エイリアンハンド症候群は治る?リハビリの効果や日常生活動作の工夫とは
2024.09.02
手が勝手に動いて思ったように動作ができないエイリアンハンド症候群に悩まされる方がいらっしゃいます。意思とは関係なく手が動くと日常生活動作や仕事に支障をきたし、今後が不安になってしまうでしょう。
エイリアンハンド症候群には明確な治療法はありませんが、リハビリが症状改善に有効だといわれています。リハビリで症状を軽減する方法や症例を知っておくと、今後の見通しが立ちやすいです。
エイリアンハンド症候群があっても、日常生活動作をしやすくする工夫もご紹介します。できる動作を増やして自信を取り戻せるようにしましょう。
目次
エイリアンハンド症候群の原因は何?予後や治るのかどうかも解説
エイリアンハンド症候群は、手が勝手に動いたり、動かそうとすると阻止する動きが出る症状が特徴です。「他人の手徴候」ともいわれます。症状が強いと日常生活に支障がでたり、見た目を気にしたりする方が多いです。原因や予後について解説します。
原因は脳の損傷
エイリアンハンド症候群の原因は前頭葉内側部・脳梁・前部帯状回・後部頭頂皮質の損傷など、脳の障害です。脳卒中のほか、外傷・脳腫瘍・神経変性疾患なども原因となります。
脳の運動をコントロールする部位の障害が起こると、手を動かしたり止めたりする意図的な制御が失われ、エイリアンハンド症候群になる患者さんがいるのです。
主な症状と周辺症状
エイリアンハンド症候群では、次のような動作がみられます。
- 強迫的把握
…自分の意図に反して手が勝手に物を掴もうしたり、掴んだ後にその手を離せなかったりする症状です。何かに触れると自動的に掴もうとする場合もあります。
- 道具の強制使用
…目に入った道具を意識せずに使い始めてしまう症状です。ペンを見たら無意識に手に取って何かを書き始めてしまうなどの動作がみられます。
- 両手間の対立
…健側の手が行っている動作とは逆の動作を患側がする症状です。例えば、シャツのボタンを健側で留めている時に患側は外そうとします。
また、脳卒中が原因の場合は、運動麻痺・感覚障害・高次脳機能障害を合併する可能性が高いです。
エイリアンハンド症候群は治る?
エイリアンハンド症候群の消失時期は発症後2〜3ヶ月以内で、1年以内に68%の患者さんが症状が減少すると報告されています。しかし、症状が残ってしまい、慢性化する患者さんもいるのが現状です。
脳障害部位や障害の程度によっても変わるため、症状の経過が気になる方は主治医に相談し、検査や評価をしてもらうのが良いでしょう。
参考:エイリアンハンド症候群の手の能動的使用に対する段階的訓練の効果
エイリアンハンド症候群にはリハビリが有効!改善した症例とは
エイリアンハンド症候群の経過は個人差が大きく、治る・治らないとは言い切れません。しかし、エイリアンハンド症候群の症状を軽減するにはリハビリが有効だといわれています。症状の改善がみられた症例とともに、リハビリの効果をおさえておきましょう。
エイリアンハンド症候群のリハビリの目的
手の動きの再教育と意識的なコントロールの獲得が、エイリアンハンド症候群に対するリハビリの目的です。周辺症状の改善と併せてリハビリを実施し、日常生活動作を行いやすくします。
緊張時に症状がひどくなる方もいらっしゃるため、精神的なサポートも必要です。必要に応じてカウンセリングや心理療法を勧められる方もいらっしゃいます。
運動麻痺の改善とともに症状が消失した例
脳梗塞により右脳に障害を負った60代後半の女性のケースです。リハビリを実施したところ、運動麻痺の改善と同時にエイリアンハンド症候群の症状が軽減したという報告があります。
エイリアンハンド症候群と同上肢に運動麻痺がある症例では、意図的な運動が困難です。自分の手であるという自己所有感が低下し、他人の手のように感じやすくなると考えられています。この例から、エイリアンハンド症候群の軽減には、運動麻痺を改善するためのリハビリも必要だといえるでしょう。
集中的なリハビリで症状が改善した例
左の脳梗塞を発症した患者さんに対し、集中的にリハビリを行ったところ、1週間でエイリアンハンド症候群の症状が軽減したという報告があります。訓練用コーンを両上肢で指定した場所へ同時に移動するなど、両上肢を積極的に使用するリハビリを実施したそうです。
この症例は脳梗塞発症から1年3ヶ月経った状態での介入だったため、発症から時間が経っていてもリハビリは有効だといえるでしょう。
参考:他人の手徴候の改善に運動麻痺の軽減が関与したと考えられた1症例
参考:脳卒中後Alienhandsyndromeに対する低頻度反復性磁気刺激療法と集中的作業療法
勝手に手が動いて困る…エイリアンハンド症候群の日常生活の工夫
自分の意思とは関係なく手が動いてしまったり、行いたい動作と逆の動きがみられると日常生活や仕事に支障がでます。リハビリの効果はありますが、症状はすぐに改善しないかもしれません。エイリアンハンド症候群の症状があっても、日常生活を送りやすくする工夫をご紹介します。
回復に重要な要素
使っている上肢に注意が向けられるかどうか、意図的に使用しているかが回復のポイントです。特に非利き手は日常的に補助的な役割を担うため、注意を払いにくいといわれています。また、右半球の障害の場合は上肢の無視や病識の低下があるため、高次脳機能障害に対するリハビリも必要だといえるでしょう。
日常生活でできる工夫
緊張時は症状が強く出やすいため、動作時は一呼吸おくのがポイントです。症状が強い場合は、難しい動作を避け、習得した動作を反復して行いましょう。
また、エイリアンハンド症候群がみられる手を机の下で柱を握って使用しないようにする工夫をすると、強制的把握がみられにくくなります。症状がみられる上肢を使う時は視覚的な確認をし、手に対しての意識を高めるのが重要です。
リハビリを続けたい場合はどうする?
症状が長引いている場合、医療保険を使ってリハビリを継続するのが難しい方がいらっしゃいます。その場合は、介護保険や自費リハビリを利用しましょう。介護保険は要介護認定が必要なため、市町村の窓口で申請をします。自費リハビリは保険が使えないので、費用がかかりますが、制度に縛られずにリハビリを受けられます。
まとめ|エイリアンハンド症候群は治る?
エイリアンハンド症候群という病気は、手が自分の意志とは関係なく勝手に動いてしまったり、やりたいこととは逆の動きをしてしまうため、普段の生活や仕事で大きな困難を引き起こすことがあります。例えば、物を取ろうとしたときに、手が勝手に違う動きをしてしまうなど、日常生活に支障をきたすことがあります。
この症状に対しては、リハビリが効果的とされていますが、症状がすぐに改善することは難しいかもしれません。それでも、日常生活を少しでも楽にするために、自分に合った工夫を取り入れることや、自費で訪問リハビリを受けるという選択肢もあります。たとえば、リハビリの際に専門家からアドバイスを受け、日々の生活の中で無理のない範囲で練習を続けることが大切です。
リハビリは、時間がかかることがありますが、諦めずに取り組むことが重要です。保険が適用されなくても、自分の将来を見据えて、専門家と一緒にリハビリを続けることで、少しずつでも症状が改善される可能性があります。また、家族や友人など、周りの人たちのサポートも大切です。孤立せずに、周囲の助けを借りながら、エイリアンハンド症候群と向き合っていきましょう。これにより、生活の質を向上させ、より良い未来を目指して進んでいくことができます。