エビデンスに基づいた片麻痺リハビリプログラムで上肢機能を回復しよう!
2024.10.07
片麻痺は脳梗塞の後遺症の1つです。脳の一部が障害されることで半身が動かなくなる疾患です。片麻痺の症状は上肢・下肢ともに出現しますが、上肢の方が回復が難しいとされています。
片麻痺の改善にはリハビリが有効とされており、上肢の機能回復のためのリハビリプログラムは数多く存在します。しかし、どのリハビリが効果があるのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
今回は片麻痺のリハビリの中でもエビデンスに基づいた上肢の機能回復に効果のあるリハビリプログラムをご紹介します。
目次
片麻痺改善にはリハビリが重要?上肢の片麻痺になる原因とは
片麻痺の改善にはリハビリが非常に重要です。リハビリの効果を知るために、まずは片麻痺の原因や症状からみていきましょう。
片麻痺とは
片麻痺とは体の左右どちらか一方に麻痺の症状が見られる状態のことです。片麻痺の原因の多くが、脳梗塞など脳血管障害によって起こります。
左右の脳は、それぞれ反対側の体をコントロールしているので、障害された脳と反対側に片麻痺を発症します。
片麻痺の代表的な症状は以下の通りです。
- 顔面のゆがみ
- 手足の力が入らない
- 物を落としやすくなる
- 歩くのが困難になる
- ろれつが回らない
片麻痺改善にはリハビリを
片麻痺の改善にはリハビリが欠かせません。なるべく早い段階からリハビリを行うことで回復が早くなると言われています。
片麻痺の症状は、ほとんど麻痺がない状態から自分では全く動かせない状態など患者さんによって大きく異なります。個々の症状にあったリハビリプログラムを実施することが大切です。
また、リハビリは機能改善だけでなく、日常生活の質の向上や精神的サポートの役割も担っています。リハビリは患者さんが再び充実した生活を送るために重要なカギとなるのです。
【片麻痺のリハビリ】上肢麻痺に有効なリハビリプログラム
ここでは片麻痺のリハビリの中でも上肢に有効とされるリハビリプログラムをご紹介します。今回紹介するのは脳卒中ガイドラインに基づいたエビデンスの高い治療法です。どのような効果が期待できるかみていきましょう。
課題指向型訓練
上肢リハビリの代表的なリハビリの1つです。日常生活に近い状態で手を動かす訓練です。具体的には麻痺側の上肢を使い、以下の訓練を繰り返し行います。
- ボールをつかむ
- タオルで机をふく
- ブロックを動かす
- おはじきをつまむ
課題志向型訓練は上肢の運動パフォーマンス向上に有効であるとされています。
CI療法
CI療法は課題指向型訓練の一種です。非麻痺側の手を三角巾やミトンで制限し、麻痺側上肢のみで課題を繰り返すリハビリです。患者さんの症状にあった課題を繰り返し行うことで機能回復を促します。
1日6時間を2週間行う集中型のリハビリで、目標動作に似た環境の中で、難易度を段階的に設定して実施します。
促通反復療法
促進反復療法(REF)は片麻痺の症状を回復するために開発された新しい運動療法です。
治療者が「人差し指を伸ばして」と運動を指示すると同時に、治療者が指を操作することで目標運動を実現させます。それを100回ずつ反復して行い、麻痺の改善を促進する方法です。
治療者が動きを操作することで、意図した運動を実現し、反復することで、動作に必要な神経回路の再建・強化を目的とした治療法です。
電気刺激療法
電気刺激療法は、麻痺のある筋肉や神経に電気を流すことで治療を行う方法です。多くの場合、電気刺激だけでなく運動も一緒に行います。
電気刺激にはいくつか種類があります。代表的な3つは以下の通りです。
- 経皮的電気刺激(TENS)
- 神経筋電気刺激(NMES)
- 筋電トリガー式電気刺激
電気刺療法は運動機能、運動パフォーマンスのどちらにも有効であると言われています。
片麻痺のリハビリを自宅で行う|上肢の自主トレプログラム
片麻痺のリハビリは自宅に帰ってからも継続して行うことが推奨されています。リハビリで回復した機能を維持するためにも積極的に自主トレを行いましょう。
ここでは上肢の自主トレプログラムを重症度別にご紹介します。
軽度の場合
軽度とは非麻痺側と同じように動かすことはできるが、動きにぎこちなさが生じている状態です。
ボール投げ
<準備するもの>
- 片手でつかめるボールやお手玉
- 大きめのボール
- 籠
- 椅子
<やり方>
- 椅子に座り、前方に籠を置く
- 小さい方のボールを麻痺側でつかみ、かごに入るように投げる
- 少しづつ籠の位置を遠ざけながら難易度をあげて繰り返す
- 大きいボールは両手で持ち、同じ要領で行う
籠との距離感を考えながら、手を離すタイミングをつかんでいきましょう。大きいボールの場合は非麻痺側との協調も重要になります。
中等度の場合
中等度とは顕著なぎこちなさがあり、肩と肘が共同的に動いてしまう状態です。
腕の回旋運動
<準備するもの>
- 椅子
- 机
つかみやすい筒状のもの(ラップの芯や新聞紙を棒状に丸めたものなど)
<やり方>
- 椅子に座り、机の上に麻痺側の上肢を置く
- 筒状のものの真ん中を握る
- 上肢を持ち上げ、肘を90度に曲げる
- 手のひら側が内・外と向くように回旋を10回行う
- 肘を伸ばした状態で同じように回旋運動を行う
筒状のものはつかみやすいものなら何でもOKなので家にあるもので代用しましょう。
重度の場合
重度とはわずかな動きがあるか、全く動かない状態です。
寝ながらストレッチ
<準備するもの>
- 寝るスペース
<やり方>
- 仰向けになり、両手を組む
- 肘を伸ばし、両手をゆっくりと天井にむけて伸ばす
- あげた状態で10秒保持し、ゆっくりとおろす
- 5回繰り返す
- 次に肘を伸ばした状態でゆっくりと頭の上まであげる
- あげた状態で10秒保持し、ゆっくりとおろす
上手に手を組めない場合は非麻痺側で麻痺側の手を包み込むようにして行って下さい。
まとめ|【片麻痺のリハビリ】上肢リハビリプログラムについて
片麻痺というのは、体の片側が思うように動かせなくなる症状のことです。この症状を改善するためには、リハビリテーションがとても効果的です。特に、自分の症状に合った腕や手のリハビリプログラムを行うことで、回復が早くなるでしょう。
世の中には、片麻痺のためのリハビリ方法がたくさんあります。腕や手に関するリハビリプログラムも多く存在します。しかし、その中には本当に効果があるのか分からないものもあります。何でもかんでも試してみるのは、逆に危険な場合もあります。効果が証明されていないリハビリをむやみに行うと、症状が悪化することもあるからです。
これらの方法を参考にして、患者さんの症状の重さや状態に合ったリハビリを行いましょう。正しいリハビリを続けることで、少しずつでも確実に回復に向かって進むことができます。