脳卒中後に出現するロッキング膝とは?ロッキングが起きる原因と問題点
2024.08.16
脳卒中後に片麻痺の症状がでると、しばしば膝が伸展したままの状態になるかそれ以上に膝関節が逆方向に曲がってしまうことがあります。この現象がロッキング膝です。
ロッキング膝になると歩行速度が低下したり、痛みを伴ったりと歩行時の負担が大きくなってしまうのでつらい思いをしている方もいるのではないでしょうか。また、ロッキング膝を放っておくことでさらなる疾患に繋がってしまい、治療に時間がかかってしまうこともあります。
今回はロッキング膝になってしまう原因や、問題点を解説するとともに改善方法もご紹介します。
目次
ロッキング膝の特徴とは?ロッキング状態が続く問題点とは?
脳卒中後に片麻痺を起こした人の大半はロッキング膝を経験すると言われています。ロッキング膝になると歩行が困難になるだけでなく、痛みを伴うこともあるので厄介です。ロッキング膝の特徴やロッキング膝が続くとどのような問題があるかみていきましょう。
ロッキング膝とは?
ロッキング膝とは脳卒中の片麻痺患者の歩行時によく見られる症状です。ロッキング膝は膝の過伸展とも呼ばれ、膝が完全に伸び切る、または膝が逆方向に曲がってしまう状態です。
人は歩く時に、膝関節を屈曲させることで、地面からうける衝撃を吸収する役割があります。また、歩幅をかせぐためにも膝関節の屈曲は重要です。
膝関節が伸びきった状態で歩行を行うと、地面からの衝撃が直接身体に伝わり、痛みや歩行時の不具合の原因となるのです。
ロッキングでの歩行は困難?
ロッキング膝になると歩行に困難が生じます。代表的なものに以下が考えられます。
- 歩行速度の低下
- 歩行効率の低下
- 歩行時のエネルギー消費増大
- 膝の痛み
膝が屈曲しないことで、歩行効率が悪くなるだけでなく、地面からの衝撃が大きくなることで膝に負担がかかり、痛みを伴うこともあります。
また、歩き方が見た目でも特徴的になるので、歩く行為自体が億劫になってしまう方も少なくありません。
ロッキング状態が続くとどうなる?
ロッキング状態になると、筋肉ではなく膝回りの骨や靭帯などによって体重を支えて衝撃を吸収します。この状態が続くことで反張膝と呼ばれる疾患になる恐れがあります。
反張膝とは立位時に膝が正常範囲を超えて後方に伸びきってしまっている状態のことで、放っておくと靭帯の損傷や膝の変形が生じてしまうこともある疾患です。
また、膝への負担だけでなく姿勢にも大きく影響するので、腰や首、肩や足部などあらゆる場所に支障をきたしやすくなります。
片麻痺があるとロッキング膝になる確率が高い?代表的な原因は?
片麻痺患者の半数以上はロッキング膝での歩行を行うことがあると言われています。なぜ片麻痺があるとロッキング膝になりやすいのか、原因についてみていきましょう。
大腿四頭筋の筋力低下
片麻痺になると膝の伸展に大きな役割を持つ大腿四頭筋の筋力不足が起こり、上手に使うことができなくなります。そのため、膝が曲がりすぎてしまう膝折れという現象が生じます。
膝折れになると転倒しやすくなるため、筋力低下を自覚している人は倒れないように膝を伸ばしたまま歩こうとしてしまい、ロッキング膝を起こしてしまうのです。
足の可動域制限
片麻痺によって、筋肉が緊張しすぎて動かしにくくなる、もしくは勝手に動いてしまう痙縮と呼ばれる症状が生じることがあります。
痙縮が生じることで、ふくらはぎに過緊張が起こりつま先を持ちあげることが困難になったり、足関節が下を向きつま先立ちのような状態になったりします。
歩行時において足関節は約20℃背屈させる必要がありますが、痙縮によって可動域制限がおきてしまうため、背屈が難しくなってしまうのです。
股関節・体幹のコントロール低下
また、片麻痺によって体が傾き、まっすぐ保つことが難しくなると、体幹が前項する傾向があります。体幹が前傾することで重心が前方へ移動し、膝を伸ばそうとする力が加わり、ロッキング膝が生じやすくなります。
また、股関節の屈筋群の短縮や股関節伸筋群の麻痺・筋力低下が原因で、股関節の前面の硬さや伸展の活動が弱まります。そのため、股関節が伸ばせず曲がってしまい、ロッキング膝が生じてしまうのです。
参考:J-stage「脳卒中片麻痺患者における膝ロッキング改善例について」
ロッキング膝は治るのか?有効なリハビリや早期改善が必要な理由
以前のようにスムーズに歩けるようになりたいと思っている方、膝の痛みを軽減したいと思っている方はロッキング膝を改善する必要があります。ロッキング膝を治すために有効な治療法があるのかみていきましょう。
歩行とバランスのトレーニング
ロッキング膝の治療には歩行やバランスを向上させるリハビリが有効とされています。例えば以下のようなトレーニングがあります。
- 片足立ち
- パーシャルスクワット(浅めのスクワット)
- 柔らかいマットの上で片足スクワット
- 膝を曲げた状態で歩くトレーニング
リハビリ担当者や機械の指示を受けながら、立ったり歩いたりする練習を繰り返し行います。しかし、誰もがこのトレーニングをすれば改善するというわけではありません。ロッキング膝になる原因は患者さん一人ひとり異なります。
「足首の関節が硬いのか」「大腿四頭筋の筋力が弱いのか」「体重移動が難しいのか」など何が原因でロッキング膝になっているのかを追求し、原因に合わせたリハビリを行うことが重要です。
参考:脳卒中患者の膝の過伸展に対する徘徊と固有受容覚訓練の有効性
装具や外科的治療を行うことも
ロッキング膝の状態で歩行を続けていると膝の痛みがひどくなったり、反張膝変形を起こす可能性が高くなります。そうなると、外科的治療や下肢装具の装着を検討する必要があります。
反張膝になってしまうと治療が長期に渡るケースもあるので、ひどくなる前になるべく早くロッキング膝を改善することが望ましいです。
まとめ|脳卒中後ロッキング膝の原因と問題点について
脳卒中によって片側の体がうまく動かなくなると、ロッキング膝という症状が出ることがあります。この症状は、足の筋肉がうまく働かず、膝を曲げることが難しくなるために起こります。ロッキング膝になると、足をまっすぐ伸ばしたまま歩くことになり、膝に大きな負担がかかります。
また、通常の歩行と比べてスピードが遅くなり、体力を多く使うため、歩くのが疲れやすくなります。さらに、膝に負担がかかることで、膝の痛みが生じることもあり、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
このような状態を放っておくと、反張膝(はんちょうひざ)と呼ばれる膝の変形が進行することがあります。反張膝は、膝が後ろに反り返るように変形する病気で、これが進行すると歩くのがさらに困難になり、治療に時間がかかることがあります。反張膝になってしまう前に、できるだけ早くロッキング膝を改善することが重要です。
ロッキング膝を改善するためには、まずその原因をしっかりと突き止めることが大切です。
例えば、筋肉の弱さや硬さ、バランスの崩れなどが原因となっている場合があります。それぞれの原因に合わせたリハビリを行うことで、症状の改善が期待できます。リハビリは、専門のセラピストと一緒に行うことで、効果的に症状を改善し、日常生活の質を向上させることが可能です。