ぶん回し歩行の改善方法はある?原因・症状・自主リハビリ方法を解説
2024.06.29
脳卒中後、片麻痺になり姿勢や歩き方が変わって不安を持つ方が多いでしょう。歩行時に見た目が大きく変わってしまったり、疲労感がでたりする歩き方が「ぶん回し歩行」です。
歩けている状態ではありますが、ぶん回し歩行を放っておくと他の部分の痛みの原因になったり、外出の機会が減ったりする可能性があります。この記事では、ぶん回し歩行の症状・原因から対策を、実際にリハビリの効果があった症例や論文をもとにご紹介します。
自主トレーニング方法もご紹介するため、ぶん回し歩行を改善して、生活の質を上げたい方は参考にしてください。
目次
膝に痛みが出る可能性も…ぶん回し歩行とはどんな症状?
ぶん回し歩行は脳卒中後の片麻痺の方に起こる歩き方の変化です。ぶん回し歩行を続けると膝の痛みにつながってしまいます。痛みは豊かな日常生活を妨げるため、できるだけ避けたいところですね。ぶん回し歩行の原因や痛みが出やすい部位を知っておきましょう。
ぶん回し歩行の症状と原因
ぶん回し歩行とは、脳卒中後の運動麻痺によって引き起こされます。つま先を外に向けて脚を伸ばした状態で股関節から脚を回すように歩くことから、ぶん回し歩行といわれています。
ぶん回し歩行は、麻痺による以下のような症状が原因です。
- 足首の曲げ伸ばしができない
- 膝が曲がらない
- 麻痺側へ体重がかけられない
- 麻痺がない方に重心が寄ったり、体幹が傾いたりする
- 関節の制御がスムーズではない(協調運動の障害)
ぶん回し歩行は歩行速度が遅くなったり、歩行への疲労が出やすくなります。また、周囲の目線が気になり、外出機会が減る原因にもなるのです。外出ができないと運動機能だけではなく、認知機能も低下する悪循環が起こります。
ぶん回し歩行が続くと膝が痛む可能性あり
ぶん回し歩行が続くと薄筋(はっきん)が伸ばされ続け膝の痛みが出るかもしれません。薄筋とは、骨盤の恥骨から膝の内側についている筋肉で、股関節を曲げたり内側に閉じたりする機能を持っています。ぶん回し歩行が続くと薄筋が伸ばされ、膝に痛みが出てしまうのです。
また、骨盤から太ももの骨についている恥骨筋(ちこつきん)が凝りやすくなり、神経が締め付けられる可能性があります。恥骨筋の中を通る閉鎖神経は膝の内側を支配しているため、膝の痛みにつながりやすいのです。
参考:Q&AVol.367【臨床で困るぶん回し歩行!】脳卒中患者さんの膝痛に関するQ&A
歩く動作の見た目を改善したい!ぶん回し歩行への3つの対策方法
ぶん回し歩行は歩き方が不安定になるほか、健常者とは異なる歩き方になってしまうため、周囲の目が気になる方がいらっしゃるでしょう。ぶん回し歩行はリハビリや装具を使うと改善できることがわかっています。ぶん回し歩行への対策方法は以下に紹介する3つです。
①動作の協調性を向上させる
歩行の動作は、脚だけでなく骨盤・股関節・膝関節・足部の関節がなめらかに動くことが重要です。そのため、ぶん回し歩行を改善するには、動作に必要な関節の協調性を向上させるのが重要です。
骨盤と下肢の協調性を改善したところ、ぶん回し歩行が改善した症例も報告されています。この症例では、歩く時に腹筋がうまく働かず、骨盤と下肢の協調性が損なわれていました。片脚ブリッジを行って腹筋の収縮を促したところ、ぶん回し歩行が改善したそうです。
②足首・膝・股関節のトレーニング
運動麻痺がある部位は筋力の低下・筋肉の萎縮による可動域制限がみられやすいです。特に筋肉が短くなって関節の動く範囲が狭くなると、筋力が戻ってもすぐにぶん回し歩行は改善できないかもしれません。
リハビリ場面では足首・膝・股関節のトレーニングやストレッチが行われる場合があります。
③下肢装具を使う
ぶん回し歩行には体のトレーニングも必要ですが、改善には時間がかかる場合があります。その場合、下肢装具が検討されるかもしれません。短下肢装具を取り入れると足首を曲げた状態を作れるので、ぶん回し歩行が軽減するという報告があります。
参考:麻痺側内腹斜筋の活動性向上により非麻痺側の分回し歩行が改善した脳梗塞後遺症患者の一例
参考:東北大学工学研究科・工学部「超軽量リハビリ装具で脳卒中患者の歩行を改善」
ぶん回し歩行の改善には日常生活の中でのリハビリが不可欠
退院後の方がぶん回し歩行を改善するには、日常生活の中で自主リハビリをするのも重要です。ご自宅でできるトレーニングやストレッチの例をご紹介するので、ぶん回し歩行を改善したい方は取り組んでみてください。自主リハビリを行うさいの注意点も紹介します。
台を使ったトレーニング
踏み台や家の段差・階段でできる簡単なトレーニングです。股関節から曲げるように台に足をのせる動きを15回行います。台があるため、ぶん回し歩行の動きが出にくく、股関節や膝関節を協調的に動かせる方法です。
最初は足をなめらかに台に乗せられないかもしれません。どのように動かしたいかをイメージするだけでも筋肉や脳は運動を学習していくので、焦らずに取り組んでみてください。
脚の筋肉のストレッチやトレーニング
関節可動域や筋力が低下するのを防ぐために、以下の運動を取り入れてみましょう。
- 足首のストレッチ
…座った状態で麻痺がある脚を伸ばします。足の裏にタオルをかけて、タオルを自分の方へ引っ張るようにしましょう。足首の可動域を保つためのストレッチです。
- 膝を曲げる筋肉を鍛えるトレーニング
…歩行の時に膝を曲げられないとぶん回し歩行になるため、太ももの裏側の筋肉を鍛えましょう。うつ伏せになり、脚を伸ばした状態から、片方ずつ膝を曲げる運動がオススメです。
- 股関節を曲げる筋肉を鍛えるトレーニング
…仰向けで膝を曲げた状態から、膝をお腹に近づけるように股関節を曲げましょう。麻痺があって片方ずつの動きが難しい方は、両脚をタオルなどで固定し、同時に動かすようにします。
自主リハビリの注意点
日常生活の中で繰り返し自主リハビリをするのは、ぶん回し歩行の改善に効果的です。以下の点に注意すると、より安全・効果的に取り組めます。
- 無理な動作・痛みが出る動作はしない
- リハビリを受けている場合はスタッフに指示を仰ぐ
- 現在リハビリをしていない場合は自費リハビリや介護サービスを活用する
自主リハビリを効果的に取り入れてぶん回し歩行を改善し、生活の質を向上させていきましょう。
まとめ|ぶん回し歩行について
ぶん回し歩行は、麻痺による以下のような症状が原因とされています。足首の曲げ伸ばしができなかったり、関節の制御がスムーズに行えないことなどが原因として挙げられます。
ぶん回し歩行に関しては「後遺症だから仕方ない」と諦めている方も中にはいるでしょう。しかし、膝を痛めるケースなど、その後の生活に支障をきたす痛みが生じることも考えられます。
ぶん回し歩行の原因と対処法を理解し、日々のリハビリの目的に「ぶん回し歩行の改善」なども入れてみるといいでしょう。