SLAP損傷に対するリハビリ…局所安静から早期復帰を目指すための流れとは
2024.05.20
「SLAP損傷(肩関節上方関節唇損傷)」は、特にスポーツを行う人に多く見られる怪我です。この怪我を治すためには、リハビリが欠かせません。しかし、原因や症状をしっかり理解していないと、リハビリの効果を十分に引き出すことが難しくなります。
SLAP損傷のリハビリは、痛みの軽減や機能の回復を目指すだけでなく、再発を防ぐための準備も含まれます。今回は、SLAP損傷の原因と症状について説明し、リハビリの流れを紹介します。さらに、早期復帰と再発防止のためのポイントについても解説します。
目次
SLAP損傷とは?リハビリはなぜ必要なのか分類や症状について
そもそも「SLAP損傷」って?と疑問に思った方も多いでしょう。どの部位にどのような痛みや症状が出るのかチェックしていきます。
SLAP損傷って?(肩関節上方関節唇損傷)
「SLAP損傷」=肩関節上方関節唇損傷です。slapはSuperiorLabrumAnteriorandPosteriorlesionの略称で、一般的にはslap損傷と呼ばれています。
上方関節唇は、肩関節の内側に位置する組織です。具体的には、肩関節の関節唇と呼ばれる軟骨組織の一部であり、肩関節の球状の関節窩(かんせつか)の上縁に固定されています。
もともと、肩関節は不安定な構造をしており、上方関節唇は、肩関節の安定性を向上、運動のスムーズさを確保する役割を果たしています。
SLAP損傷の症状について
SLAP損傷はリハビリ以前にどのような症状があるか、を見極めなければいけません。
主に、野球やバレーボール、バドミントンやテニス、水泳などのスポーツをおこなう人にみられる怪我です。頭の上で手や肩、腕を回旋させる動作、動きによって痛みが生じます。
例えば野球の投球動作(ボールを投げる)、バレーボールのアタックをする動作などが該当します。
現在、「肩を動かすときに痛みを感じる」「肩がぐらつく、不安定」「投球動作のときに肩が引っかかる感じがする」などがあればSLAP損傷が疑われます。
SLAP損傷における原因
スポーツごとに原因は考えられますが、一般的には以下のようなケースが原因と考えられます。
・運動動作における肩のインナーマッスルの低下
・肩周り、肩甲骨周辺のストレッチ不足や柔軟性の低さ
・筋力の低下
・肩関節の過度なストレッチ
・反復動作によって過度な負荷がかかること
・年齢によるもの
・転倒や事故などによる外傷
SLAP損傷のリハビリをおこなう人の原因はさまざまです。「自分はストレッチを入念にしているのに…」と思う方もストレッチのしすぎなどが該当しますし、筋力や柔軟性があっても外傷や投げすぎ、スポーツ動作の過度な負荷あれば、SLAP損傷に繋がります。一概に「〇〇が原因だ!」と決めつけずに、自身の痛みと向き合いましょう。
SLAP損傷が疑われたら…リハビリを開始するまでの検査や安静方法
事故やスポーツ時の転倒などによる肩の痛みは、自分自身でも痛みを認知しやすいです。しかし、普段おこなうスポーツなどの運動動作からでは自己判断が難しいため、正しく検査を受けてリハビリをおこないましょう。
「SLAP損傷」が疑われたら|リハビリ前の重要なポイント
「SLAP損傷」が疑われた場合は、専門医療機関にてMRI検査、器具を使わない整形外科的テストをおこなって診断を進めます。損傷が認められた場合は、損傷の具合や程度によってその後の治療が決められることになるでしょう。
SLAP損傷は保存療法と手術が大きな治し方です。しかし、手術のケースは重症度の高い損傷がみられる場合であって、メインとしては保存療法の中でも以下3つの方法が進められます。
①スポーツから生じる損傷の場合はスポーツを休み、安静につとめる。
②炎症、痛みがひどい場合は注射療法、薬物療法をおこなう。
③損傷に負荷をかけないようにリハビリをおこなう。
保存療法で概ね改善がみられますが、3ヶ月〜6ヶ月経過しても症状が改善しない場合は、手術療法への切り替えも検討されます。
SLAP損傷の分類について
SLAP損傷はリハビリ開始前に以下のような分類がなされます。しかし、詳細な診断は非常に難しいため専門医にみてもらう必要があります。
タイプI | 上方関節唇辺緑のすれ、切りのみ |
タイプII | 上方関節唇、二頭筋長頭が関節唇から剥離。二頭筋付着部の不安定感。 |
タイプⅢ | 上方関節唇がバケツ柄状に損傷。関節内に転位。 |
タイプⅣ | バケツ柄状の損傷が二頭筋腱にまで及ぶもの |
SLAP損傷に対する手術とリハビリ
SLAP損傷の手術療法は、損傷して毛羽立った関節唇を除去する「鏡視下デブリードマン」。分類タイプⅡには鏡視下関節唇修復術などがおこなわれます(上腕二頭筋長頭腱基部を安定させるためにスーチャーアンカー(縫合糸がついた小さなビス)を用いた鏡視下関節唇修復術)。
〈手術後のリハビリの経過と流れ〉
手術後から4週間程度まで | 手術後は装具を使用して肩関節の安静に務めつつ、可動域の訓令自体は手術翌日からおこなわれます。患部以外のトレーニングも開始し筋力維持をします。 |
1ヶ月から2ヶ月ほどまで | 低負荷からトレーニングを開始。可動域の訓練もおこない始め、全身運動やそれぞれのスポーツ動作に合わせてプログラムを組む。 |
手術から4ヶ月から6ヶ月頃まで | 実際の運動機能に合わせた運動をおこない、状態に合わせて復帰。 |
SLAP損傷のリハビリは競技特性に合わせた取り組みが重要
SLAP損傷の保存療法によるリハビリは競技特性を理解し、再発予防も並行しておこないましょう。
安静と機能改善を目指して
SLAP損傷の保存療法では「安静」が第一です。もちろん重症度によって手術が選択される場合もありますが、痛みや症状が回復するのを待ちながら筋力訓練や機能改善に向けたリハビリに取り組みます。
競技特性を理解して進める
リハビリをおこなうさいは、3つの視点で進めましょう。
①slap損傷のリハビリは専門医のもと時間をかけて進める
…痛みに対してストレッチをしすぎるケースもあるため、正しい知識のもとリハビリをおこないましょう。
②再発を予防する
…スポーツによって生じた痛みは、再び同じ動作を開始すれば再発するケースが十分に考えられます。予防するため、安静する期間のうちに全身の動作を見直し、損傷周辺の筋力強化、柔軟性UPを目指しましょう。
③安静期間はパフォーマンスUPにもつながる
…SLAP損傷は、取り組むスポーツを離れ休まなければいけません。多少なりとも不安感やネガティブな印象を感じるでしょう。しかし、動作の改善や全身の休養と筋力向上に繋げられる時間だと前向きに捉えてリハビリをおこなうことがおすすめです。
SLAP損傷のリハビリ|まとめ
今回はSLAP損傷のリハビリまでの流れを知るとともに、早期復帰と再発防止のためのポイントを解説しました。
slap損傷=肩関節上方関節唇損傷、呼び名を覚えるとともにどの部分に症状が出るのかを理解しておきましょう。
外傷以外の痛みであれば、基本的にはスポーツ動作から発症するケースがほとんどです。「肩を動かすときに痛みを感じる」「肩がぐらつく、不安定感」などを感じる場合はSLAP損傷を疑い専門医にみてもらうことが望ましいでしょう。