ロコモティブシンドロームはリハビリで軽減可能?運動による予防&軽減策とは
2023.06.02
年齢を重ねるとよく耳にするのが「ロコモティブシンドローム」という言葉です。通称「ロコモ」とも呼ばれるこの疾患は、重度のものになると要介護リスクが高まるといわれています。
高齢になるとどうしても運動機能が低下してしまいがちです。運動機能の低下を軽減し、ロコモを予防するには運動療法…つまりリハビリテーションが役立ちます。
そこで今回は、ロコモティブシンドロームがリハビリで予防・軽減できる理由について解説します。将来ロコモにならないためにも、ぜひ参考にしてください。
目次
なぜロコモティブシンドロームになるのか…リハビリで予防可能?
まずはなぜロコモティブシンドロームになるのか、リハビリなど予防する方法があるのかについて解説します。
「ロコモリスク」が高い人とは?
ロコモティブシンドロームのリスクが高い人、通称「ロコモリスク」は、誰でもできるテストによって調べられます。
公益社団法人日本整形外科学会と博報堂が共同で発足した「ロコモチャレンジ!推進協議会」では、ロコモ度テストやロコモチェックというチェック項目を公開しており、誰でも簡単に調べることが可能です。
この他にリスクが高い人は、がんなどで一部の運動機能が低下した人や、骨粗鬆症や変形型膝関節症などの関節・骨にかかわる病気の人です。いずれも進行するとロコモティブシンドロームを併発する可能性があります。
リハビリで予防可能?
ロコモ自体の進行をリハビリで予防することは可能です。なぜかというと、ロコモの原因の1つとして加齢による筋肉量の低下があるため。リハビリによって筋肉量を底上げすれば、ロコモの予防は可能です。
また、リハビリによる歩行訓練でも運動機能の低下を防ぐことができます。ロコモ予備群として診断された人でもリハビリを受けることは可能です。進行を防ぐためにも、早めの対策をしておきたいですね。
もしロコモになってしまったら治療不可能?
ロコモにも症状を軽減し、身体を動かしやすくするための治療があります。ただし、治療をやめてまた運動機能が低下するとロコモが再発する可能性は高いです。
ロコモの治療のほとんどは運動療法となります。あまり手術は行われません。手術を行うケースは、ロコモの原因となっている疾患を取り除く場合のみです。
例えば、変形性の関節症が原因で動きにくくなっている場合、関節症自体を和らげる治療が必要です。投薬もしくは手術で痛みを和らげてから運動療法に入る、という順番になります。
ロコモティブシンドロームはリハビリで予防できる?
ここでは、実際にロコモティブシンドロームをリハビリで予防できるのかどうかを解説します。
「ロコトレ」で日頃から予防も可能
まず、ロコモティブシンドロームはリハビリ以外でも自発的に予防が可能です。ロコモティブシンドロームの情報サイト「ロコモONLINE」では日常、自宅で行えるロコトレで予防をするよう啓発しています。
基本的には下肢を中心とした筋肉量の維持を目的としたトレーニングです。家で器具なしでできるものが多いですが、根本は筋トレと同じ要領になります。
しかし、筋トレのようにしっかりと運動するわけではありません。あくまで身体に負担にならない程度に、日常的に続けられる範囲で筋肉量を維持するトレーニングが主です。ぜひ試してみてください。
ロコモ対策できる整形外科も
また、ロコモ予備群として診断された場合、専用のリハビリプログラムを受けられる整形外科もあります。
ここでは理学療法士による運動療法が主となり、筋力強化や歩行訓練など運動機能低下を予防するリハビリが行われます。
また、日本整形外科学会所属の「ロコモアドバイスドクター」が常駐している病院もあります。このドクターはロコモに対する正しい予防知識を習得している専門医なので、このドクターが常駐している病院を探してみるのも良いでしょう。
病気によるリスクが高い人はリハビリで予防
関節症などの骨・関節の病気だけでなく、がんでもロコモのリスクは高まります。がんの治療によって運動器の障害が起きることによるロコモは「がんロコモ」と呼ばれ、専門の「がんロコモドクター」も活動しています。
これらのロコモリスクが高い人は、日頃からリハビリで予防することが必要です。リハビリを行うことによって、疾患そのものの痛みや進行を和らげる効果も期待できます。
すでに何らかの疾患によって運動療法によるリハビリを行っている方は、将来的なロコモリスクを低減することができると思ってリハビリを行うと良いでしょう。今行っているリハビリが、将来の自分にきっと役に立つはずです。
ロコモティブシンドロームになってしまったらリハビリで軽減を
今度はロコモティブシンドロームになってしまった場合、リハビリで軽減できるのかどうかについて解説します。
リハビリで軽減するかは痛みのあり・なしによる
ロコモティブシンドロームの軽減方法は、痛みのあり・なしによって判断されます。
痛みがある場合、まずは痛みの元を取り除く必要があります。特に疾患がないのに身体を動かすのが痛い場合、下半身の筋肉量などを調べて骨に負担がかかっていないかを確認します。そして投薬などで痛みを和らげてから運動療法となるのが一般的です。
痛みがない場合は理学療法士による運動療法が行われます。どちらも専門家の知識がないと効果が高まらないので、ロコモティブシンドロームと診断された場合は、医師や理学療法士の指示に従ってリハビリを行いましょう。
痛みが少ない人は筋肉トレーニングが一般的
痛みを伴わないロコモティブシンドロームの場合、筋肉量を増やすトレーニングが行われます。通称「ロコトレ」です。
この他にも理学療法士による歩行訓練プログラムも行います。歩行訓練プログラムは、日常生活の制限を軽減し、寝たきりになるのを防止する役目もあります。
また、リハビリ中は食事の指示がされる場合も。タンパク質・カルシウムを積極的に摂取することで、より筋肉をつきやすくするのが目的です。
痛みがある人は装具療法も
一方、関節や骨に痛みがある人には他の療法が取られます。
関節や脊椎の痛みがある場合、まずはその部分への負担を減らす療法が一般的です。体重を減らしたり、装具をつけて安定させる装具療法が主です。
骨に関する疾患の場合、食事療法と運動療法の他に薬物治療もとられます。骨が分解されるのを抑制する薬や、骨を作りやすくなる薬です。これによって、ロコモの進行も抑える効果が期待されています。
まとめ
ロコモティブシンドロームは、加齢によって誰しもなる可能性があります。特にがんなどロコモリスクの高い人は注意が必要です。
ただし、ロコモティブシンドロームを予防するリハビリを行うことによって、進行を遅らせることもできます。万が一なってしまっても、寝たきりリスクを低減するリハビリも可能です。
「少しずつ動きづらくなってきたな」「最近歩きにくいな」と思ったら、ぜひロコモチェックやロコモ度テストを行ってみてください。予備群のうちに対策することで、将来の寝たきりリスクを低減することができますよ。