脳血管障害のリハビリ完全ガイド:回復期・維持期・180日超えまで徹底解説
2024.03.08
脳血管の異常が原因で起こる脳や神経の病気を総称して脳血管疾患といいます。脳梗塞や脳出血も脳血管疾患の1つです。
脳血管に障害が起こった場合は、早めの段階でリハビリを行う必要があります。脳血管治療後の回復期に集中してリハビリを行うことで症状を軽減させることができます。
脳血管疾患は寝たきりになる原因疾患の第一位なので適切な治療やリハビリについて知っておきましょう。その他にも、脳血管のリハビリのアプローチやリハビリの点数・負担額についても詳しく解説します。
目次
脳血管疾患はどんな病気?原因や特徴に応じたリハビリが必要
脳血管疾患といっても障害が起きる原因は様々です。高齢者によく見られる疾患ですが、原因として生活習慣も大きく影響するので若い人でも注意が必要です。
脳血管に起こる障害の原因や特徴を理解し、適切なリハビリを行いましょう。
脳血管疾患とはなにか
脳血管疾患は脳血管に関する病気の総称のことで、代表的なのは以下の6つです。
1、脳梗塞
脳の血管の一部が詰まり、血液が流れなくなることで発症します。
2、脳出血
脳の血管が破れて脳内出血を起こし、血液の塊が脳細胞を圧迫することで発症します。
3、くも膜下出血
くも膜と呼ばれる脳表面の膜と脳の空間に存在する血管が破裂し、くも膜の下に出血が生じることで発症します。
4、慢性硬膜下血種
脳膜下にじわじわと出血が起こり、血種となり脳を圧迫することで発症します。
5、高血圧性脳症
血圧130mmHg以上の急激な血圧上昇により脳内の血液循環が調整できなくなり発症します。
6、脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血などの脳血管の障害により発症する認知症です。
参考:全国健康保険協会・【脳血管疾患】突然死を招く恐ろしい病
脳血管に障害が起きる原因
脳血管の障害は大きくわけて脳梗塞と脳出血があります。脳梗塞は脳の血管が詰まり流れが悪くなることで起こり、脳出血は脳の血管が破裂して脳内に出血することで起こります。
脳梗塞や脳出血は主に血管の老化によって起こるので高齢者に多く見られる病気ですが、生活習慣や他の病気が大きく影響します。
例えば、高血圧や糖尿病は動脈硬化が促進され、脳梗塞や脳出血を引き起こすリスクが高まります。また、喫煙や過度の飲酒、運動不足などの生活習慣も脳血管疾患を引き起こす原因と考えられています。
脳血管の疾患にはリハビリが必要
脳血管疾患の症状は障害が起きた部位によって様々ですが以下のようなものがあります。
・意識障害
・半身麻痺
・感覚障害
・高次機能障害
・言語障害
・嚥下障害
また症状として出現したものがそのまま後遺症として残ることが多いと言われています。脳血管疾患の影響を最小限にするためには、原因の早期治療と適切なリハビリを行うことが重要です。
脳血管疾患のリハビリの流れ|回復過程に合わせたアプローチを
脳血管に障害が起こった場合はなるべく早くリハビリを行うことが推奨されています。脳血管疾患を発症してから退院後の自宅での生活期までそれぞれの症状に合わせたリハビリアプローチを行いましょう。
予後を左右する急性期のリハビリ
脳血管疾患のリハビリは、早ければ処置が終わってすぐにリハビリを始めるのが望ましいとされています。
回復期リハビリに向けて、体力の維持をすることで早期の社会復帰に繋がるのです。同じ体勢で長時間いないように「起こして、動かす」を目的としたリハビリを行います。
<急性期のリハビリ>
・ベッドの上で座位になる練習
・自分の手足を動かす練習
・関節可動域を維持する練習
集中的に行う回復期のリハビリ
急性期の症状が落ち着いた時期から半年かけて、リハビリ専門の病院などで集中的にリハビリを行います。
<回復期のリハビリ>
・麻痺の回復を促す運動
・筋力トレーニング、感覚障害へのアプローチ
・立つ、歩くなどの基本動作の練習
・着替えや食事など日常生活動作の練習
・高次機能障害へのアプローチ
・言語練習、嚥下練習
さらに、退院後の生活を想定して補助具の使用や、手すりの設置など住環境を整えていきます。
生活期に必要なリハビリは?
脳血管疾患の場合は回復期のリハビリが終わった後も後遺症が残る確率が高いです。安全に暮らせるように、生活環境に合わせた動作練習を行いながら、少しずつ活動範囲を広げていきましょう。
生活期のリハビリの目的は、回復した機能の維持だけでなく、今ある能力を最大限に生かし生活の質を向上させることです。そのためにも患者さん本人が目的をもってリハビリに取り組むことが大切です。
脳血管リハビリの点数や負担額は?180日を超えた後はどうする?
脳血管に障害が起きるとリハビリは欠かせないです。毎日リハビリを行うとなると、やはり料金が気になってしまいます。また脳血管疾患のリハビリは180日が期限です。180日を超えた場合はどうすればいいのでしょうか?
脳血管リハビリテーションの点数
脳血管疾患のリハビリテーション料は以下の通りです。
脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ):245点/単位
脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅱ):200点/単位
脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅲ):100点/単位
20分を1単位として、1人につき1日6単位まで算定が可能です。
通常1点10円で計算されるので、245単位=2450円となります。脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)の場合、1日6単位を30日行うと441,000円の費用となります。しかしほとんどは医療保険でまかなわれるので、合計金額の1割〜3割が自己負担となるでしょう。
参照:PT-OT-ST.NET「H001脳血管疾患等リハビリテーション料」
リハビリ期間が180日を超えた場合
脳血管疾患のリハビリの公的医療保険の適用は発症から最大180日までです。180日を超えると原則、医療保険内でリハビリを行える回数はかなり制限されます。
介護認定を受ければ介護保険適用となり、日数の制限がなく必要に応じてリハビリを受けることができますが、原則65歳以上が対象なので限られた人しか受けられません。
最近では医療保険外の自費リハビリという選択肢もあります。自費リハビリは高額にはなりますが、日数制限もなく、趣味や外出など本人の希望を基にしたリハビリプログラムの設定が可能です。
まとめ|脳血管の疾患に関するリハビリ
脳血管の障害が起きたら、なるべく早くリハビリを始めることで、障害の影響を最小限に抑えることができます。いつもと違う激しい頭痛が起きたり、手足のしびれを感じた場合は早めに病院を受診しましょう。
脳血管疾患は後遺症が残る可能性も高く、自宅に戻ってからもリハビリや補助具が必要になることもあります。機能の完全回復は難しいかもしれませんが、リハビリを続けることで今ある機能の維持や生活の質の向上は可能です。
脳血管疾患のリハビリは長期に及ぶことが多いので、家族のサポートや信頼できる医師や理学療法士の方に相談できる環境下で取り組みましょう。