどのような原因が考えられるのかを確認します。2つの仮定から現在の状況を理解しましょう。
家族・専門職が抱える「リハビリしてくれない」の事例
- 在宅での自主トレ(家族/専門職視点)
- 一緒に出かけられるようになりたいのにリハビリに取り組まない(家族視点)
- 自分のことは自分でやって欲しい(家族視点)
- 訪問した際に嫌がる(専門職視点)
- 部屋にこもりっぱなしなのでもっと活動してほしい(家族視点)
- 「やっても変わらない」「めんどくさい」などの理由で拒否する(家族/専門職視点)
- 声をかけても反応がない・無視される(家族/専門職視点)
- いつも体調が悪いと言う(家族/専門職視点)
これらの事例から、高齢者がリハビリを拒否する理由や場面は多様であることがわかります。「やる気がない」で片付けるのでなく、その言動の背景に潜む本人の思いや状況を理解する必要があります。
主体的に行えない2つの仮定
リハビリ意欲の低下には、身体的な要因と精神的な要因が考えられます。
- 〈身体的な痛み/不調その他に問題がある〉
高齢者は加齢に加え、活動性の低下によって筋力の低下や関節が固くなったりします。その影響で痛みや疲れやすさなどが出現しやすくなり、リハビリを嫌がることも。
他には認知症による理解力の低下や意欲の低下も考えられます。特に、脳卒中は脳の血管が損傷を受けるため、認知症を発症しやすくなります。
また、睡眠不足や食事量の低下などにより体調が優れず、意欲がわかないケースも考えられるでしょう。
- 〈精神的な問題〉
本人が障害を受け入れられず、自身の身体の変化や生活の変化を認められない場合、リハビリ自体を拒否する傾向があります。
また高齢になると、生活環境の変化に対応できず抑うつ傾向になる場合もあります。例えば、退職による役割の喪失や、身近な家族・友人などとの死別など、無気力になる要因が多く存在するのです。
【5つの課題】リハビリのやる気ない高齢者には環境設定が重要!
リハビリへの参加意欲が乏しくやる気ない高齢者には、以下の5つの問題が潜んでいる可能性があります。リハビリ意欲低下の要因を正しく理解することで、個に応じたリハビリ環境を設定することができるのです。
①現在進行しているリハビリプランがフィットしていない
現在のリハビリプランが合わず、なんらかの苦痛を感じていたり負担になっている可能性があります。身体的に負担はないか?本人のニーズにマッチしているか?などの検討が必要です。リハビリの専門職に相談し、プランの見直しを行いましょう。
②リハビリのやる気ない高齢者との会話(確認)不足
なぜやる気が出ないのか、本人と丁寧に話し合っていますか?リハビリを無理強いしてはいけません。焦らず、まずはリハビリを拒否する理由を丁寧にヒアリングしましょう。特にリハビリ担当者には信頼関係の構築が求められます。
③自覚なき意欲低下「アパシー」
アパシーは認知症の症状のひとつで、物事への関心・意欲が乏しくなります。本人は無自覚のため、周囲の人が症状を理解し、正しく対応することが求められます。
④モチベーションにつながる目標設定が適切ではない
適切な目標設定がされていなければ、リハビリの必要性を感じなかったり、慢心でリハビリをするだけになり、意欲は上がりません。本人がどうなりたいのか、目標達成のために必要な機能は何でどんなリハビリが必要なのか、明確に提示しましょう。
目標は専門職と一緒に設定し、適宜フィードバックやアップデートを行うとモチベーションを維持しやすくなります。
⑤今のリハビリ環境が適当ではない
本人が通所によるリハビリを負担に感じている可能性はないですか?人目を気にする方や騒がしい環境が苦手な方もいるかもしれません。また周囲のサポート不足やセラピストとの関係が構築できていないなども、リハビリ意欲に大きく影響します。
リハビリ環境が合っていないかも?と感じたら、リハビリのセカンドオピニオンを受けてみるのもよいでしょう。
参考:浜松医科大学「何がリハビリテーションに対する患者の意欲を高めるのか?~患者・医療者間の意見の一致と相違~」
正しい環境=本人の意欲が高まる状態?サポートする人の心がけ
リハビリの意欲低下は本人だけの問題ではありません。周囲のサポートにより環境を整えることで意欲は高まるのです。家族や専門職が心がけるべきポイントを整理します。
〈家族×専門職〉コミュニケーションで情報共有を
リハビリ意欲の向上には家族と専門職の連携も必要です。家族からみた本人の体調や日常生活動作、もっと強化した方がよいと感じることなど、本人からは聞き取れない情報を専門職と共有しましょう。
また専門職から家族にリハビリの様子を伝えることも大切です。リハビリでできるようになったことを共有し、家族から本人へ「こんなことができるようになって嬉しい」といった声かけをすることで、本人のさらなるやる気へつながるでしょう。
本人と、本人に関わるすべての人たちが孤立することがないよう、日頃から良好なコミュニケーションを心がける必要があります。
リハビリに集中できる環境設定を目指そう
リハビリの意欲ない高齢者には、意欲の向上が期待できる適切なリハビリ環境を提供する必要があります。
もし本人がリハビリの必要性を感じていないようなら、リハビリの必要性の理解が、やる気ない高齢者の参加を促す一歩となるでしょう。
また、リハビリ内容の工夫や成果を具体的に示すことも、リハビリ意欲のない高齢者のモチベーションアップにつながる可能性があります。
通所リハビリに抵抗があるようなら、訪問やオンラインリハビリの選択も有効です。
まとめ|リハビリのやる気ない高齢者
リハビリにやる気を持てない高齢者に対して、家族やリハビリの専門職など周囲の人々は、つい焦りを感じてしまうことが多いものです。しかし、まずは本人の気持ちに寄り添い、やる気が低下している原因を一緒に考えることが大切です。必ず、拒否する理由が背景に隠れているはずです。
その理由は、決して本人だけの問題ではありません。周囲のサポートと、リハビリ環境を整えることが欠かせないのです。
本人の身体的・精神的な状態を丁寧に見極めながら、専門職と連携して個別にアプローチすることで、意欲を引き出し、自主的にリハビリに取り組めるようになる可能性が高まります。
大切なのは、本人、家族、そしてリハビリの専門職がしっかり情報を共有し、安心して意欲的にリハビリに向き合える環境を作ることです。焦らず、一歩ずつ取り組んでいきましょう。