自宅への訪問リハビリだけじゃない!在宅でもできる介護・リハビリの選択肢
2023.04.07
2020年以降、退院後のリハビリテーション情勢は大きく様変わりしました。その一端には新型コロナウイルスの感染拡大による施設使用不可、または施設の相次ぐ閉鎖が背景にあります。
訪問・通所ともに苦境に立たされていると同時に、リハビリをできない利用者側も症状の進行が懸念されています。
そんな中、自宅でできるリハビリテーションとして新たに「リモートリハビリ」という選択肢が生まれました。
そこで今回は、新たな在宅リハビリの手段となる「在宅運動プログラム」や「オンライン遠隔リハビリサービス」について解説します。
目次
コロナ禍によって自宅で利用可能なリハビリ需要が増加傾向に
新型コロナウイルスの感染拡大により、リハビリ施設が相次いで閉鎖を余儀なくされています。また、自宅への訪問リハビリも難しい状況です。
ここでは、改めてコロナ禍においてリハビリ状況がどうなったのかを解説します。
リハビリテーション施設の閉鎖が増加傾向
2021年頃、ほとんどの通所系施設が休業による閉鎖を余儀なくされました。その理由は利用者の感染リスクの高さと、職員の感染によるものです。
職員が感染してしまうと、利用者側にも感染のリスクが高まります。しかし、施設を利用している方のほとんどは感染リスクの高い高齢者です。
また、職員が1人でも感染して勤務できなくなると運営が難しくなる施設も。利用者1人に対して2~3人でのサポートをする施設の場合だと、自宅待機や休職が出た場合に正常な運営が難しくなります。
訪問リハビリも一時期縮小傾向に
通所系リハビリ施設の閉鎖・休業により、代わりに訪問リハビリをという利用者も増えました。しかし、訪問リハビリの人員は足りていないのが現状です。
また、通所系リハビリ施設と共に訪問リハビリ事業所でも職員の感染が起こると、運営が難しくなる場合があります。
休業中のデイサービスやショートステイの職員が利用者の自宅に訪問するなどのケアを行う場合もありますが、リハビリテーションを行えないためにADL(日常生活動作)の低下傾向がみられています。
新しい自宅リハビリの鍵は「リモート」にもあり
訪問リハビリを行えない利用者の方がどうやってリハビリを行うか。これがコロナ禍での課題となりました。そこで注目されたのが「リモート」です。
PCやスマートフォン・タブレットなどで動画を見ながら自宅でできる運動をしたり、機器を通じてリモートでセラピーを行ったり、自宅にいながらにしてリハビリを可能にできるよう運用開始されました。
これらのリモートリハビリによって、これから感染リスクを抑えつつもADLの低下を防ぐことが期待されています。
自宅でもできるリハビリを動画で!『在宅運動プログラム』
「在宅運動プログラム」はリモートリハビリの1つです。自宅でできるリハビリとして、大学や関係機関が企画・制作を行いました。
効率的なリハビリ運動が動画で確認できる
順天堂大学保健医療学部理学療法学科が企画・制作した「自宅でできる運動プログラム」は、自宅にいながらにしてリハビリ運動を確認・実践できるプログラムです。
PC・スマートフォン・タブレットがあれば、効果的で効率的なリハビリ運動を動画で確認できます。
一般的な運動動画と違うのは、理学療法士が作っていることです。実演しているのは全員が順天堂大学の教員のため、理学療法のプロフェッショナルが教えるリハビリ運動を学ぶことができます。
障害の内容ごとに分かれたプログラム
このプログラムが通常の動画と大きく違うのは、障害や疾患の内容に応じたものにできること。動画プログラムは、症状・疾患ごとに選べるように分けられています。
まずは全ての疾患に共通した「体調チェック動画」を見てから自分の症状・疾患を選択します。すると、選択した症状・疾患に合わせた動画が表示される仕組みです。
利用者1人1人の体調や疾患に合わせ、適切な動画を見ることができるという点は、他の動画にない「リモートならでは」のリハビリといえるでしょう。
家族のサポートも容易に
専門的な知識に基づいた運動を学べるという点では、介助者・ご家族のサポートも容易になります。
介助者が利用者と一緒に動画を見れば、適切な動きができているのかを第三者の視点からも見ることができるのです。
また1人でできる運動が多いため、介助者の負担を減らす効果も期待できます。利用者・介助者共にメリットの大きいプログラムです。
参考:順天堂大学GOODHEALTHJOURNAL「ステイホームでも本格的なリハビリを!オール順天堂が実現させた在宅運動プログラム」
自宅でセラピーも可能な『オンライン遠隔リハビリサービス』
「オンライン遠隔リハビリサービス」は、動画ではなくオンラインで直接セラピストとやり取りできるサービスです。自宅からセラピーを受けるだけでなく、リハビリの指導を受けることもできます。
ネットを介してセラピーを行う新しいリハビリ
動画プログラムは、利用者が動画を見るだけの一方向性しかありません。しかしこのサービスはセラピストとやり取りを行うことが可能なため、コミュニケーションによるリハビリ効果も期待できます。
まずは、セラピスト側が利用者に合わせた目標を設定し、立てた目標に応じた動画プログラムを選定・送信します。
利用者は動画を見ながらリハビリを行いますが、その際の様子はアプリが動画撮影を行い、セラピストに送信します。これによって、正しい動作をセラピスト自身が確認できるのです。
設備を整えればいつでもサポート可能に
動画を見るだけのプログラムでは、1人暮らしの利用者の場合第三者による動きの確認もできません。しかし、この遠隔リハビリサービスの場合は正しい動きをできているか確認してもらうことが可能です。
セラピストが設定した動画だけでは動きがわからなくても、直接テレビ電話機能で聞くことができます。双方向性のあるコミュニケーションにより、効率的なリハビリが可能なのです。
Wi-Fi環境やタブレットなどの設備を整えさえすれば、いつでもリハビリのサポートが可能になります。
将来的には包括的なサポートも
現状、サービス自体は動画プログラムを中心としたリハビリ指導が主ですが、将来的には包括的なサポートが可能になるように開発を進めていくとのことです。
現在はリハビリの動画指導が主ですが、特定の疾患を対象とした栄養サポートや介助者の介助指導プランなど、様々なプログラムも可能になるかもしれません。
訪問リハビリを受けることが難しくても、環境さえサポートできれば自宅にいながらしてリハビリが可能になります。今後、在宅リハビリの分野はさらなる発展を遂げていくことでしょう。
まとめ
コロナ禍では通所リハビリ施設の休業・閉鎖など、リハビリテーション分野での混乱が相次ぎました。職員だけでなく、利用者側にもADLの低下など様々な弊害が生まれています。
そんな中、自宅にいながらにして質の良いリハビリを行えるリモートサービスが生まれました。動画プログラムやリモートリハビリ指導など、在宅でできるリハビリにより、ADLの低下を防ぐことが期待されています。
さらに栄養指導や介助指導などの分野に広がれば、訪問リハビリの人手不足解消の一助にもなるかもしれません。今後の発展が期待できそうです。